祐天寺の激辛カレー店「カーナ・ピーナ」前にたたずむ謎の男たち。。。元破綻銀行員たちだ。
勿論、コロナ前の証拠写真だが、個人が特定しにくいように注意深く逆光で撮っているものの、関係者が見ると、頭のシルエットなどで本人が特定されてしまうリスクはある。
私が初めて世の中に激辛カレーというものがあることを知ったのは、渋谷の「ボルツ」というお店だ。
今は渋谷になくなってしまったようだが、私の大学時代は渋谷にあって、学生には少し値が高い店ではあったものの、時々行ってみたくなる常習性を持っていた。
30倍まで辛さが選べるようになっていて、初めて行ったときに、何もわからずに7倍などと頼んで、鼻水が止まらなくなり、最後には耳が遠くなった。
それ以来、辛さが選べるお店で味がわかるのは、5倍までという基準が頭にすりこまれ、どこでも迷わず5倍と言うことにしている。
この5倍戦略は、ほぼ間違いがない。
神田神保町の有名カリーライス専門店「エチオピア」。
この店ほど、エチオピア・カリーというものがあるんだと世の人を誤解させる店はない。
ここはもともとは、カレーとコーヒーのお店(要するに喫茶店)で、「エチオピアコーヒー」が評判がよかったものだから、店の名前を「エチオピア」というカレー屋にしてしまったのだ。
勿論、エチオピアとは全く関係ない。
ここでも私は、5倍戦略をとる。
学生街なので、カウンターには、恐る恐る2倍とか、思い切って3倍とか、辛さにビクビクしている青い若者もいて、結構かわいい。
時々、常連オヤジがやってきて、ドスのきいた声で10倍と言って周囲を威圧する。
ここは、70倍まで頼めるお店で、70倍でも満足しない人には、100倍まで出すという。
そんな人間は稀で、ほとんど病気、命あってのカレーファン。
と、先日まで思っていた。。。
先日、用事があって、御茶ノ水のソラシティという所に行った。
早速、「エチオピア」のソラシティ店があることを発見、お昼には迷わず行く。
例によって、私は「チキンカリーの5倍」だ。
カウンターの隣に、シックなOLらしき女性が颯爽と座ると、メニューも見ずに、ごくごく自然に、何のためらいもなく、「野菜カリー、45倍で。」とオーダー。
「負けた」と思った。
私は、チキンカリーをほぼ食べ終わっていたが、どんなカリーが出てきて、そのOLがどう食べるか、少し観察するまで、店を出られなくなってしまった。
45倍という私が出会ったことのないオーダーをさらりと言ってのけ、しかも姿勢を正して、鼻水まみれになることもなく、淡々と食べていくOLは、やはりクールだった。
ところで、辛さを測る単位というものが存在することをご存知だろうか?
「スコヴィル値」という唐辛子の辛さを測るもので、米国のウィルバー・スコヴィルという薬剤師(1865-1942)が、1912年に砂糖水で薄めて味が感じられなくなるまで何倍に薄めなければならないかというような大雑把な「スコヴィル味覚テスト」を考案、現在では「スコヴィル値」として標準化されている。
ブレ幅が大きすぎて、スコヴィルは、すこぶる、使いにくいのだが、辛さの順位付けには使えるようだ。
例えば、
・鷹の爪 40,000~50,000 SHU (スコヴィル辛味単位)
・ハバネロ 100,000~350,000 SHU
・ブート・ジョロキア 1,000,000 SHU
など。
●スコヴィル値を表示して唐辛子を売る店
話を祐天寺の激辛カレー「カーナ・ピーナ」に戻そう。
ここは、私の破綻銀行仲間の1年後輩であったK氏が通い詰めたお店である。
もともとK氏は、父親の勤務地の関係で、小学生時代はインドで暮らし、小学校の修学旅行はタージ・マハルと答える強者である。
名門日比谷高校出身で、ひとなみ(一浪)と呼ばれる東大受験の浪人生時代からこの店に通い詰めていたというから驚く。
さらにある時、行ってみたら店がなくなっており、大きく落胆したK氏であるが、そこはかとなく漂うカレーのにおいを辿って、近所に引っ越したこの店を探り当てたという(ほとんど犬)。
K氏は大変頭も品もよいジェントルマンであるが、どことなくセピア色の人生を歩んでいた。
ところが、美人のお嬢さんが宝塚に合格し、宝塚歌劇団で活躍するようになって以来、突如として世界が色づいて、セピア色から天然色映画のように変わり、K氏も生まれてきてよかったと思うようになった。
それと共に運勢も上がり、今や一部上場企業の次期社長候補の一人だ。
私は、コロナ前まで、K氏と2、3ヶ月に1度はこの店に通うようになって、既に10年近く経つ。
とにかく激辛だ。
そもそもスコヴィル値だの、何倍だのという曖昧な表現を超えた潔さがあり、選べるのは、「ホット」、「セミ・ホット」、「マイルド」の3種類。
手ごころを加えているなと感じられるのは、「マイルド」だけである。
初めての人は、つい「セミ・ホット」を頼んで地獄を見る。
K氏はお酒を飲まないが、私もここではせいぜいビール1、2杯にして、カレーと格闘する。
ビールより、とにかく水が欲しくなるのだ。
従って、滞在時間もそう長くなく、金もあまりかからない。
K氏は、普段の穏やかな性格から想像できない激辛カレーファンなのだが、さらに家で冷凍保存して、2,3日後に食べるためのテイクアウトまで買って帰ったりする。
さすがに私はそこまではしない。
準備として忘れてはならないことは、ここのカレー臭は強烈に服や持ち物について簡単には消えてくれないことである。
インドで、日本の電器メーカーが、洗濯機にカレーのにおいを消す「カレーモード」をつくって売り出し、大変好評だという。
さすが日本のメーカーである。
ただ、日本でも売ってほしい。
K氏と私は、そろそろクリーニングしたいスーツなどがあると、どちらからともなく、「そろそろクリーニングの予定があるのですが。。。」と切り出す。
当然、翌日クリーニングに出す予定の服を着て、戦いにのぞむ。
我々二人が、究極のメニューとしてたどり着いた3つのオーダーを特別に公開しよう。
尚、1)はK氏スペシャルで、メニューにはないが、頼めばつくってくれる。
1)ポークとナスのカレー (セミ・ホットとマイルドの間)
2)チキン・カレー (セミ・ホット)
3)ベジタブル・カレー (マイルド)
すいぶん弱気に見えるかもしれないが、これで十分なのだ。
最後に、「食べログ」のコメントで、私が以前から非常に高く評価しているコメントを転載させていただきたい。
このコメントほど、「カーナ・ピーナ」を正しく表現しているものはない。
(以下「食べログ」より転載)
敵は祐天寺にあり(カレー160店目)
絶対に負けられない戦いが「カーナピーナ」にはある。
東京一辛いともいわれるカレー屋。
そろそろ行かねば、逃げたと思われるから行くことにした。
頼んだのはスモールランチセット(マトンカレー)¥850。
実際のところ、写真の通り、全然スモールではない。
私自身、カレーファンとして、辛いカレーはかなり好きだ。
しかし命あってのカレーファンだ。
だから辛さはセミホットを頼んだ。
暫く待つ。
待つ。
遅いぞ武蔵。
そこへ悠然と表れたカレーは、確かに自分史上1・2を争う辛さだった。
もちろん旨い。好みだ。
でも味をenjoyできるのはせいぜい三口めまで。
ここからは辛さとの戦いだ。
マトンの質感が、せめてもの逃げ場となる。
しかしここまでも、まだ序ノ口だ。
更なる異変がカレーを半分食べた頃に急にやって来る。
余りの辛さにペースが上がらなくなり、スプーンが、止まりがちに。
鼻水がとめどなく流れる…。
しかしカウンターにはティッシュも水のボトルもない。
敵は強気だ。
然程冷たく無いコップ水を少量飲み、紙ナプキンで鼻をかむ。
プレーンラッシーの様な「ダヒ」を飲もうと、ストローを吸う。
しかしドロドロすぎて口になかなか入って来ない。
上を向いて深く深呼吸し、辛さを少し逃がす。
食後、5分して、軽く汗が出て来る。
帰路、アイスを食いたくなるが、駅までコンビニも喫茶店も無い。
代わりに鎮座していた店は、COCO壱番屋…。
街ぐるみで強気である。
二時間後、ぬるいお茶を飲んだのだが、必要以上に胃がポカポカする。
「辛い」が英語で「hot」であることへの違和感が消えた日。
まだ上には ホット スペシャルホットがある。
食べログの口コミ曰く、ガチで身体的異変が起こるレベルのようだ。
ホットけない。
通信販売もやってます。
http://home.f00.itscom.net/kanapina/pc_main.html
スモールランチセット¥850 マトン セミホット
<了>