大学一年生の夏休みのときのことです。

高校時代の友人と3人で能登半島を一回りする旅行に行きました。

1台の車に同乗し、車内泊と民宿泊を交互に繰り返して費用をおさえようという計画でした。

 

長野を出発してその日の夕方にやっと能登半島の入り口近くの富山湾に面した海岸に着いたのです。

時間も遅くなってしまい、早速1日目から車内泊をすることになりました。

そこで午後9時過ぎなって、車の止めてあるすぐ近くの海岸に散歩に行ったときです。

この海岸の砂浜は、砂というよりはもう少し大きめの丸い砂利のようなものが堆積していました。

その砂浜に打ち寄せる小さな波が砕けると、その波頭が青白く光るのでした。

とても幻想的な光景でしたが、そのときの知識では、これはきっと海ボタルが光っているのだと思っていたのです。

 

その数年後、ヤコウチュウの大発生が原因で赤潮が発生することを知りました。

そして、夜その赤潮の中に船を漕ぎ入れ、釣竿などの先で海面に線を引くと、そこが青白く光って、しばらくその線が消えないという不思議な現象をテレビで何度か見たのです。

ヤコウチュウは物理的な刺激を与えると青白く光ることも説明されていましたが、そこでも能登半島の海岸で見た、砕けた波頭が青白く光ることとヤコウチュウが結びつかないでいました。

 

そしてひと月ほど前になって、NHKの朝ドラの『まんぷく』で、主人公の萬平さんと福ちゃんが塩づくりをすることになる泉大津市の夜の海岸に行ったとき、そこの砂浜に打ち寄せる波が砕けると、その波頭が青白く光ることが放送されていたのです。

それを萬平さんが『これは夜光虫が発光するのが原因なんだよ』と説明していたのです。

これを聞いて初めて若いときに見た青白く光る原因が海ボタルではなくヤコウチュウだということを確認することができたのでした。

これまで、その情報を目や耳にすることがなかったのでした。

 

能登半島を回り終わった私達は、千里浜なぎさドライブウェイ(このころも既に車で走ることのできる海岸でした)や金沢市の兼六園まで足を延ばし、早朝から兼六園の中を歩き回りました。

さらに九頭竜川沿いを走り、岐阜県の飛騨高山にまで行きました。

ここでは民宿に泊まり、夜中の合掌造りも観光したのです。

今思うと、若いころにしかできない強行軍の旅行でした。

     〔 カーネル笠井 〕