§いつかの虹 ~蓮側の虹~ | なんてことない非日常

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§いつかの虹 ~蓮側の虹~



 

 「やっぱり・・・消えてるとわかってても寂しいですね?」


蓮は見上げた空に何も浮かんでなくてそう溢すと、社も頷いたが思わずて言った風に笑みを漏らした。



「なんですか?」



「いや?お前もよっぽどロマンチストだと思っただけだよ?」



社にそう言われた蓮はガシガシと頭を掻くと、また雲行きが怪しくなってくる空にため息をついた。



「今日はコロコロ変わる天気みたいだなあ・・・・もしかしたら虹もまた見れるかも知れないけどその前に降る雨は嫌だなあ・・・」



蓮のため息をくんでか、社がそう言うと蓮も小さく頷いた。



「まあ、今日は屋外での撮影もないですし・・・移動も車ですから」



「まあな・・・こういう時は運転できるお前が羨ましいよ」



「ははは・・・・そう言えば、今日はこの間撮影したCMが大型ビジョンに流される日じゃなかったでしたっけ?」



移動するルートを考えていた時に、ふと思い出した事を口にした。



「ああ・・・そう言えばそうだったな・・何時からだっけ?・・・・おっ、ちょうどその時間なら近くを通るなあ・・・」



先に知らされていた時間と、現在の時刻を照らし合わせて社はふんふんっと仕事の顔で何度か頷くと蓮を見上げた。



「蓮・・・」



「わかってますよ・・・俺も仕上がりが気になりますし・・・少し早めに着いて確認しましょうか?」



そう決まると蓮は少し早めに車を走らせ目的地に急ぐのだった。




今回のCMは女性向けの香水だった。


少し黄みがかった香水が入ったクリスタルで出来た容器は、スタジオの光を虹色に反射して蓮の手の中に踊っていた。


細かな細工をされた蓋を開け、その香りを吸い込むと蓮の側に女性のシルエットが香りで模られた。

CG加工のそれはフワフワと浮いていても、蓮の目には愛しい女性の姿として映る。


『・・君の隣に・・・いつも・・』


画面の向こう側にいるであろうその女性を想って蓮は微笑んだ。
そして徐にその香水瓶に唇を寄せた。
会えないときでも、この香りで彼女を思い出すことが出来る・・そのお礼に。



「もっとシックな仕上がりかと思ったけど、結構ロマンチックなものになったな」


「そうですね?やっぱりCG加工のところが決めてですかね?」


CMが終わると、少し離れた路上の脇に停めた車の中で二人は感想を言い合っていた。
まだ、先ほどの余韻が残っているかのように大型ビジョンに見入る人々の姿に社は笑みを漏らした。


「今回もいい作品になったみたいだな?」


社にそう言われ、蓮も素直に喜び笑顔で頷いた。


「ええ・・・・じゃあ、少し早いですが次の現場に行きましょうか?」


「そうだな・・・・おっ・・・とうとう降ってきたか・・」


車を出そうとした蓮に返事をしながら覗き込んだフロンとガラスに大きな雨粒が降ってきたのを見た社はそう声を上げた。
それを確認しようと蓮がフロントガラス越しに空を見上げた途端、一気に視界を遮るほどの雨が降ってきた。


「わっ!?・・すごいなあ・・・」


「最近はこういった天気ばかりですね?」


蓮も少し呆気に取られながら雨を伺っていると、先ほどまで人だかりになっていた大型ビジョン前の遊歩道は雨から逃げたため人はいなくなり、見覚えのある後姿の人物が蓮と社の目に映った。


「あ・・・れ?・・・蓮・・・あれって・・」


「・・最上・・さん?」


その後姿は派手なピンクのつなぎと栗色の髪をぐっしょりと濡らし、愛用している自転車から降りたまま先ほどまで蓮が映し出されていた大型ビジョンを力なく見上げていた。


「なにしてるんだ!?すみません、社さん・・」


「ちょっと待って!?」


蓮がなにをしたいか即座に理解した敏腕マネージャーは、カバンを漁ると一本の折りたたみ傘を取り出した。


「お前、次も仕事があるんだから濡れたら困る!!だからこれでキョーコちゃんをさっさと連れて来い!」


「ありがとうございます」


蓮は傘を急いで開くと、弾かれるように雨の中に飛び出した。

いつもと様子の違うキョーコに蓮は言い知れぬ不安を抱え足を出来るだけ早く動かした。

キョーコの周りにいたであろう人々は各々、雨を嫌い雨宿りをしているのにキョーコはまるで罰を甘んじて受け入れているかのように激しくなる雨に身を曝していた。

そんなキョーコに早く傘をさして、その冷たくなっているであろう体を引き寄せ自分の熱を分け与えてやりたいと心が逸った。

しかし、その蓮を試すかのようにキョーコの元にたどり着く直前の信号に捕まってしまった。
それに合わせるかのように、キョーコは項垂れながら自転車を押してドンドン蓮の元から遠ざかって行き始めた。

蓮に気づかずにどんどんと小さくなるその姿に蓮はキョーコにとって自分などいらない存在だといわれているような気分にさせられた。

信号が変わり、落ち込んだ気分のままキョーコの姿を目で確認するとキョーコは何にもないところで立ち止まっていた。
それを見ると蓮は急いで追いつこうとした。
そんな蓮の目に上がり始めた雨の合間から虹が見え始めた。


「最上さんっ・・・・」


まだ聞こえる距離にいないことはわかっていても思わず蓮はそう呟いていた。

その瞬間、キョーコは不意に顔を上げた。
そしてその目に虹を映し出した。

薄く開いた唇が微かに動いた後、寂しげな笑顔を見せた。


「!?」


その直後、キョーコの頬に雨の雫ではないものが悲しみの色を濃くした瞳からあふれ出て伝い落ちたのを見た。

蓮に気付かずに、また俯いてしまったキョーコに蓮はゆっくりと近づきながら雨粒を含んだ傘をたたんだ。

逃げられてしまわないように・・・濡れそぼった悲しげな子猫を拾うため、蓮は虹の向こう側からその手を伸ばしたのだった。




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