その日もいつものようにラブミー部のお使いに出ていた最上 キョーコはぴったりと寄り添うようにLME事務所の社長の孫、宝田 マリアと楽しく部室に戻ろうとしていた。
「……なんですのよ、おじい様ったら!」
「もう、マリアちゃんたら…」
取り留めない会話に花を咲かせていたのだが、突然マリアが振り返り急に走り始めた。
「!?マリアちゃん!?」
「お姉様!早くきてくださいまし!!」
子供なのにものすごい早さで、どんどんあらぬ方向へと走るマリアにキョーコはなかなか追いつけず、先にある角を曲がられてしまった。
「ま、待ってマリアちゃん!?」
キョーコもその角を慌てて曲がると見覚えある人影が目に映った。
「やっぱり!蓮様~!!!」
マリアは一目散にLME事務所の看板俳優、敦賀 蓮に飛びついた。
「こんにちは、マリアちゃん」
「蓮様~!」
蓮にゴロゴロと甘えるマリアの後にキョーコは息を切らしながらやってきた。
(マ、マリアちゃん……何処の辺りから敦賀さんがいるってわかったの!?)
驚愕の表情でなんとか二人の所にたどり着いたキョーコを見た蓮は、いつものように神々スマイルを放った。
「こんにちは、最上さん」
「(うっっ!!)……こんにちは…敦賀さん…」
蓮の笑顔に引きつっているキョーコを見て更に引きつった顔になった者がもう一人いた。
ようやく三人に追いついた蓮のマネージャー、社だった。
(蓮!?いつからキョーコちゃんが部室じゃないところから来るってわかったんだ!?急に、ラブミー部とは違う所に向かいはじめたから…てっきりこっちに用事があると思ったのに……本当にキョーコちゃんがいるなんて!?)
体を恐怖で震わせる社を後目に、蓮とマリアは楽しそうに社同様青ざめているキョーコと会話をしていたのだが。
急にキョーコの顔がパッと明るくなり光の速さで蓮達の脇を通り抜け、正面階段を一瞬で駆け上がると開く直前のエレベーターの前にやって来た。
『ポン』
という音と共に乗客が降りてきた中にいる人を見てキョーコが歓喜の声をあげた。
「モー子さん!!」
「ぎゃあ!?あ、あんた?!なんでこんな所で待ってるのよ!?気持ち悪い!」
「え~!?二人の愛の成せる技じゃない!?モー子さん~待ってよ~」
パニック気味の琴南 奏江はキョーコから逃げるように足早に階段を下りると、呆然としている蓮達の前を気づかず通り過ぎた。
ぎゃあぎゃあと叫びながらラブミー部室へ向かう二人を取り残された蓮達は複雑な表情で見つめていた。
高性能[人]探知機…それは相手の心の所在までは探し当てられない幻の探知機………
end