今年の連休中、妻と2人で中華料理を食べに行ったときのことです。

注文を取りに来た年配の店員が会話の端々で

「男はつらいよ。」

という言葉を使っていたのです。

しばらくして分かったことですが、この店員は映画『 男はつらいよ 』の大ファンのようで、ここに登場する主人公の “フーテンの寅さん” に心酔しているようなのでした。

 

こんなことがあって、しばらく忘れていた “男はつらいよ” の体験を思い出したのです。

 

10年以上前になりますが、まぶたの内側に小さなできものができ、目の中がゴロゴロしてどうしようもなくなり、眼科にかかることにしました。

「家の近所に、テレビにもコメンティーターとして度々出演している有名な眼科の女医さんがいるわ。」

という妻の勧めで、そこで診てもらうことにしたのです。

 

診察の結果は、

「簡単な手術をしてうみを出してしまえば、あとは抗生物質を飲むだけですぐに治ります。」

というものでした。

そこで、さっそく手術をしてもらうことにしたのです。

 

手術室に入ると、板を組み立てた高い手術台があり、そこには4~5段の階段を上がるようになっていました。

手術は女医の先生が立ったままでするようです。

 

“死刑台の階段を上がるようだ…“ などと少し不安に思いながらそれを上り、堅い板の手術台に横たわりました。

それを確認してから、

先生 「手術は麻酔をかけてやることもできますが、チクッとするだけですから、男性の方は麻酔はしなくても大丈夫ですよね。」

私が少し考えていると、

先生 「そうすれば、手術の後30分も休憩すれば車を運転して帰れますから。」

と、もう麻酔無しですることが決まっているといった様子です。

車を運転して来ていたこともあり、仕方なく

私 「それなら、麻酔無しでお願いします。」

と答えたのです。

 

手術が始まりました。

まぶたを強く押して、うみがたまっている部分を浮き上がらせているようです。

間もなくチクッとした痛みが走りました。

どうやらうみたまってふくらんだ先端がメスで切られたようです。

もう一度チクッと痛みが走りましたが何とかがまんできそうだなと思い始めていたときです。

先生 「あら、こんな所にも小さなうみがたまっているわ。これも切ってしまいましょう。」

今度はメスでまぶたの内側を切るのがはっきりとわかりました。

“ザクッ” とするのです。

先生 「まだ小さいのがあるわ。全部切ってしまった方がいいですよね。」

と言って、また “ザクッ” と切られたのです。

うみが深い所にあるようで、これはかなりの痛みです。

さすがに私もがまんしきれなくなり、もう一度切ると言われたら今度は麻酔をかけてもらおうと決心しました。

先生 「 もうこれで大丈夫ですよ。」

 

なんとか悲鳴を上げずに済みましたが、終わってほっとした気持ちと、もっと早く麻酔をお願いすれば良かったとの気持ちが複雑に入り交じっていたのです。

 

手術後は、確かに30分もすると痛みもなくなりましたがショックが大きく、目の手術に関してはかなりのトラウマになってしまいました。

 

『男だったら麻酔無し!』 だなんて、“男はつらいよ” ですよね。 〔 カーネル笠井 〕