§その乙女、形状記憶恋愛曲解思考持ちにつき | なんてことない非日常

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《こちらはかの有名な魔人さん宅からお預かりしてきたお話です。・・・もう一ヶ月も前に・・・・orz

大変遅くなり申し訳ございません!!


他の方とのお話中に横から現われたくせに・・・・。


爆笑モノになってるのでしょうか?・・・最近ヘタ蓮しか書いてない気が・・・・》



§その乙女、形状記憶恋愛曲解思考持ちにつき





 「お疲れ様です!敦賀さん、スタンバイお願いします!!・・・・・・・大丈夫・・・ですか?・・敦賀さん・・・」



番組収録の準備が整ったと呼びに来たアシスタントは、死相を浮かべて沈み込んでいる蓮に心配そうに声をかけた。



「あ、大丈夫ですよ?・・・ちょっと・・・最近・・・夏バテがきちゃったかなぁ?・・・なあ?蓮・・・・」



社はすかさずそう明るく声をかけると、ゆらりと顔を上げた蓮が情けなくも眉尻を垂れさせ頷いた。



「え・・ええ・・・すみません・・・心配をかけて・・」



いつも隙のない蓮には珍しく、愁緒な様子に新人のアシスタントは男ながら赤面して頭を振った。


「い、いえっ・・・本当にお大事に・・」



「ちゃんと収録はこなしますから・・・」



なんとか立ち上がった蓮にアシスタントは慌てて止めた。



「あのっもう少し時間がありますからっ・・その時に呼びにきますのでもう少し休んでて下さい!!」



「え?・・・いえ・・だいじょ・・」



「いいですから!じゃあ、またきます!!」



アシスタントは青年らしい爽やかな笑顔でそう言うと蓮の控え室を出て行った。



「・・・また栄養ドリンク届くな・・」



「・・・社さん・・夏バテって言うのやめませんか?」



蓮はうんざりした表情で、前の収録先でもらってしまった1ダースの栄養ドリンクの箱を眺めた。



「・・・・言うのか?・・・好きな子に告白したのに全く相手にされていないどころかまるでその告白すらなかったかのように振舞われて凹んでいるんですって」



「・・・・・・・・・・・」



社のその言葉にブスッとむくれながら蓮は、反論できずに俯いた。


そう、ここのところ蓮は各所で元気の無い表情を見せていたのは彼の想い人から受けた打撃によるもので夏バテなどではなかった。


遡る事1ヶ月ほど前。



******************



「好きなんだよ!!最上さんっ君の事がっ!!」



確かに・・あの時は半ばやけくそ気味に告白の言葉を蓮は発していた。

しかし、それはいたしかたなかった。

彼女を取り巻く環境が変わってきて、蓮しか知りえなかった可愛らしさも美しさも妖艶さも他の男達の知るところとなり大量の馬の骨が出現。

一番厄介だったのは、アノ男がキョーコに告白なんぞを公開生番組の最後の最後・・誰もフォローが入れられない状況になった時にしてしまい、キョーコの生い立ちやアノ男との関係が明るみに出るところとなり先週ローリィのおかげでようやく沈静化した。

そんな時に蓮の夕食を社が頼み込み、久しぶりの二人だけの空間で落ち着いて話をしていた矢先に飛び出した告白だった。
しかし、何度も言うようだが仕方なかったのだ。


「・・・敦賀さん・・・私・・・もう、ここには来ません・・・」



来た早々、キョーコにそんなことを言われたら色んな言葉を使っても引き止めるだろう。

幾つも先輩の仮面をつけた言葉たちがキョーコの前を滑り落ち、とうとう本音と懇願が混じった告白が蓮の口から吐き出されていた。

呆然としたのはキョーコだけではなかった。

口にした蓮ですら、こんなどさくさ紛れの告白をするなんて考えてもいなかったのだ。


「あ・・あの・・最上さん・・・」



固まっているキョーコに蓮が恐る恐る声をかけると、ピクンと生気を戻したキョーコはいつもの愛らしい笑顔を蓮に見せた。

その笑顔に僅かながらの期待に安堵した直後、蓮の耳にキョーコの言葉が突き刺さった。


「ありがとうございます!私も敦賀さんを尊敬しています!でも、今は後輩のごたごたになんか大先輩を巻き込むことなど出来ないので・・私も敦賀さんの食事事情は心配ですが、いい機会です!少し御自分できちんとした食事習慣を身につけられてください」



・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?俺・・今告白した・・・よな?



ぺこりと頭を下げて、今日と明日食べられる食事を作ると宣言しキッチンに向かったキョーコの背に蓮は心の中でそう問いかけてもキョーコは振り返ることなくせっせといつものように手際よく食事の用意をするのだった。



それからとはいうもの、初めはたまたま事務所で会った時に確認するかのように改めて告白しても。


ちょっとやけになってテレビ局の廊下ですれ違いざまに告白しても。

もう、どうでもいいやと大勢のスタッフや共演者が集まっているスタジオで告白しても。

キョーコはにっこりと微笑んで



「ありがとうございます!私は大丈夫ですから・・心配しないで下さい、本当に敦賀さんは後輩思いですね?」



呆然とする蓮に、そう答えを返していた。


そのため、蓮とのことが大騒ぎになるどころかLME事務所は仲間意識がとても高く『京子』を大事にしていると噂が広がり、不破 尚のファンに嫌がらせを受けていた『京子』はその噂のお陰で以前のように仕事が出来るようになっていた。



「敦賀さんのお陰です!私も敦賀さんのこと大好きですから少しでも後輩として恩返しできるようにせっかく戻ってきたお仕事を全力で頑張ります!」



これまた必死に先輩としてではなく・・と告白しても、笑顔でガッツポーズまでされてしまってはもう何も言えなかったのだった。




***************




「キョーコちゃんの恋愛曲解思考は、形状記憶機能付きだよなぁ。最近の蓮は遠回しじゃなく、ストレートにアプローチしまくってるのに・・・・・・・・・・どんなに押されても最後には元通りの先輩後輩の立ち位置に戻されてるもんな」



「あの手強い恋愛曲解思考が、形状記憶機能付き?勘弁してほしいですよ・・・・・・・」



もう、泣きたい。


絶望的に両手で顔を覆った蓮に、社は気の毒そうに眺めることしか出来なかった。



だから・・・こんなことになったんだと思う。


そんな話をした数日後のドラマ撮影中。

蓮はキョーコをセット上で組み敷いていた。

それは台本にない動きでキョーコは驚きで固まっているし、社も真っ青。

スタッフや監督達は固唾を呑んで見守ってしまっている。

それでも蓮は、たまたま訪れた千載一遇のこの状況からキョーコを逃がすことなどしたくなかった。



「つ・・敦賀さんっ・・台本にありませんよ!?こんなシーンっ」



キョーコが半ば悲鳴のように小声でそう叫んでも、ざわつくスタジオ内の空気が緊迫してきても蓮はキョーコの役に入れあげる男を憑けたフリ(なんかしなくてもそのままだが・・・)をして押さえ込んだキョーコの細い手首をぎゅっと握り締めた。



「『・・・・・好きなんだ・・・どれだけ伝えたらわかってくれるんだ!?』」



それは台詞に乗せた本心。

いや、もうこの際キョーコの耳に届きさえすれば台詞だろうがなんだろうがよかったのかもしれない。


「『他の男にくれてやるつもりなんてない!」



本来なら、『他の男に行ってしまわないでくれ』という台詞だったのだがそれさえも変えて蓮はキョーコに伝えたい言葉を口にしていった。



「君の事が好きなんだ・・・今の立場とか、周りの環境とか、過去の出来事とか・・・そんなの関係ない・・・君が・・・君自身が俺のすべてなんだ!!」



ライトを背負い、顔に影を作って真剣に告白をする蓮は悲壮感がタップリで社はつい握り拳を作って心の中で蓮を応援していた。



「・・・・・少し・・・考えさせて下さい・・・」



それは今までにないキョーコからの返事だった。

希望していた色の良い返事ではなかったが、だからこそそれはキョーコが真剣に想いを汲んでくれたと思えた。


「・・・・わかった・・・・考えて・・・」



蓮はすっと立ち上がった。

その途端、それが演技ではないことがわかった一堂はざわめいた。

組み敷かれた位置から体を起こしたキョーコの元に女性のスタッフが駆け寄り髪の乱れやメイク服の皺を直しながらも気を使う。



「つ・・敦賀君・・・困るよ・・・まさか君が・・・」



監督は困惑気味に蓮に近寄ってそう言うと、社が慌ててフォローに入ろうとした。



「違うんです!!」



それを破ったのはキョーコの声だった。



「違うんです・・・敦賀さん・・・私が上の空だったから・・・その・・・初めてのキスシーンがこの後あるのかと思うと・・・その・・・ボーっとしちゃって・・・すみませんでした!!!」



ボッキリと折れてしまいそうなほど体を真っ二つにして頭を下げたキョーコに一同納得の表情を見せた。



「そうならそうと言ってくれよ~敦賀君~~・・しかし、本当に敦賀君は後輩思いだし・・芝居に紳士だなあ」



監督の発言に、張り詰めていた空気は和らぎもとの撮影風景に戻った。



「も・・最上さん・・・」



蓮は恐る恐るキョーコに声をかけると、やはりあの笑顔で振り返られた。



「すみません・・・敦賀さん・・・今までのこと・・・」



一瞬嫌な予感がしたが、キョーコがそう口にしたため蓮はホウ・・と息を付いた。



「いや・・・わかってくれれば・・」



「はい!この不肖、最上 キョーコ!!本当に慢心しておりました!!!」



「・・・・・え?」



ゴチンっと握り拳を自分の頭にぶつけ、蓮に頭を下げたキョーコはキラキラとした表情に変え顔を上げた。



「あんな風に告白まがいのことをされ続けるから・・・心の中でもしかして・・・なんて馬鹿な考えが出始めていましたが・・・そうですよね!?敦賀さんですもの!!本当の目的は今日のこのシーンを無事に撮り終えることだったんですね!?・・それなのに・・・恋愛超ど級の初心者がなんだかわからないゴシップに巻き込まれたりなんかしたからこの撮影が上手くいかないことを憂いていらっしゃったんですね?!本当に情けない後輩です私は!!それを今までのことと絡めてこうやって注意して下さるなんてっ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメだこりゃ



涙ながらに自分の不肖具合を切実に語り続けるキョーコは、蓮の中で若干抜け出したと思った先輩という名の迷路を新しく作り直し蓮をまたその中心に置き直した。



「敦賀さん!私、ちゃんと考えました!!今日のシーンどんなにかかっても必ず大先輩、敦賀さんの納得いくものにして見せます!!!!」



私にお任せください!!!


と、強く胸を叩いてみせるキョーコに蓮は何か頭の奥の方ではじけ飛ぶ音を聞いた気がした。



「・・・・・・・そう・・・・・俺が納得するまで・・・付き合ってくれるんだ?」



「はい!!それはもう!!」



「へえ・・・・愉しみだね?」



きらりと光る笑顔でキョーコを見下ろした蓮の表情は、誰がどう見ても真っ黒で先程まで明るい表情を振りまいていたキョーコは一気に石になった。



「それなら・・その唇が腫れあがるほどキスシーンを堪能するよ、そうそう・・・今までの告白はすべて今日のためじゃない・・・君との未来を永遠にするためのものだから、あ・・あとこのドラマが二人の記念になるように俺も全力を注ぐよ?どうしたの?そんなに怯えた表情をして・・・」



プルプルと震えるキョーコに蓮はゆっくりと近づくとその耳元に唇を寄せた。



「その曲解思考・・ナニが何でも捻じ曲げて真っ直ぐにしてやるから覚悟してね?キョーコちゃん」



青ざめるキョーコに蓮はウィンクを一つよこすと、心配そうに見つめている社に爽やかな笑顔を向けた。



「社さん」



しかし、その笑顔に安堵感など得られるはずもなく社も石になりかけながら返事をした。


「な、なんだ?蓮」



「形状記憶って・・・真っ直ぐにしたらそれを記憶しますよね?」



「・・・・・・・・・・え?」



「形状記憶の記憶を変えることにしました」



ひいいいいいい!!!??何言っちゃってんの!?この人ぉっ!?



などと思っても口に出せないほど凍り付いている社と、蓮にウィンクという最終警告で止めを刺されたキョーコはその後、通常の恋愛というものとは大きくかけ離れた世界に連れて行かれるのであった。




end