「なんだって?」
それは、とてつもなく奇妙な感じがした。
私が、こともあろうに10歳近く年下の子に告白をしたというのだ。
「え?
だって、そういうことでしょ?」
パート先の女子更衣室兼女子待機室で、穏やかな昼休みに波紋をぶつけてきたのは社員の吉良さんだった。
年齢的には2歳程彼女が年下だけど、まぁ一応は上司にあたる。
「はぁ?
なんで河合君に顔がすご~く好みなんだよ。って言ったことが、そのまま愛の告白なんぞになるのかいな?」
河合君は先週から入って来たバイトの子でシフト的に一緒になったのは、この間で2回目だった。
「じゃあ、好きじゃないの?」
「いや、好きだよ。
好きだけども!内容が違くない?」
「内容とは?」
「例えばだね、通りすがりにカッコイイ車を見たとしよう。
おおお!好きな車だって思うことは恋愛感情じゃないでしょ」
「・・・・」
「じゃあ、威嚇するコアリクイを見て心を奪われたとしても、それは恋愛感情じゃないよね。」
「・・・・・・・・。
・・・・対象物が人間じゃないし。」
「う~~~・・じゃあさ・・」
「いい!
言わんでも!不毛だわ。
とりあえず、フォルムが好きなわけだね。」
大きな溜息をついて、彼女はお茶を飲む。
「おおお!わかってくれたか!」
「全く人騒がせな。
とりあえずは、自分自身が言ったことについて責任をもって刈り取ろうね。」
「はえ?」
何を。
どう、刈り取ると言うのだ。
ショップ店員同士の軽口くらい、良いじゃないの?
その時の私はその程度の意識しかなく、出勤前に買っておいたコンビニのおにぎりに食らいついていた。
続く