12月16日(木)


今日はひどく疲れた。

もうHPは0に近い。


睡眠アプリに昼寝扱いされた2時間の睡眠のせいなのか、14時間働いたおかげなのか、

リズムと言うには何の法則性もない生活リズムをここ数日とっているからなのか。


そんな風前の灯とでも言えそうな意識の中、残っているHPのうちの0.2を使って電車に乗り込んだ。もう0.2も使って乗り換えまでした。


そして待ち受けていたのは満員電車。


私にこの満員電車という敵に立ち向かえるHPは残ってない。白目をむきそうだった。


直前の発言は撤回しよう。

白目を剥きながら吊革を掴んだ。私にとっては命綱も同然だった。


そこで斜め前に座っていた白髪のおじさんがふと目に入る。気になった。

マスクを片耳に引っ掛けて新聞を広げていた。

まぁこのご時世だが、勢いよく飛沫を飛ばさないでいてくれるのならば、わざわざケチをつけるつもりは無かった。


その瞬間、思い切り咳き込み始める白髪のおじさん。

そして咳き込む口元に申し訳なさ程度に添えられる右手4本の指。なんで両手じゃない?いや、左手には新聞という先約がいる。


、、、嘘だろう?


もはやご時世なんぞ関係ない。

思い出して欲しい。あの片耳に引っかかっているのはマスクに見えるアクセサリーか何かか?


そして落ち着きを取り戻し存在を思い出したかのようにアクセサリーかと思ったマスクを正しい装着方法へシフトチェンジ。何事もなかったかのように新聞は広げられ、目を落とす。



この一連の出来事の中、私の前に座る金髪おかっぱ頭の目の下を黒く塗ったおじさん(即ち咳おじさんの隣)がものすごい目つきで咳き込む白髪のおじさんを見ていた。

その後も何回かマスクはきちんとした位置にあるものの咳き込む白髪のおじさん。金髪おかっぱおじさんはもう顔を半分覆って壁を作ってた。


何なのこの状況。


そんな中、HPほぼ0女は手に持つ明日の仕事道具の入った紙袋が重たくなってきた。

腕に通そうと少し上に持ち上げたが、前に抱えるデカめのリュックと満員電車という邪魔のせいで失敗した。

そして金髪おかっぱおじさんの膝の上に紙袋が乗ってしまったのだ。


まずいまずいまずい


案の定、さっきまで白髪のおじさんに注がれた鋭い視線が私に刺さった。


(「ごめんなさい」)


確かに口は動いたのにミュートだった。

もうHPが限りなく0だった。


ちょうど快速急行の止まる駅に電車が到着した。

もう1つ先の乗り換え駅でよかったのだが、

満員電車にも金髪おかっぱにも咳おじさんにも立ち向かえない私はそこで降りて各駅電車に乗った。


快速急行とは打って変わって空いていた。

何の迷いもなく腰を下ろした私は瞬きをして、目を開く。

目に映る景色は絶望だった。

そして最寄駅を2つ通り過ぎた駅で終電を待っている。


奇しくも、トータル9駅分の瞬きのおかげで

HPは8くらいまで復活して、この文章を打っている。


今日は書くことないなァ、と思っていた1日の終わりかけに。

何なの、と心の中で何度も呟いた。