以前、「♪もしもしかめよ~かめさんよ~♪」で始まる童謡の、この歌の背景についての解釈として、いろいろと議論されたことがありました。

 

「ウサギがカメに負けたのは、ウサギが油断したからだ。」とか、

「かめが目標に向かって一心不乱に取り組んだ結果だ。」とか、

「何故こんな無謀な挑戦をカメはしたのだろうか。」など、その他にもたくさんの解釈の仕方がありました。

 

ところが、私はそれらのどの意見を聞いても、すっきりと納得することができませんでした。

そんなとき、あることがきっかけで自分なりにすっきりとした結論にたどり着くことができました。

 

それは、“北野たけし監督” の映画が常にマスコミの話題になり始めた頃のことです。

それ以前に “ビートたけし” として毒舌を中心に活動しているころにテレビのインタビューに答えて、こんな話をしていたことが紹介されたのです。

 

「僕はステージの上からお客に向かって、『お前達はシマウマで、おれはライオンだ。おれはお前たちを食って生きているんだ。』と見栄を張るんですよ。でも、情けないじゃないですか。シマウマの群れが移動したら、ぼくはその後について行かなければ生きていけないんですから。」

 

これを聞いて私は、彼はお客がいてはじめて自分が生かされていることを常に意識しているんだ、と思ったのです。

ですから彼の作る映画作品も、自分の主張を前面に押し出しながらも、せめてもここはこういう展開にして欲しい、という観客の願いを必ずどこかに取り入れていることに気がつきました。

つまり観客にも『 花を持たせる。』部分を必ず取り入れているのです。

 

これを知ってから、“うさぎとかめの駆け比べ” に関しても、『 ウサギがカメに花を持たせたのだ。』 と考えることですべてのつじつまが合い、自分なりにとてもすっきりとした気持ちになれたのです。

『 花を持たせる。』なんて所作は、島国で暮らす日本人の気質に一番合っているのではないでしょうか。

 

でも今はこんなに堅苦しくは考えていません。

これはウサギとカメの遊びなのだから、勝ったり負けたりすることではじめて遊びも会話も成立するからです。

ですから、勝ち負けにはあまりこだわらずにいろいろなことを楽しめたらいいな、と思っています。 〔 カーネル笠井 〕