2024年の本屋大賞のノミネート作品が発表されている。

今年のノミネート作品は、それぞれのジャンルでベストセラーとなっており、完成度も高く、どの本が大賞に選ばれるのか、なかなか予想が難しい。

今年の大賞の発表予定日は4月10日なので、その間、ノミネート作品を読んで、予想するだけでわくわくする。

 

 

本屋大賞は、全国の書店員の投票だけで選ばれる賞で、売り場からベストセラーをつくる!というコンセプトのもと、出版業界を盛り上げようと創設された賞である。

2004年の第1回(小川洋子「博士の愛した数式」)に始まり、この20年間に創設された本に関する賞としては最も成功し、社会に受け入れられた賞と言える。

受賞作のほとんどは長期に渡るベストセラーとなり、映画化もされている。

もともとその年のベストセラーが選ばれやすいという面はあるものの、この賞の特徴は、何と言っても、そのわかりやすいコンセプトにある。

全国どこかの書店に勤務している書店員たちが、ネットで登録し、「最も売りたい本」の投票を行うのである。

その投票が多かった1冊に大賞が与えられるというわかりやすさであり、当然得票数に応じて、ノミネート作品の順位もわかる。

 

今回(2024年第21回)の場合、全国の書店員により、昨年12月1日~本年1月8日まで、一次投票が行われ、その集計の結果、上位10作品がノミネートされた。

一次投票では、一人3作品を選んで投票する。

二次投票は、2月1日~2月29日まで行われるのだが、書店員はノミネート作品をすべて読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票する。

二次投票の得点換算は、1位=3点、2位=2点、3位=1.5点として得点集計し、大賞が決定されるのである。

今回の一次投票では、全国の530書店、書店員736人から投票があった。

尚、投票は一次投票から参加しなければならず、二次投票から参加することはできない。

 

一次投票した人は、二次投票までにノミネート作品10冊を全て読んだ上で、ベスト3を選ばなければならないので、結構、投票のハードルは高いのだが、今まで20年間、全国の書店員はよく頑張って、この賞を盛り上げてきたと思う。

最近、私の住む街でも、長らく頑張ってきた書店がなくなってしまい、淋しい思いをしている。

何とか、全国の多くの書店に残ってもらいたいものだが、今後、書店数が減ってきたら、賞のあり方も見直さざるをえなくなるかもしれない。

そんなことにならないように、私としては、Amazonのみでなく、どこでも買える本はなるべく直接書店に足を運んで買うように努力しているのである。

 

さて、過去の本屋大賞受賞作一覧は、以下の通りである。

  • 2023年:『汝、星のごとく』凪良ゆう
  • 2022年:『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬
  • 2021年:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ
  • 2020年:『流浪の月』凪良ゆう
  • 2019年:『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
  • 2018年:『かがみの孤城』辻村深月
  • 2017年:『蜜蜂と遠雷』恩田陸
  • 2016年:『羊と鋼の森』宮下奈都
  • 2015年:『鹿の王』上橋菜穂子
  • 2014年:『村上海賊の娘』和田竜
  • 2013年:『海賊とよばれた男』百田尚樹
  • 2012年:『舟を編む』三浦しをん
  • 2011年:『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉
  • 2010年:『天地明察』冲方丁
  • 2009年:『告白』湊かなえ
  • 2008年:『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎
  • 2007年:『一瞬の風になれ』佐藤多佳子
  • 2006年:『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー
  • 2005年:『夜のピクニック』恩田陸
  • 2004年:『博士の愛した数式』小川洋子

そして、今年(2024年)ノミネートされている10作品は、以下の通りだ。

  • 『黄色い家』川上 未映子(中央公論新社)
  • 『君が手にするはずだった黄金について』小川 哲(新潮社)
  • 『水車小屋のネネ』津村 記久子(毎日新聞出版)
  • 『スピノザの診察室』夏川 草介(水鈴社)
  • 『存在のすべてを』塩田 武士(朝日新聞出版)
  • 『成瀬は天下を取りにいく』宮島 未奈(新潮社)
  • 『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』知念 実希人(ライツ社)
  • 『星を編む』凪良 ゆう(講談社)
  • 『リカバリー・カバヒコ』青山 美智子(光文社)
  • 『レーエンデ国物語』多崎 礼(講談社)

どれもそれぞれの分野で話題になった本だが、私は以下5冊を有力だと思っている。

(尚、Amazonの書評数は、本日(3月2日)の昼頃のものである。)

 

1.「黄色い家」

今や世界の人気作家となった川上未映子のクライム・サスペンスだし、今回の大本命と言えるだろう。

発行時には出版社の宣伝にも力が入り、既に相当部数が売れているはず。

2023年王様のブランチBOOK大賞に輝いている。

Amazonの書評数438個。

 

 

2.「スピノザの診察室」

2010年本屋大賞2位となった「神様のカルテ」の夏川草介、今度こそ。

尚、「神様のカルテ2」も、2011年本屋大賞で8位にランクインしており、根強い人気がある。

本の厚さやストーリーは、本屋大賞を選ぶ書店員好みではないだろうか?

Amazonの書評数197個。

 

 

3.「存在のすべてを」

2017年本屋大賞3位となった「罪の声」の塩田武士の社会派ミステリー大作。

必ず大きな賞をとるべき作品であり、「本の雑誌」が選ぶ2023年度ベスト10で堂々第1位に輝いている。

Amazonの書評数158個。

 

 

4.「星を編む」

昨年の本屋大賞に輝いた凪良ゆう「汝、星のごとく」の続編。

凪良ゆうは、過去2回の本屋大賞に輝いており、大賞を逃したノミネート作品も含めて、本屋大賞の常連である。

推測するに、読書好きの書店員には若い女性が多く、凪良ゆうが得意とする読みやすくて少し切ない物語が好きなはずと勝手に想像すると、3回目もありうる。

Amazonの書評数563個。

 

 

5.「成瀬は天下を取りにいく」

読者層が、ぐっと若い人向けとなるが、これは次世代シフトとしてありうる。

若い世代には元気が出る小説だろう。

成瀬シリーズとしては、既に続編「成瀬は信じた道をいく」も、今年1月に発売され、売れ行き好調である。

坪田譲治文学賞に輝いており、Amazonの書評数もダントツの1,037個。

 

 

こう見てくると、成瀬人気は、アニメ的な現象に感じられ、かつての「もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)」とか、涼宮ハルヒ現象も感じさせるので、ひょっとしたら大賞もありうる。

 

しかし、やはり世界的人気作家となっている川上未映子が、今まで本屋大賞もとっていないし、今回の「黄色い家」が最有力な気もする。

とは言え、私としては、「スピノザの診療室」も捨てがたい気がするのだ。

書店員の性別や年齢層はどうだろうかとかも考えたりするのだが、実に予想が難しい。

 

果たして4月に、どの本が何位にランキングされるだろうか?

そして、大賞の行方は。。。?

あと1ヶ月、勝手に今年の本屋大賞を予想して見守るのも、この賞の楽しみ方なのだ。

 

<了>