§寒い冬に(まとめ) | なんてことない非日常

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§寒い冬に(まとめ)





  一体・・・何がどうなったんだ?



俺・・・社 倖一は担当俳優の拙くも涙ぐましい努力を重ねている恋愛を応援すべく想い人とスタジオではあるが、二人にしてその場を離れたはずだったのに・・・。





「ね?京子ちゃん・・この後の親睦会、来てくれるよね?」



「え・・・でも・・・」



「俺は君の恋人なのに一人で参加なんてつまんないな~」



「っ!?貴島さん!!そういう誤解を受けるような言い方は止めて下さい!!ちゃんと『恋人役』とつけてください!!」




え・・・・・っと・・・キョーコちゃんは何で蓮の目の前で貴島に肩を抱かれて可愛い赤ら顔で猛抗議をしているんだろうか・・・・。



蓮は背中しか見えないのに・・・・見えないのに!!




こ・・・・・・・こわいよ~~~~~!!!!!


吹雪が見えるよ~~~~~!!!!




:::::::::::::::::::::::::





そんな状況に巻き込まれる社氏が戻ってくる10分ほど前のこと。



切ないながらも想いを胸に秘め、キョーコが役の衣装に着替えて待っている蓮の耳に廊下からキョーコの声が聞こえてきた。



「そうは言われましても・・・・・」



歩きながら話しているのか声は徐々に蓮の元に近づいてきた。



「ええ!?今回もダメなの?・・・顔合わせの時もダメだったから今日こそはっ!と気合入れてきたのになあ」



困り顔のキョーコの横にぴったり寄り添いながら蓮の元に来たのは今回も共演する貴島で、蓮が隠し通していた彼好みのキョーコの姿を知られてから何かと口説きにかかっていた。



「あ、敦賀君おはよう!君は来れないよな?超多忙俳優さんだしね?だから京子ちゃんが敦賀君の分まで楽しもう!」



蓮の同意の言葉も聞かぬうちに貴島はそう確定すると、キョーコの肩をぐいっと抱き寄せた。




「ね?京子ちゃん・・この後の親睦会、来てくれるよね?」



「え・・・でも・・・」



「俺は君の恋人なのに一人で参加なんてつまんないな~」



「っ!?貴島さん!!そういう誤解を受けるような言い方は止めて下さい!!ちゃんと『恋人役』とつけてください!!」



先ほどまで独り占めできていたキョーコの可愛らしいふくれっ面は今、蓮ではなく貴島に向いていた。



「じゃあ、誤解じゃなく本当にしちゃおうよ!!そうしたら堂々と親睦会でもどこでも連れて行ってあげられるね」



さも名案だと言わんばかりに頷き、貴島は肩を抱きながらキョーコの手を取った。



「ね?そうしようよ」



ぐいぐいと押してくる貴島にどう返そうかとキョーコが悩みぬいていると、しっかりと貴島に握られている手と肩が横から解かれそちらに引き寄せられた。



「つ敦賀さん!?」



横から現れたのは今まで呆然と眺めていた蓮で飛び切りの似非紳士スマイルを放ちながら貴島の手からキョーコを奪い返した。



「ああ・・・もう手はあったかくなったね?よかった・・・・そうだ・・・最上さん・・・悪いんだけどその親睦会、断ってくれないかな?」



「え?!」



「・・・・なんで敦賀君が京子ちゃんにそんなこと指示すんのさ」



蓮の言葉に驚愕の表情をするキョーコと、眉間に皺を寄せる貴島に蓮は申し訳なさそうに眉をひそめた。



「すまないね・・貴島君・・・・実はさっき事務所から連絡が来て今日の仕事が終わったら社長のところに来るようにって最上さんと俺に連絡があったんだ」



「えっ!?そうなんですか!?」



「うん・・・・・・そうですよね?社さん」



蓮は背後にいる社に軽く振り返ると、同意を求める視線を投げて寄こした。



「あ・・・ああ!!・・・今その事で社長と連絡を取ってきたとこなんだ・・・・キョーコちゃん、今日23時に仕事終わるんだって?その時間ぐらいに蓮も終わるから一緒に社長のところに来て欲しいって」


(蓮~~!!いつから俺がいること知ってたんだ!?・・・というかいいのか!?俺!!いくらキョーコちゃんのスケジュールまで把握しているからって、こんな事言っちゃって・・・・・)




(・・・後で社さんに怒られるんだろうなあ・・・・俺・・・・)

「と、言うわけだから・・・また、今度にしてもらえるかな?貴島君」



社と咄嗟に口裏を合わせた蓮がにっこりと笑顔を見せると、貴島はじっと蓮と社を見比べた。


そして徐に大きく息をつくと、「ざあんねん」と大きく伸びをしながらそう言葉をこぼして見せた。




「じゃあ、また今度誘うからその時はちゃんと来てね?京子ちゃん」




(・・・・まだ・・・誘う気ですか・・・・)



キョーコはげんなりとしながら愛想笑いを浮かべた。



「は・・・・はい・・・・・」



キョーコの返事ににっこりと笑顔を作った貴島に手を振られその場に三人が残されると、キョーコは蓮と社に振り返り声を潜めて礼を言った。



「ありがとうございました・・・あの・・社長さんに呼ばれていると・・いうのは・・・」



キョーコの質問に社が苦笑いで答える。



「ごめん・・・嘘なんだ」



社のその言葉にキョーコは小さく頷いて笑顔を見せた。



「やっぱり・・・・・・謝るのは私の方です・・本当にすみません・・・もっと上手に私が断れたりできれば敦賀さんや社さんにお手数をおかけしなくても良かったのに・・・」



しょんぼりと肩を窄めるキョーコを蓮はじっと見下ろした。



「・・・・・・こういう時に演技で乗り切ろうとしないんだよなあ・・・・」



ぼそりと蓮がそう呟くと、社は聞こえたらしく苦笑いをした。

それに気がつかないキョーコは苦笑いをする社に首を傾げた。


「今度から俺や社長の名前を出して乗り切ったらいいよ・・・まだ未成年だし・・・・無理強いはされないだろうけど、温和に済ませたいだろうからね?」



そんなキョーコに蓮が提案をすると、キョーコは大きく頷いた。



「はい・・・・今までこんな事なかったのに・・・きっと敦賀さんから頂いたプリンセスローザ様のっ」



「それは違うから」



蓮に笑顔で最後まで言葉を言わせてもらえなかったキョーコがぶっすっとむくれるのを蓮は本当に楽しそうに微笑んで見ていたが、貴島がまだキョーコの事を気にしているのが視界に入り小さくため息をついた。



「・・・・・でも・・・・貴島君の手前、話を少しは本当にしないとな・・・」



「は?」



蓮は口元を手で探りながらキョーコをじっと見下ろした。



「・・・・・今日最後の仕事場所はどこ?」



「へ?・・・・あ・・・東テレですが・・・」



「じゃあ、そこに迎えに行くから・・・今度は自転車で行かないようにね?」



「で、でも!!・・・・・これ以上ご迷惑は・・・・」



社長に会うわけでもないのに迎えに来られても・・・・と焦るキョーコに蓮は少し申し訳なさそうな顔をした。



「・・・実は・・・少しだけ喉が痛いんだよね・・・・・・」



「!!!・・・ま・・まさか・・・」



蓮は喉を片手で擦りながら苦笑いをすると、猛烈な勢いでキョーコが蓮に掴みかかった。



「お・・・お風邪を召されたんですか!?」



「い・・いや・・・軽く・・・痛いかな?って・・・・・・なんだけど・・・・注意するにこした事ないかなあ・・と思って・・・よかったら風邪に効く夕食を作って欲しいな・・・・・それで貸し借り無しって言う事でどうだろう?」



「そんなっ・・・・私にコートを貸してくださったばかりにお風邪を召されたんですから、ぜひ私に回復するお手伝いをさせて下さい!!」



キョーコのあまりの剣幕に少々引け腰だった蓮だが、約束を確約できるとふにゃりと頬の筋肉を緩めた。


それに全く気がつかないでキョーコは夕食のメニューを考え始めた。


「今日の夕食は体が温まるものにしましょう!何がいいかなあ・・・生姜のタップリ入った鶏つみれのお鍋なんかどうでしょう!?」



「うん、おいしそうだし体も温まりそうだね?」



「そうですよね!!あ・・・社さんもご一緒したらどうでしょうか?」



「えっ!!?」



今まで、蓮の表情を傍観者として立ち尽くして眺めていた社に話が突然きたため、社は固まった。



「お鍋は大勢のほうが楽しいですし・・・・敦賀さんの食事量を知ってらっしゃる社さんとなら気兼ねないんじゃないかと」



(いやいやいやいや!!気兼ねありまくりですよ!!俺がっ!!!・・・・・蓮の・・・・蓮の視線が冷たい!!寒い!!!)



社は唇を紫にするほど怯え凍えると、目をキラキラとさせているキョーコにぶんぶんと首を左右に振って見せた。



「お、俺!仕事があるから!!悪いな蓮っ、付き合ってやれなくて!!」



「・・・・・いえ・・・そういうことなら仕方ないよね?最上さん・・・今回は二人でお鍋しようか」



何だか『二人で』が強調されたように聞こえた社だったが、とりあえず残念そうにするキョーコに謝った。



「ごめんね?キョーコちゃん・・・」



「いえ、では次の機会にでも・・・・・あ・・・これじゃあ貴島さんと同じですね?」



迷惑でしょうか?と小首を傾げて伺うキョーコは可愛らしすぎて、社はキョーコの背後にいる人物のために出来るだけキョーコを見ないように努めた。


「い・・いや?・・・迷惑じゃないよ?二人が良かったら今度一緒にお鍋しようね?」


だからこの話はもうおしまいにしておこうっ!!と社に言われ、キョーコは苦笑いをしながらも頷いたのだった。


社にとって待ちに待った撮影が始まり、二人が側から離れると大きく息を付いた。


(寒い・・・・今年の冬は熱くて寒い・・・・・頼むから・・・・平和な春を早くつれてきてくれ~~~~!!!)


社の願いはいつ届くのか・・・。


寒い冬に、周りを極寒にしながらお互いを熱くさせる二人に穏やかな日はいつ訪れるのか社は一人悶々と考えるのだった。








end