「秘密の花園」 ~ 少女たちの罪と罰 ~ | かたること つたわること

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秘密の花園 (新潮文庫)
  • 三浦しをん
  • 新潮社
  • 460円

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書評


『(学校という)閉鎖空間に押しこめられて少しずつ狂っていく』。そんな空気の中で、自分の持つ「狂気」を自覚する少女たち。性格の異なる3人の少女それぞれの感性によって紡がれる物語は、「繊細な10代」というくくりを突き抜け、驚くほど濃く、粘度が高い。


 カトリック系女子高校に通う、那由多、翠、淑子。まったく違う性格を持つ三人の中でも、ストイックな翠と激情型の淑子は、那由多を介してしか近寄ることすらままならない。けれど、学校を『変化を憎む牢獄』だと感じ、そこに閉じ込められることが罰であるなら罪は何だろうという思いを抱く淑子もまた、翠と那由多同様に、表出しようにもその方法すら見つからないほど鬱屈してしまった魂の存在を自分の中に見つけている。


「仲良し」にすがりつき痛みを和らげてもらうことを望まずに、あえて孤独な時間を選択する彼女たち。『どこまでが草原で、どこからが他人が足を踏み入れてはいけない牧草地帯なのか』『その境界線がよく見える』。冷酷に見えるほど淡々とした関係が、彼女たちの甘美な距離感だ。
 
『ノアの方舟』と『パンドラの箱』について語り合う那由多と翠。もしそれが厄災なのかもしれなくても、残された「希望」を信じたい。そう思わせてくれるラストでした。