9月24日、大学ラグビーの早稲田大対筑波大戦を観戦してきた。

 

 

 

 この試合で、私の目を引いたのは筑波大学4年・主将でNo.8の谷山隼大君だった。

 

 身長184cm・体重94kg 県立福岡高校出身。高校、大学ともあの元日本代表のWTB福岡堅樹選手の後輩だ。

 

 

 この試合のMIP(モストインプレッシブプレーヤー)は、2トライをあげた筑波大のWTB飯岡健人君(1年・流経大柏)だったが、私の中ではこの谷山君だった。

 

 

( 早稲田大戦での谷山隼大選手。9月24日の写真ではありません。)

 

 

 

 まずこのYouTubeをご覧いただきたい。

 

 

『大学ラグビー コレ絶対うまい奴』 (チャンネル「taka3110」様よりお借りしました)

 

 

 

 3分間の短い映像ですが、先日の早稲田大戦における谷山君の素晴らしいプレーをコンパクトに編集してあります。

 

 ・・・谷山隼大君は背番号8で、水色のヘッドキャップを付けています。

 

 

 

 ラグビールールに詳しくよく観戦される方なら、谷山君のプレーを見て「凄い!」と思わず声を出されること間違いなしです。

 

 

 

 私が一番びっくりしたのは、前半20分頃だったか、早稲田のゴールライン近くでPKを得て、谷山君がタップして1人で突っ込みトライを挙げたシーン。映像の最初に出てきます。

 

 

 谷山君を阻止しようと早稲田のFW3人がタックルにいきますが、それをはねのけた見事なトライでした。早稲田の3人の体重合計は300kgを超えていましたが、なす術がなくあっさりトライを献上しました。

 

 

 

 No.8としてのボール争奪戦や、ボールキャリヤーとして相手守備網を突破する活躍は当然として、バックス並み、いやそれ以上の正確で飛距離の出るキック力やチャージへのスピード、SHかと思わせるボックスキックの巧さとその飛距離、ラインアウトにおけるLO並みのジャンプ力とハイボールキャッチのスキル・・・

 

 

 

 このYouTubeを投稿されている「taka3110」さんが、

 

『ラグビー日本代表新HCにオススメのニュータイプ ”ラグビー界の大谷翔平” 筑波大学No.8キャプテン谷山隼大 VS早稲田大学』

 

と、サブタイトルを付けている意味が伝わってくる万能選手です。

 

 

 

 ・・・来年の卒業後どういった道に進むのか知りませんが、今後我が国最高峰の「リーグワン」でのプレー、その先の日本代表でのプレーが期待される注目選手です。

 

 

 

( 慶応大戦の谷山隼大選手。)

 

 

 

 まだ谷山隼大君のことを詳しく紹介していませんでした。ここはスポーツライター・斉藤健仁さんの記事を参考にさせていただいています。

 

 

 谷山君は、福岡市の中心部から東へ20㎞ほど離れた福津市で2001年に生まれている。両親はともに福岡大OBで、お父さんはラグビー、お母さんはやり投げの選手だった。伯父さんや従兄弟もラグビーをやっていたこともあり、小学1年から自然な流れで玄海ジュニアラグビークラブ(以下玄海JRC)でラグビーを始める。

 

 また地元の相撲クラブにも入り小学5年時には県大会で優勝している。谷山君は、相撲はブレイクダウンの時に相手をはがすのに役立っていると述懐している。現在でも、レスリングをラグビーのトレーニングに取り入れているチームがある。共通する部分があるのだろう。

 

 玄海JRCは練習グランド等でサニックスの協力を得て運営されているが、OBには前出の福岡堅樹(福岡~筑波大~パナソニック)、中靏隆彰(西南学院~早稲田大~東京サントリー)、箸本龍雅(東福岡~明治大~東京サントリー)、廣瀬雄也(東福岡~明治大)らの選手がいる。福岡選手と谷山君の実家は隣町同士だ。

 

 

 

 中学校では玄海JRCでラグビーを、部活では陸上競技部に入り、やり投げや走り幅跳びに取り組み、県内で上位に入る身体能力の高さを発揮している。

 

 中学時代のラグビーでは福岡県選抜に選ばれ、前出の廣瀬雄也選手や、現在早稲田大主将の伊藤大祐選手(高校は桐蔭学園だが、中学までは福岡の筑紫丘RCJR)らと一緒に戦い全国大会で準優勝している。その後、この3選手はそれぞれの大学に進み、筑波大、明治大、早稲田大の主将を務めることになる。

 

 

( 高校時代の谷山隼大選手。)

 

 

 高校は、地元で ”フッコー” と呼ばれる県立福岡高校に進む。県選抜の仲間が東福岡などの強豪私立高校に進む中、谷山君は中学時代から決めていた福岡高校に進んだ。小学生時代、そのお下がりを着て練習したという憧れの福岡堅樹選手の影響が大きかったようだ。

 

 

( 福岡県立福岡高校。)

 

 

 福岡高校ラグビー部は来年創部100年を迎える古豪である。慶応大にラグビー部ができてから25年目、九州の旧制中では初めてのラグビー部だった。1984年(昭和59年)東福岡高校が花園に初出場し頭角を現すまで、福岡高校は花園の常連校でこれまで37回全国大会に出場している。

 OBには、古くは日本ラグビー協会の元専務理事・白井善三郎、前日本ラグビー協会会長・森重隆、豊山京一、南川洋一郎、神田識二朗、入江剛史らの名選手・好選手がいる。最近では福岡堅樹選手だろう。また先日の対早稲田大戦の筑波大のメンバーにも、谷山君と同級生の横溝昂大ショーン選手、2年後輩の濱島遼選手の3人の福岡高校OBが先発した。

 

 

( 谷山君憧れの福岡堅樹選手。日本代表としての勇姿。)

 


 

 そして、大学は憧れの福岡堅樹選手と同じ筑波大に進むことになるが、じつは福岡高校のOBから早稲田大を勧められ受験している。しかし推薦・一般入試とも落ちている。早稲田ファンとしては「もったいない! なぜ落としたんだ・・・」と呟きたくもなる話だが、「筑波大に行って良かった」と谷山君は話しているから、これはこれでよかったのだろう。

 

 

・・・筑波大は茨城県つくば市にあり、私の住む千葉県柏市からは北へ30㎞くらいだ。秋になるとよくドライブに行った。筑波大キャンパスの紅葉は美しい。団体競技で国立大学が全国大会のベスト4以上まで進むのは少ない。全ての種目を知っている訳ではないが、昔の京都大のアメリカンフットボール、最近では筑波大のサッカーやラグビーくらいだろう。私立大に比較して練習環境や部員獲得では苦労も多い。そういった意味でも応援したい大学だ。

 

 

( 筑波大開学記念館の紅葉 )

 

 

 

 今回、筑波大ラグビー部の谷山隼大主将を取り上げたが、改めて次のふたつを感じた。

 


 ひとつは、最近よく言われるようになったことだが、「子どもの頃は一つの種目だけではなく、様々なスポーツを経験させるのがいい」ということだ。

 

 米国などでも「子どもの頃は、2種目以上のスポーツに同時に取り組んだり、季節ごとに取り組む種目が違った・・・」と話す有力スポーツ選手が多い。谷山君の育った過程を見ると、ご両親から引き継いだ身体能力の高さもあるが、相撲や陸上競技が今の谷山君の強さの一部を形成しているのは間違いない。

 

 

 

 もうひとつは当たり前のことだが、谷山君のように花園に出場できなかった高校生の中にも、将来の日本ラグビーを背負う潜在力を持った逸材がいるということだ。

 

 日本の高校を卒業し、今回のW杯フランス大会の登録メンバーに選ばれた選手の中にも、非花園組の堀江翔太、具智元、中野将伍、下川甲嗣らの選手がいる。日本ラグビー協会もそうした隠れた逸材を発掘するいろいろなプロジェクトを進めているが、できたら、今まで助太刀してもらっていた外国籍の選手たちの力を借りなくても、“W杯ベスト8” に残れるような日本代表を作ってほしいものだ。

 

 

 

 最後に、素人なりに谷山隼大君のポジションを考えてみた。

 

 

 彼は高校時代からCTB、FL、No.8・・・とFW、BKを問わずポジションを与えられてきた。そして、どの位置でもその役割を十二分に果たしてきた。

 

 

  それはそれで、彼が自身のラグビーセンスを生かした万能選手だという証左であり、今後もどのポジションで使うか、将来のチームも含めてヘッドコーチはうれしい悩みを持つことになるだろう。

 

 

 ただ、今回のW杯のメンバーに入っている同じ福岡県出身の先輩たち、下川甲嗣選手(修猷館〜早稲田大〜東京サントリー)の188cm・105kg、福井翔大選手(東福岡~パナソニック)の186cm・101kgと比較すると、大きい外国人選手に対抗するには身長・体重とももう少し欲しい。

 

 

 現時点での谷山君の攻守の激しさ、プレーの速さ、キック、キャッチングを見ていると、私は「将来は大型のCTBとしてプレーするのを見たいなあ・・・」という気がしている。

 

 

 

 

 ・・・10月1日(日曜日)、谷山隼大主将率いる筑波大は、小学生時代、玄海JRCで一緒にラグビーを始め、お互い切磋琢磨してきた廣瀬雄也主将率いる明治大と激突した。

 

 後半12分までは21対21と接戦だったが、筑波大の選手が、危険なプレーでシンビンによる10分間の退場となったこともあり、その後、明治大が3トライを追加、21対40で負けた。しかし、この試合でも谷山主将は攻守でチームを牽引、帝京大と並ぶ優勝候補の明治大を苦しめた。

 

 


頑張れ! 谷山隼大君!


頑張れ! 筑波大学ラグビー部!

 

 

ご参考) 多くの日本代表選手を生み出している「ラグビー王国・福岡」について考えてみたブログです。よろしかったらお読みください。(枠内をクリックしたら開いてお読みいただけます。)

 

 2022年6月29日投稿 「ラグビーは素晴らしい…福岡県にラグビーが根付いたのは何故だろうか?」

 

 

 

 

(注)写真、YouTubeはすべてネットからお借りしました。ありがとうございました。