一年ほど前、2019年10月に源氏物語の大きな発見がありました。

もともと源氏物語は、約1000年前に紫式部が書いたものですが、自筆原本は残っていません。

いくつか残っている写本を鎌倉時代、江戸時代の国文学者らが編纂して、現在、我々は読めるわけです。

 

いくつか残った写本のうち、紫式部から約200年後の鎌倉時代の歌人である藤原定家が書き写した「青表紙本」と呼ばれるものが現存する最古の写本とされていますが、発見されていたのは、源氏物語全54帖(巻)のうち、4帖しかありませんでした(すべて国の重要文化財です)。

ところが、新たに「若紫」という1帖が発見され、定家自筆のものと認定されたのです。

これで定家筆の写本は5冊目となり、今後、源氏物語の原文もこの定家本に合わせて修正されていく可能性が大きいのです。

 

発見された「若紫」という巻は、源氏物語のうち極めて重要な部分で、源氏物語に登場する数々の女性の中で、最も人気があるとされる「紫の上」の幼少期に、光源氏が出会い、自分の屋敷に連れ去ってしまう(拉致!)という巻です。

 

源氏物語は、100年ほど前に、語学の天才だったアーサー・ウェイリーによって英訳され、世界に知られるようになりました。

それを読んで感動したドナルドキーンは、コロンビア大学で日本文学の研究者となり、数々の日本文学を世界に紹介し、日本人の精神をよく理解し、東日本大震災における日本人の対応に感動して最後は日本国籍を取得して、日本で亡くなりました(私が尊敬する日本文学者の一人です)。

 

そこで源氏物語です。

この大著を読むのはなかなか大変ですが、特に最初の入り口を間違えると、必ず挫折します。

 

源氏物語は最初から原文(古文)でそのまま読めればよいのですが、なかなか難しいので、最初は現代語訳を読むことになります。

 

古くは、

1.  与謝野晶子訳 および、

 

2.  谷崎潤一郎が試みた現代語訳が有名で、谷崎などは、3回も訳し直しています。

 

10年ほど前の源氏1000年ブームの頃に、ベストセラーとなったのが、

3.  瀬戸内寂聴訳(講談社文庫)です。

 

そのほかにも、

 

4.  2019年に現代語訳が完結して、現代小説のようで読みやすいと言われる角田光代訳

・やや淡々としすぎていて、源氏への愛情が薄い感じがしてしまいます。

 

5.  同年文庫版が完結し、わかりやすいと評判もよい林望訳

 

6.  格調高いと言われる円地文子訳

・訳者の源氏に対する思い入れと執念が半端ない感じで迫ります。

 

7.  ひかりナビという解説が好評の大塚ひかり訳

・ひかりナビは面白いのですが、物語の流れが止まり、一気に読み進めにくい面があります。

 

8.  光源氏が一人称で語る形にした橋本治訳

 

9.  独自の解釈をした田辺聖子訳、林真理子訳

 

10.すべて京ことばで訳した中井和子訳

・これを山下智子さんがライフワークとして朗読しています。よくぞ京ことばで訳したと感動しますし、京ことば自体を将来も残していきたいと強く思います。

京ことば 源氏物語 桐壺の巻 山下智子 the Terminal Kyoto - YouTube

 

11.普通の主婦が18年かけて忠実に訳した上野榮子訳

 

12.原文を忠実に伝えようとした中野幸一訳「正訳源氏物語」

・このあたりに至ると、もはや原文に挑戦しましょうという感じになり、例えば、以下シリーズの源氏物語を読むことになります。

- 日本古典文学全集(小学館)

- 新潮日本古典集成(新潮社)

- 新日本古典文学大系(岩波書店)

- さらに、新たに文庫としては、もうすぐ完結する岩波文庫版「源氏物語」がおすすめですが、

- ほかの文庫版(例えば講談社学術文庫等)はほぼ今は古書しか手に入りません。

 

13.特徴のあるところでは、クリムトの表紙が美しいアーサーウェイリーの英訳の日本語新訳

・歌人の姉妹による新翻訳で、新感覚の翻訳に挑戦したのはよくわかる意欲作ですが、やや翻訳調がどうしても気になる面があります。

 

 

私はどれも目を通しましたが、初めて読む人におすすめなのは、次の2冊を同時に読むことです。

1.瀬戸内寂聴訳(講談社文庫)と

2.まんが 大和和紀「あさきゆめみし」(Kindle版もあり)

 

さらに私は同時に、アーサーウェイリーの日本語新訳を読み比べましたが、こちらはどうしても翻訳調が気になって、敬語がまだるっこしいと言う人もいますが、瀬戸内訳の方がしっくりきました。

1つの話(帖)を読んだ後(または前)に、まんがで同じ部分を読むとなんとなく映像が浮かびます(特に「あさきゆめみし」は美しいまんがでおすすめです)。

 

源氏物語は映画も多くありますが、私が一番光源氏のイメージに合うと思ったのは、天海祐希です。

次のYouTubeの音楽は、もともと「千本桜」で有名な黒うさPが、初音ミクに歌わせたボカロを、日本の「和楽器バンド」というバンドが歌・演奏をして、それに天海祐希主演の源氏物語の映画の画像を組み合わせたものですが、まるで源氏物語の映画サントラのように思える傑作だと思っています。

 

【天海 祐希】源氏公子(天海佑希) 影视剪辑 影视 - YouTube

 

また、曲として、最も源氏を感じるのは、「源氏物語千年紀 Genji」のテーマ曲「高雅」です。

 

1. Kouga - Genji Monogatari Sennenki Original Soundtrack - YouTube

 

最終的に、今回、発見された定家本 「若紫」など、古文書が読めるようになりたく、研究を続けてみたいと強く思うのでした。