(桜の名所)
ここ数年、ひまがあればいろいろな桜の名所を訪ねています。
しかし、どの名所の桜も確かに素晴らしいのですが、どうしても何か一つ物足りなさを感じてしまうのです。
その原因をいろいろと考えてみて、ようやく一つの結論にたどり着きました。
それは、学生の頃から十数年間をJRの吉祥寺駅の近くに住んでいたので、毎年何度となく井の頭公園の桜を楽しんでいました。
ですから、意識せずに他の名所の桜と井の頭公園の桜とを比較していたのです。
ボートに乗って、水面にまでせり出した桜の枝の下をかがみながら通り抜けたり、大きな桜の木を下から見上げると青空全体に花が広がって見え、“見事” の一言なのです。
さらに、まだ空気がぴんと張り詰めた早朝、まだ誰もいない弁天橋を駅に向かって一人で歩いていると、井の頭池とその周りを取り囲む桜の花の印象が、まるで別世界にでも迷い込んだような気分にさせたのです。
満開の桜と、池や川との相性がとても良いのだと思います。
井の頭池は神田川の水源になっています。
また、“キツネノカミソリ” なんてめずらしい花なども植えられています。
その他の施設も含めて、是非一度は訪れたいスポットではないでしょうか。
(カイツブリ)
井の頭公園に行く楽しみの一つに、池の鯉にエサをあげて遊ぶことがあります。
何匹もの大きな錦鯉がひしめき合って大きな口を開けてパンくずを欲しがります。
その様子がとても面白いのです。
ある日ボートに乗って鯉にエサをあげていたときのことです。
多くのカモたちがやってきて鯉にあげていたパンくずを横取りしていたのです。
そしてパンくずがなくなると、間もなく他の場所へ移動してしまいました。
そんなカモ達が去った後に一匹の小さなカイツブリがいました。
見ていると、カモ達が食べ残した小さなパンくずの前でじっとしていました。
しばらくするとそのパンくずを狙って何匹ものメダカがやってきたのです。
カイツブリはパンくずには目もくれず、そのメダカを何匹もつかまえて食べていたのです。
井の頭池には何組みものカイツブリのつがいがいるので、同じ仲間との縄張り争い、天敵となる動物との戦い、訪れる多くの人々とのまさつなどもあります。
そんな中でついた知恵で、効率よくエサを手に入れていたのです。
小さいながらも “あっぱれ” と思いました。
(不名誉な名前)
以前、井の頭公園には『 お別れ公園 』などという不名誉な別名がつけられていました。
これを知ったあるテレビ局が取材に来て、その別名の解説をしていました。
「井の頭池には女の神様がまつられていて、若いカップルが来るとやきもちをやいて別れさせるからだ。」
などと説明をしていました。
今流に言うと、
「ち~が~う~だろ~。」
といった気持ちでそれを聞いていました。
この説明には諸説もろもろありますが、私が信じているのは次のものです。
戦時中、鯉の飼育に困った人達の間で、
“井の頭池に鯉を捨てに行く”
ということが多発したそうなのです。
その『 鯉を捨てる池 』が『 恋を捨てる池 』と聞き間違えられて、『 お別れ公園 』などと呼ばれるようになったからだと思います。
そのためか、井の頭池には色とりどりの錦鯉がたくさんいるのです。 (カーネル笠井)