今年の10月は、10月なのに最高気温が25℃を超えて<夏日>になったり、その後気温が急降下して、最高気温が10℃に満たなくなったりと、寒暖の差の大きな日が繰り返されました。

最高気温が1けたというのは、12月中旬の陽気なのだそうです。

しかし、過去には11月に入ってからの<夏日>が記録されたこともあるようなので、異常気象とまでは言えないのかも知れません。

 

こんな秋になると、以前、“東京生まれの東京育ち”の友人が

「東京には秋がない!」

と言って、いつもぼやいていたことを思い出します。

そのころの私も同様に感じていたので、いつもこの意見に賛成していました。

 

その後、東京の郊外に住むようになって、私のこの考えは大きく変わりました。

11月になると家の近くにある大イチョウが黄葉し、夕陽に照らされると見事な輝きを見せてくれます。

イチョウは東京都の木でもあるため、至る所にイチョウ並木があり、晴れた日の夕方には多くの場所でこの感動が味わえるものと思います。

 

さらに草むらには、銀色に輝くススキが、穂をゆらしているのが見つかります。

近づいて見ると、思いっきり穂を広げ、精一杯穂を伸ばしているのです。

また、少し歩くと、家の庭木として植えられている柿の木が、葉を落とした枝に、赤味がかったオレンジ色に熟した実をいくつも垂らしているのを見つけることができます。

しばらくそこに立ち止まり、青空を背景にその実を見ていると、枝の枯れた色と合わせて、見事な秋の装いを見せてくれるのです。

 

こんな体験をしていると、都会の秋は『やってくるもの』ではなくて『見つけに行くもの』のように思えてくるのです。

 

『ちいさい秋みつけた♪』という童謡があります。

これを作詞したサトウハチローさんの自詩紹介には、次のように書かれていました。

 

「原稿用紙を前に、布団に腹這いになって外を見ていたら、赤くなったハゼの葉を見て言い知れぬ秋を感じて、この歌を書き上げた」

そうです。

ハゼの木はウルシ科の落葉小高木で、この内容が入っている三番の詩は次のようです。

 

3番 ♫

   誰かさんが  誰かさんが  誰かさんが  みつけた

   ちいさい秋  ちいさい秋  ちいさい秋  みつけた

   昔の昔の  風見の鳥の  ぼやけたとさかに

   はぜの葉ひとつ  はぜの葉あかくて  入日色

   ちいさい秋  ちいさい秋  ちいさい秋  みつけた

 

ちらっと見つけたハゼの葉の紅葉一つから、三番まである歌詞を書き上げてしまうなんてすごいですね。

 

私も感心ばかりしていないで、家の周辺を歩き回り、まだ見つけていなり秋をさがそうと思います。   〔 カーネル笠井 〕