§好き嫌い | なんてことない非日常

なんてことない非日常

スキビ非公認二次創作サイトです。
駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

§好き嫌い











「敦賀さんって…好き嫌いはないですよね?」


もう何度も夕食を作っているというのに今頃?という質問をキョーコから投げかけられ蓮は夕食を食べる手を止めた。



「・・・・うん・・・特には・・・ないけど・・・」



「?・・・けど?」



どうして今頃?という質問を飲み込んで蓮はキョーコをじっと見つめた。



「・・・・・すごく好きなものは・・・あるよ?」



「!本当ですか!?じゃあ、今度それを作りますね?」



可愛らしい笑顔になったキョーコに固まりながらも蓮は小さく頷いた。



「・・・・お願いしたいけど・・・・」



「はい?・・・・・・!!もしかして・・・すごく難しいメニューですか?」



「・・・・う~ん・・・ある意味・・・かな?」



「?・・はあ・・・」



蓮が何を言いたいのかわからないが、たまにある自分をじっと見つめる視線に言いようの無い居心地の悪さを感じてキョーコは無理に笑顔を作った。



「あ、あの!どんなメニューですか?」



「・・・・・・・・・言ったら・・・・・差し出してくれる?」



リビングでいつものように少し離れて座っていたのに、気が付くと蓮がキョーコのすぐそばににじり寄っていた。



(そ・・そんなに・・難しい材料でも使ってるのかしら・・・)



首をひねりながら少し蓮から距離を取るため、片手を後ろに付いたキョーコだったが、肘から力が抜け柔らかいラグの上にペタンと倒れこんでしまった。



「俺が・・・食べたいのは・・・・」



倒れこんでいたキョーコの視界がふっと薄暗くなり、顔を上げると蓮がのそっとキョーコの上にまるで獅子が獲物を捕らえたかのように四つんばいで覆いかぶさっていた。



「!!?つ、敦賀さん!?」



「・・・・・・・・きみ・・・が食べたいんだけど?」



「!?・・・・・・き・・きみ・・・・ですか?」



「そう・・・きみ・・・」



「は・・はあ・・・それぐらいでしたら差し上げますから・・・あの・・・・・・退いて・・もらえますか?」



「・・・・・・・なんで?」



「・・・・え?」



喰われそうな子リスと今にも喰いつこうとしている獅子はお互い見つめあったまま固まってしまった。



「つ・・敦賀さん?あの・・・黄身・・・ですよね?」



「・・・君・・・だよ?」



「「・・・・・・・・・・・・」」



一時の間合いの後、何かに気がついた蓮は大きなため息をついたままがっくりと首を項垂れさせた。



(!?・・・・なっ・・何か・・間違ったこと言ったかしら?・・・・・もしかしてすっごく難しい黄身料理とか!?)



キョーコがうろたえていると、肩を振るわせはじめた蓮が顔を上げた。



(!!?なんで!?夜の帝王!?)



キョーコが蓮の表情を見て青ざめると同時に蓮は口の端をにやりと上げた。



「・・・もう・・その手の冗談は無しだ・・」



「へっ!?じょ・・・冗談!?」



「俺は・・君・・・・最上 キョーコさんが・・・欲しいんだけど?」



先ほどよりもさらに近づいてキョーコの耳にそう囁くとキョーコの思考がストップした。



「・・・・・最上さん?・・・・お~い戻っておいで?」



「へあ!?あ・・あの・・・」



「うん?」



「げ・・幻聴が・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



キョーコの発言に蓮が固まっていると、その隙にキョーコは蓮の下から這い出そうとしたが、それは叶わなかった。



「きゃあ!?」



キョーコが体をうつ伏せにして逃げようとしたため、蓮が後ろから抱きかかえた。



「逃げるのも無し」



「だ・・だって!!敦賀さんがビーグルみたいなこと言うから!!」



「・・・・・ビーグル?」



「・・・・・以前・・付きまとわれていたところを敦賀さんが追い払ってくれた・・・アイツです・・」



キョーコの言葉に蓮の眉がピクリと上がった。



「・・・・・ああ・・・・・・・・なんて・・言われたの?」



「・・・・連れ去りに来たとか・・・喰らい付くとか・・」



「・・・・・・・へえ~~~~」



「!!!!???」



背後からの異様な殺気にキョーコは一瞬で凍りついた。



「・・・そんなこと・・・言われてたんだ・・・」



冷たい口調にキョーコが芯から凍えていると蓮はひょいっとキョーコを後ろから抱え上げた。



「!!?ちょ・・あの!?」



「・・・・そんなことを言っていたのならあの時、彼を三枚にでも卸しておけば良かったね?」



お姫様抱っこになり目が合った蓮からきれいな似非紳士スマイルを浴び、キョーコは目の前を白くした。



「最上さんも未だに言葉の意味が理解できていないみたいだし・・・・ゆっくりと教えてあげるから、俺に美味しく食べられてください」



「!!?わ、私は美味しくなんてないですよ!?」



「・・・それを決めるのは俺だから・・」



「!!?」



また帝王になってしまった蓮の腕から逃れようとキョーコがもがいたが、びくともしない蓮はベッドルームに入る前に足を止めた。



「あ・・・一つ、大切なことを言い忘れていた」



「?」



ぜえぜえと息を切らしていたキョーコだが、そういって自分をじっと見つめる蓮に目を奪われた。



「最上さん・・・俺・・・君の事が好きだよ?というか大好物」



「!!?はっ!?あ・・あの?!」



神々スマイルで動きも思考も止まる中に言われた一言にさらに時が止まるキョーコを蓮は軽々とベッドに運んだのだった。



「ちょっ!!?つ、敦賀さん!!?なんでそんなに楽しそうなんですか!?・・・ちょ・・・きゃあ!?ええ!!?わああ!!!?そっ!?なっ!!?」





キョーコの絶叫が聞こえなくなる頃にはすっかりほったらかしになった夕食が冷めた代わりに、好きも嫌いも残すこともなくお腹いっぱいになった蓮の姿があったのだった。














end