昨年の夏頃だったか、柏駅西口にあるデパートの「高島屋」と同グループで運営する「柏高島屋ステーションモール」(以下ステモ)が大きくリニューアルされるという情報が流れた。

 

 

 

 まず昨年9月に市内最大級の「ユニクロ」がステモにオープンした。そして今年春には31店舗が順次オープンし、秋にはそれまでレストラン街だったステモ新館の10、11階が地域のコミュニティゾーンに変わるという。

 

 

 

 そうした中、スーパー「オーケー」のステモ出店が話題になった。

 

 

 ちなみに、ステモ内には高級スーパーの「成城石井」も2018年に出店している。

 

 

 

 

 

 

 スーパーマーケット「オーケー」は、首都圏で150店舗以上を展開する食品スーパー。年商約6000億円。店舗が近くにあり利用していた娘たちからその安さを聞いていた私たちは「柏にも出店してくれないかな・・・」と期待していた。通院している都内の歯科クリニックと同じ建物内にもあるので時々買い物をするが、自宅近くのスーパーより同じ商品が間違いなく安い。『高品質・Everyday Low Price』のキャッチフレーズの通り ”激安スーパー” である。銀座に出店したことでも話題になったが、現在は東大阪市にも関西第1号店を準備中である。

 

 

 

( 柏駅西口にある「高島屋柏店」。奥に「柏高島屋ステーションモール」が広がる。)

 

 

 

 

 「高島屋」という老舗デパートが、自社と競合しそうな衣料大手や勢いと特色のある食品スーパーをテナントとして入居させる・・・ひと昔前までは考えられなかった動きである。

 

 

 

 そこには、昔のデパートの良さや楽しさを知っている世代が高齢化し、その年齢層の来店がめっきり少なくなってきたことが大きいのだろう。

 

 

 

 スーパーやショッピングセンター、通販の成長でデパートの衰退が指摘されて久しい。

 

 

 柏市内でも「高島屋」と駅をはさんで反対側の東口にあった「そごう柏店」が2016年に閉店、43年の営業に幕を下ろした。また、南隣の松戸市にあった「伊勢丹」は2018年に撤退している。

 

 

 私の故郷・鹿児島市内に唯一残っていた百貨店「山形屋」が営業は継続するものの、私的整理に入ったというニュースが先週10日に流れた。ここ数年、地方百貨店の閉店のニュースが続いているのはやはり寂しい。

 

 

 

( 旧・「そごう柏店」の建物。閉店以降空きビルだったが柏市が買い上げ、まもなく取り壊しが始まる。今後の計画はまだ発表されていないが、東口再開発の ”受け皿” として貴重な跡地である。)

 

 

( 柏駅東口に広がるデッキと「ビッグカメラ」や「マルイ」等の商業施設。)

 

 

 

 

 私たちの住む柏市は、都心から30㎞の距離にある典型的な東京のベッドタウンだ。今では「・・・だった」というべきかもしれない。私たち家族が柏市に引っ越してきたのは昭和60年だった。私が38歳だったから39年前のことだ。

 

 

 

 当時は多くの分譲地やマンションが売り出され、通勤・通学客が集中する柏駅は大変な混雑だった。しかし、その混雑回避のために常磐線に並行して建設された新路線「つくばエクスプレス」が完成した2005年頃には、柏駅の乗降客は私鉄・JRともすでに減少傾向にあった。私たちの少し上の先輩たちがリタイアし ”通勤電車を降り始めていた” 頃だった。

 

 

 

 そうした時代背景の中での ”我が家の買い物動向” を振り返ってみよう。

 

 

 

 柏市に転居してきた頃は、自宅近くにはスーパーは「東急ストア」1軒だけだった。妻はたまには電車に数分乗って柏市街に出かけ、駅近くの「イトーヨーカドー」や「高島屋」で日常の買い物をしていたらしい。その「イトーヨーカドー」もこの秋には閉店となる。しかし現在では、徒歩圏内にスーパーは6店舗もあり助かっている。

 

 

 

 それから15年ほどして、運転免許を取った妻の買い物範囲はさらに広がり、野菜などの購入は手賀沼湖畔にある「道の駅しょうなん」が中心になった。さらに「高島屋」にも車で行くようになり出掛ける回数は増えた。その頃、私は「高島屋は彼女にとってまるで遊園地のようだなあ・・・」と思っていた。

 

 

 

 その後、我が家は娘たちが結婚し家を出て、夫婦2人とも70歳を過ぎた2年半前に車を手放した。そして足腰の衰えとともに柏駅周辺に出掛ける頻度も一気に落ちた。

 

 

 

 今では日常の買い物のほとんどは、自宅から歩いて坂道の一番少ない場所にあるスーパーとドラッグストアだ。

 

 

 

 逆に、私たちの故郷である九州からの食品取り寄せは増えた。妻が通販で購入する日常品も多くなった。私もたまに買う書籍はAmazonだ。徒歩圏内の本屋は無くなって久しいし、柏駅周辺にも大きな書店は2軒しかなくなった。買い物だけのために柏の街に出かけることはほぼ無くなった。

 

 

 

 さらに、私たちの住む約1000戸の分譲地では「生協」の配送車がひっきりなしに走り、その配達風景をよく目にする。もう近くのスーパーにすら買い物に出掛けない高齢者が増えているということだ。買い物に出かける人もカートをゆっくり引っ張りながら歩いている高齢者が目立つ・・・

 

 

 

 そうした高齢世代が増え、わざわざデパートまで出掛けてきてくれる客が漸減してくる中で、「高島屋」が戦略を変えざるを得なくなったのは仕方がないことだ。

 

 

 

 有力なテナントを入れることで賃貸収入は安定する。加えて集客力のあるテナントの入居で周辺から集まってくる客に、テナント店舗とは異なる魅力的な商品やイベントを準備しデパートにも足を運んでもらおう、そして全体として共存しようということだろう。

 

 

 

( 10数年前の柏市中心部。中央が柏駅付近。左奥にそびえるのが柏の葉地区に当時建築中のマンション群。その向こうに点々と続く橋脚が「つくばエクスプレス」で奥を流れる川は利根川。)

 

 

 

 柏市の推計人口は434千人だが、商圏ともいえる周辺の我孫子市、野田市、流山市を加えると90万人を超える。東京に近い50万人都市・松戸市の北部や船橋市の商圏ともいえる鎌ケ谷市からの客も多く、さらには10㎞くらいしか離れていない茨城県取手市等からの客を加えるとゆうに100万人を超えるかなり大きな商圏ではある。

 

 

 

 「高島屋」の商圏内には、柏の葉や流山といった新しい商業の核が出来つつあるが、流山の中心施設「流山おおたかの森ショッピングセンター」も同社グループの運営であり、ふたつの核で役割を分担して千葉県北西部での商圏確保に挑んでいくのだろう。

 

 

( 柏市の西隣り・流山市の「おおたかの森ショッピングセンター」)

 

 

 

 ・・・39年前に柏市民になってからの街の移り変わりを夫婦で話す時がたまにある。

 

 

 転居してきた頃は少し不便だったが、人口が増えていくとともにスーパーやコンビニ、ドラッグストア、ホームセンター、ファミレス等が周囲に次々に開店していった。

 

 

 そして電車で数分の柏駅前にはデパートがふたつもあり、買い物という点では不自由することのない時代を私たちは過ごしてきた。リタイアした後は特別なものを買う時以外、東京に買い物で出掛けることはなくなった。

 

 

 しかし、時間の経過とともに世の中は少しずつ変わり、ここ数年の変わり様はその速度を一気に上げた。

 

 

 買い物もほとんどのスーパーやコンビニでは、自分で精算機を操作し支払うのは当たり前で、商品スキャンまで自分でやるセルフレジも広がってきた。ファミレスでのタブレット発注や配膳ロボットも当たり前になりつつある。

 

 

 顔なじみの従業員さんとの会話を交えたやり取りは間違いなく細ってきた・・・人手不足と言ってしまえばそれまでだが、今までのような至れり尽くせりの様々なサービスを誰もが受けられる社会は戻ってこないだろう・・・

 

 

 住民の「高齢化」が街を変え、少子化に伴う人手不足が、街や店舗、交通機関といった社会の仕組みを変えていく・・・

 

 

 

 

 

 ・・・変わるものが多い世の中にあって、故郷の風景が昔と変わらないのは何歳になっても嬉しい。下の写真は故郷・鹿児島の日豊本線「隼人駅」の朝の風景。一番奥に青くそびえるのが霧島連山だ。

 

 ・・・私も60年前の高校時代はこの駅を利用した。その頃はまだ電化されていなかったため、ディーゼル車か蒸気機関車だった。

 

 

                     

 

 

(注)柏市空撮、おおたかの森SC、隼人駅の写真は、ネットやfacebookからお借りしました。ありがとうございました。