捨てる神あれば拾う神あり…そんな言葉を思い出す光景に会った。日本の子供の６人に１人が貧困。それはコロナがはじまるちょっと前、安倍元総理がアベノミクスによる経済の成功をバカ騒ぎして有頂天になっていた頃の話し。コロナ禍、日本の子供の貧困率はいかばかりか？私はその日、仕事で池袋に来ていた。うちのケアハウスの女性で28歳になる女性がいる。彼女は障害があるが働いていて稼ぎがある上、両親はお金持ち。そういう子にタカる悪い人間がいる。その相手との話し合いの立会人として池袋の喫茶店に来ていた。とても風情のある喫茶店で、コーヒー一杯1000円近くする高級店。彼女は毎回その悪い男とこの喫茶店で会い、金の無心をされている。
「…これ以上は警察の方に任せなければいけません」
彼女の担当がそう話すと男は
「すみません。すみません。もうしません」
と、繰り返すがもうこれで三度目の話し合い。男は職についておらず、彼女からむしりとった金で暮らしていた。
「あなた、まだ働いていてないですよね？前に約束しましたよね？それに何より暴力までふるって！」
その言葉に男は態度を変える。
「うるせぇなぁ！人の恋愛につべこべ言ってるんじゃねぇ！ぶっ殺すぞ！」
その瞬間、男は逮捕される。実は、その喫茶店には私服の警察が待機しており、現行犯逮捕の計画をしていたのだ。通常はそんなことあり得ない。日本ではおとり捜査になるようなことを一般人を巻き込む形などしてはならないことになっている。それが出来たのは、ウチのグループホームの会社が警察とも仲がよい…というか上同士でズブズブで、こういう話となった。ちなみに私は、
「相手の男を油断させるためには、男性だとよくない。誰か付き添いで女性はいないか？」
ということで私が選ばれた。私は別に構わなかったし、相手の男も気に入らなかったから仕事を引き受けた。ただ、正直な話し彼女にも問題はある。病気といってしまえばそれまでなのだけど、彼女には厄介な性癖があり、外でオシッコをしてしまう。私の部屋の子ではないから直接被害はないが、
「あの子さぁ、オシッコつめたペットボトルをさ、冷蔵庫に入れるのよ」
「えぇ？」
私が驚くと
「性癖ってやつ。外でオシッコして、それを見られて、あの悪い男にもそれを見られてから脅されるように付き合って。それでも、そんな関係がいいみたい」
こういうことがグループホームでは多々ある。私はその後、現場から一人になる。担当者と彼女は警察に事情を聴かれるため連れて行かれ、私は現地解散。久々に池袋を歩いていた。すると！
「こちらに並んで下さい。どうぞ」
公園の前に人だかりが出来ていて、その先で炊き出しやレトルト食品やカップ麺などの配布をしていた。生活困窮者に対してのボランティアだった。お年寄りから若い人、小さな子供を連れたお母さん、お父さん、あらゆる段階の人々がそこにいた。
「生理用品はこちらにあります」
女性用生理用品からトイレットペーパー、下着やアウターなどなど、あらゆる生活必需品を配っている。
『これが本当の日本なんだ』
私はそう思い、涙が込み上げてきた。すると
「大丈夫デスカ？」
そう声をかけてくれる人がいた。