§この想い渡る   side:キョーコ | なんてことない非日常

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駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

《目次を編集していたら・・・続きまで手が回りません!!
今月もボチボチです。すみません。

しかもリアルもバタバタ・・・。落ち着かないなあ・・》



§この想い渡る    side:キョーコ



 「好きです!」


「好き・・・ですっ」


「好きです・・・」


様々な『好き』を口にしたキョーコは目の前にいる人物を不安そうに見つめた。


「・・・・あの・・・やっぱり・・まだ、ダメでしょうか?・・・・緒方監督」


険しい表情を見せる緒方にキョーコは心中泣き出したいのを必死に抑えて、胸元にやっていた手をぎゅっと握り締めた。

そんなキョーコに緒方は申し訳なさそうに、笑みを見せた。


「すみません・・・・『ナオコ』の心の葛藤を顕す重要な台詞なので・・・もう一度行きましょう!」


「・・・・・・・はい・・・」


キョーコは項垂れながらも、もう一度呼吸を整えてカメラの前に立った。



このワンシーンでのリテイク5回目・・・。
久しぶりの緒方の監督作品に出演できるのを喜んだ三週間前の自分をキョーコは恨んだ。


(・・・今の私ならできそうなんて・・・とんだ思い上がりだったわ・・・)


三年前、緒方の手がけるドラマに出た時よりもずっと役者として成長を遂げていると自負していただけに思わず諦めに近いため息が出てしまう。


(・・・・助けて・・・つる・・・・)


そこまで頭の中で言いかけて、キョーコは動きを止めた。


(ダメダメダメダメ!!まだ私は海を渡った先輩に縋ろうとしているの!?)


そして今度はものすごい勢いで頭を振った。


(お見送りした時に誓ったじゃない!敦賀さんをあっと言わせるような女優に成長しますっ・・・って・・・)


最後に、はふぅ・・・っと心の呟きに艶めいたため息をついた瞬間、緒方の咳払いがキョーコの耳に届いた。


「・・京子さん・・・いいですか?」


「はっ!?す、すみませんっ!!」


キョーコはパンパンっと頬を叩いた。
気合を入れたキョーコに緒方はそっと近寄ってきた。


「京子さん・・・」


「はい?」


「『ナオコ』は今まで想いを秘めていたのをここで打ち明けるんです・・・誰にも打ち明けるはずのなかった想いを・・・」


緒方の言葉にキョーコは無表情で俯いた。


(・・・わかってる・・・『ナオコ』の気持ちなんて・・痛いほど・・・・・あの時から・・・)


空港でタラップに消えていく蓮の背中を見つめて、目覚め始めた想いを凍らせてしまおうと誓った時のことを思い出したキョーコは下唇を噛んだ。
その後、緒方から直接依頼を受けた時にこの想いを封印しつつ自分に似た『ナオコ』を演じきろうと思ったのだ。
しかし、今日のワンシーンはその秘めた想いを紐解かなければならないシーン。
告白するはずのなかった相手に告白をしてしまう『ナオコ』は、キョーコにとって迎えたくない未来の自分の姿のようで戸惑いが先に行ってしまい口先だけの告白はやはり緒方には受け入れるはずもなかった。


「準備はいいですか?京子さん・・・」


しかし、既にリテイクを5回しているキョーコに選択している余地などなかった。


「はい、よろしくお願いします」


くっと顔を上げたキョーコの瞳に迷いはなかった。




side:蓮