おばあちゃんの朝
小学校一年生になった頃鹿児島から、おばあちゃんがやって来た黒船ではなくて、黒いお仏壇と一緒にその日から我が家の朝はお線香の匂いが立ち込めるなかボクボク チーン ポクポクボクボク チーン ポクポク木魚とおりんの音色が、家じゅうを包んだ子供ながらにそれは、おばあちゃんの昔からの儀式であり、お務めでありやらないと一日が始まらないくらい大切なことなのだと理解した昨日まで家族4人が寝室にしていた1階の6畳の和室はお線香の匂いのする、おばあちゃんの部屋になった何より、初めましてになる私の背丈より高い黒いお仏壇はこの和室に、とてもよく馴染んでいたおばあちゃんの毎朝のお務めはお供え物の固くなったご飯と、お水と、お茶を下げて新しいご飯と、お水と、お茶をつぎなおして、また供える両脇に飾ってある切り花の水を替えろうそくに火を灯し、お線香を焚きお数珠を手の間ですりすりしながら、お経を読み上げる数日おきにお供えの果物やお菓子を新たに取り替えて、お下がりを家族で食べる枯れたお花たちは新しいお花に入れ替える誰にも聞かなかったし誰にも教わらなかったけれどおばあちゃんが目を閉じて、手を合わせているのは黒いお仏壇にではなくて亡くなったおじいちゃんに向けてなのだと知ったおばあちゃんにと っておじいちゃんは大切な大切な人だったんだな数十年たった今わたしは実家に帰るたびおばあちゃんとおばあちゃんの大切なおじいちゃんと父のことを思いながら静かに目を閉じて手を合わせる