66歳2か月でリタイアし ”毎日が日曜日” になるまで、私は22歳の時から44年と2ヶ月フルタイムで働き続けてきた。

 

 

 

 44年間働く場所を与えて頂いた多くの方々に感謝し、そして長期間働き続けることのできた体力を与えてくれた両親や、その間支えてくれた妻に感謝している。

 

 

 

 私はこの5月末で完全にリタイアしてから丸11年になる。まもなく77歳だ。最後の勤務場所は、多くの高齢者福祉施設を運営する社会福祉法人だった。6年間勤務した。

 

 

 

 時間が経つのは速いものだ。

 

 

 

 

 

 

 11年前リタイアした時、1日24時間を100%自分で使える毎日になった訳だが、時間の過ごし方で戸惑うことはまったくなかった。

 

 

 

 リタイア1年目は特に新しいことはしなかった。

 

 

 あえて言えば、妻と2人暮らしの中で生活のリズムを作る目的もあって、「朝食当番」だけを引き受けた。昔から厨房に立つことは苦手ではなかったので片付けも苦ではなかった。これは11年目の現在でも続いている。

 

 

 

 もう一つは退職したらやろうと思っていたことを1年目に実践した。

 

 

 6年間支えてくれた施設の職員たちへ感謝のエッセイ本を自費出版して贈った。60歳で着任して彼らの働きぶりに感激した私は、その様子を都度書き留めていたから原稿は既にあった。退職して3か月で小さな本を上梓し彼らに届けることができた。

 

 

 

 

 

 2年目に入ると、近くの特別養護老人ホームでボランティアとして週2,3日手伝うようになった。老人ホームで利用者と接したり働くことの楽しさを忘れられなかったのだ。ボランティアは左眼に障害が出るまで3年近く続けた。

 

 

 

 

 

 

 ・・・それでも時々遊びに来る長女には、時間を持て余しているように見えたらしい。

 

 

 3年目に入った正月だった。


 「ヒマそうだからブログでも始めたら・・・お父さんは書くことが好きなんだから」と、ブログのアカウントを私のパソコンに設定して帰っていった。

 

 

 

 2016年1月から私の拙いブログが始まった。

 

 

 このブログ投稿は今年8年目に入り、本件ブログが455本目だから、ほぼ週1本の投稿が続いていることになる。ネタ探しから資料集め、パソコンでの原稿づくり、そして推敲しての投稿・・・リタイア後の時間つぶしでは、最も多くの時間を割いている過ごし方でもある。

 

 

 コロナで家に閉じ込められていた2021年には、そのブログの中から ”郷愁” をキーワードに32編を選びエッセイ本として出版、”郷愁” を共有する友人知人に贈った。

 

 

 

 

 

 

 ところで、現役時代の休日に続けてきた趣味や好きなことは、”毎日が日曜日” になるといつでもできる状況になった。

 

 

 ウォーキングがそのひとつ。リタイア直後は一日10キロ歩くこともあったが、現在はせいぜい5千歩、4キロくらいだ。

 

 

( 千葉県柏市や我孫子市等に接する手賀沼。一周約20キロ。リタイアしてから眼を悪くするまでこの緑道をよく歩いた。)

 

 

 

 

 旅行は、現役時代から私たちの故郷である九州への帰省も含め、定期的にやってきたのでリタイアして特に増えた訳ではない。最近は体力が落ちてきたこともあるが、旅行への意欲はだいぶ落ちてきた。

 

 

 また2年前、私は視力の低下もあり運転免許を返納した。妻はまだ運転していたが、車を手放したこともあり近場の観光地へ出かけることも無くなった。そしてゴルフもその時卒業した。

 

 

 

 さらに「リタイアしたら、若い頃買った本を再読するのだ!」と楽しみにしていたが、それほど読書量が増えた訳ではない。いつでも読めるとなるとなかなか読まないものだ。新たに書籍を購入することは少なくなったが、時間はたっぷりあるので新聞や本をじっくり読めるようになった。

 

 

 

 また、私が最も長い間楽しんできた趣味というか好きなことに「スポーツ観戦」がある。なかでも野球とラグビーのその歴史は長い。

 

 

 高齢になって思うことだが、この「スポーツ観戦」という趣味は、テレビさえあればいつでも楽しめるので良い過ごし方だなあ・・・と感謝している。



 我が家は昔からケーブルテレビなので、J-Sports、スカパー、GAORA、ゴルフネットワークなどのスポーツ専門チャンネルも視聴できる。私には十分すぎるほどだ。

 

 

 小学生時代から応援している埼玉西武ライオンズの公式戦は、試合終了まで全試合観戦できるし、ラグビーも放送がある試合はほぼ全試合観戦できる。

 

 

 そのスポーツ観戦も、球場やラグビー場に出掛けての現地観戦はめっきり減った。何年も愛読してきた月刊誌「ラグビーマガジン」の購入も昨年限りで止めた。紙面の小さな文字が読みづらくなってきたのだ。

 

 

 

 友人や知人の中には、短歌や俳句、川柳などの創作を趣味にしている人、畑を借りて菜園を楽しんでいる人、「青春18きっぷ」で小旅行を楽しんでいる人、地域活動に精出している人・・・いろいろだ。

 

 

 皆それぞれに自分にあった時間の過ごし方を楽しんでいる。

 

 

 

 ・・・リタイアして11年が経とうとしている現在、考えてみるとまず年金生活に入った訳だから、現役時代と同じようなカネのかかる過ごし方は出来ない。


 さらに着実に進む身体の衰えで、それまでと同じような体力を使う趣味や楽しみを続けることもだんだん難しくなってくる。

 

 

 加えて2020年からはコロナ禍もあり出掛けることが少なくなり、おのずと行動範囲が狭まった。室内で過ごすことが多くなった。

 

 

 ・・・だから、本を読む、水彩画を描く、ブログを書く、テレビでスポーツ番組を観戦する・・・そして、最近はYouTubeを見ることが多くなった。


 YouTubeは玉石混交ではあるが、懐かしい貴重な映像や興味深い内容のチャンネルも多い。高齢者にとっては貴重な暇つぶしのツールである。

 

 

 

 

  最後に、最近私が過ごした日の風景をひとつ書いておこう。

 

 

 先日、六本木1丁目にある「泉屋博古館」に『うるしとともに ー くらしのなかの漆芸美』を鑑賞に行ってきた。

 

 

( 住友グループの美術コレクションを企画展で展示している「泉屋博古館」。京都にもある。)

 

 この美術館は、住友グループが所有する様々な美術品を展示公開している。次女の旦那さんが同グループに勤務していて時々招待券を送ってくれる。私が住む柏からは1回乗り換えるだけで最寄り駅に着くので楽だ。今回で3回目の訪問だった。これまで鑑賞した陶芸家・板谷波山、日本画家・木島櫻谷の作品とも実に素晴らしかった。

 

 

 

 私は「漆芸品」に特別の関心がある訳ではなかったが、妻は「是非行きたい。楽しみ!」と前から期待していた。


 美術館に行くと、どうしても目の悪い私は説明文や展示品の細部がよく見えない。加えて長い時間立ち続けることも苦痛になりつつあるので、会場の椅子で時々休憩を取りながらの鑑賞となる。

 

 

 しかし、展示された漆芸品は見事だった。漆黒や朱色の器などに描かれた蒔絵、また螺鈿で見事に装飾された様々な漆器、漆を精細に浮彫りした盆などの漆器・・・圧倒された。

 

 

( 最初の展示室は撮影が許されていた。)

 

 

 

 

 


 ところで、美術館といえば私は写実的な絵画が若い頃から好きだった。眼を悪くする前までは絵画展の情報は時々チェックしていたものだ。

 

 

 また自分で描くことも好きだからコロナ禍で始めた水彩画をたまに描く。一方、音楽の素養の無い私は、若い頃の1960年~70年代の流行り歌以外の音楽にはまず関心が無い。だからコンサートや演劇に出かけることはほとんどない。

 

 

 

 ところで、10日くらい前の新聞に「麗子の生誕110年作品展」に関する記事を見つけた。

 

 

 岸田劉生(1891年~1929年)が自分の娘をモデルに描いた「麗子像」シリーズはよく知られている。若い頃から好きな画家のひとりだ。

 

 

( 岸田劉生「自画像」)

 

 

 (ご参考)写実的な画家といえば、リタイアしてからその絵に出会い好きになった髙島野十郎(1890年~1975年)がいる。岸田と髙島は同世代の画家で、髙島は劉生の絵との接点があったようだ。福岡県立バーチャル美術館の『髙島野十郎の世界・略年譜』には次のようにあった・・・絵画団体から身を引き、独学で絵の道を究めていた頃の髙島野十郎は、大正期の洋画壇で活躍していた岸田劉生ら草土社(そうどしゃ)の画家たちや、ゴッホの影響を顕著に見てとることができる・・・

 

 

 

 その作品展は、東京国立近代美術館で4月7日まで「所蔵作品展 MOMATコレクション」の中で開催されている。調べたら劉生の数枚の麗子像のほか、父から絵の手ほどきを受けた麗子自身の作品も8点ほど展示されているらしい。

 

 

(「麗子像」)

 

 

 

 ・・・東京・竹橋にある会場近くの千鳥ヶ淵の桜は、あとひと月もすれば満開になるだろう。4月に入って出掛けることにした。

 

 

 

 

 

 

( 昨年撮った自宅近くの公園の桜。)

 

 

 

 

(注)手賀沼の緑道、書籍、漆器、公園の桜以外の写真はネットよりお借りしました。ありがとうございました。