マイ・リトル・タウン(3)
夏休みが始まると、最後の中体連
で、栄ちゃんは剣道の主将として
、がんばっていた。
私は、クラブも中途半端で、勉強
すればいいのだが、そんな気にも
まったくなれず、ただぼーっとす
ごしていた。
時々、栄ちゃんと図書館で遭う
と、「勉強してる?」と私の肩を
ぽんとたたき、笑っていた。でも
私にはなんだかその笑い顔がうつ
ろに見えた。
「俺さ・・・工業の電気科受ける
ことにしたよ・・・伝次郎ちゃん
は、普通科いくんだろ?」
私は、首を振りながら・・・・ま
だわかんないんだ・・・・って言
った・・・
その後、まだあの声がずっと、
地面の下から聞こえていて、今で
は、夏の朝の散歩をしてる時に、
私と一緒にその声が移動してるの
がわかるほどだった・・・・
弟が、私と一緒に歩いてる時に・
・・・
「なあ・・・おまえ・・・このし
たから・・・変な声が聞こえない
か?」ってきくと・・・
「おにい・・・なにいってるの?
又変なこといって・・・だまそう
としてるんか?
そんなことしても、なんのとくに
もならない・・・勉強したほうが
いいよ・・・」
そうなんだ・・私にしか聞こえ
ないのだ・・・・まさか・・・神
経?
病気かなんか?空耳にしてははっ
きり聞こえすぎる・・・・・
どうしたらいいんだろう?医者
にいくのか?いやだ・・・気が重
いし・・・なんか重大な病気だっ
たら・・・
中体連も終わり、栄ちゃんは私
の家にやってきた。
「伝次郎ちゃん、やっと終わった
よ・・・そろそろ俺も勉強しなき
ゃ・・・伝次郎ちゃんなんかにず
いぶん後れを取っちゃったからな
・・・で・・・一人でやってても
つまんないし、俺がわかんないと
こ教えてもらえたら・・・とおも
って・・・ようは・・・一緒に勉
強しない?」
母に薦められてたように、私は
その後栄ちゃんの家に、なにかを
もっていこうと思ってたんだけど
、なんだか例の声がきになってち
っともいかないでいた・・・・
気分を転換すれば・・・あの声
も忘れて・・・聞こえなくなるか
も知れない・・・・
「うん・・栄ちゃんさえよければ
・・・俺はいいよ・・・むしろ助
かる・・・」
「それじゃあ、これからやろうよ
・・・家へ来ないかい?」
「・・・わかった・・・じゃあさ
っそく・・・」
私は、参考書、単語カード、問題
集、計算用紙と筆記用具を、かば
んに急いで詰め込んで・・・彼と
ともに家を出た・・・・・
外は、もわ~っと熱い・・・久
しぶりに栄ちゃんと歩く・・・な
んだか気分も明るくなる・・・・
道を、走りぬけていく、小さい子
供達・・・車・・・・
ブロックベイの上を、ネコがのっ
そり歩いていく・・・・
いつもと、かわらない・・平凡
な私の棲む・・小さな町・・・・
通りのむこうを・・・店の前で・
・立ち止まってる大きな男・・・
・
変だな・・・あんなひと・・・コ
ンナちいさな街にいただろうか?
くるっとこちらを、その男が振
り向いた・・・・
ああああ~~~私は叫び声を
揚げたのだろうか?
その男には、顔がなかった・・・
・・・
叉だ・・地面の底から・・・ブ=
ンブ~ンと響く低い声・・・・・
私を引きずり込もうとするような
・・・・いやな音の羅列・・・・
・
「消えろ!!」
耳をふさいで、私はその場に座り
込んだ・・・・・〔続く〕
マイ・リトル・タウン〈4〉
「おお~い・・・伝次郎ちゃん
・・・大丈夫~」
気がつくと・・・へたり込んでる
私を心配そうにのぞきこみながら
,栄ちゃんが不審そうに,眉をし
かめて立っている・・・・
私は,きょろきょろとあたりを
見まわした・・・・・
あの顔のない大男の姿は,もうど
こにもなかった・・・・
それと・あの地面の底から響いて
くる・・・・ブ~ンブ~ンという
いやなうなりもすでに聞こえなく
なっていた・・・・
「・・・あのさ・・・ここへ・
・・顔のないおとこが立ってて・
・・・」
といおうとおもって,私はやめた
・・・・
そんなこと信じるはずがないし
・・・第一・・・頭がおかしくな
ったのではと思われるのがおちだ
・・・・
「どうしたんだよ~顔真っ青・・
・」
「そう・・・ちょっと立ちくらみ
がして・・・・暑さのせいかな・
・・」
私は,空を見上げた・・・・ぎら
ぎらとする夏の太陽・・・・・
・ ・・でも・・・それも何となく信
じられなかった・・・・
本当に・・太陽なんだろうか_?
なんだか,怪しいし,其のぎらぎ
らとした感じも,なんだかいまま
でになくうそくさかった・・・・
・
「早く,いかないといい席みん
な取られちゃうよ・・・図書館行
ってクーラーに当たれば,少しは
気分よくなるかも・・・」栄ちゃ
んもちょっといらいらしてきた様
だ。
「うんそうしよう」
と言った瞬間,あのまたいやな低
いうなり声が地面の底から聞こえ
てくる・・・
ブ~ン・・・ブ~ン・・・・
「ウワアアア~~~」
私は,耳を押さえて掛けだした・
・・・・
逃げるように・・・・栄ちゃんの
ことなんかかまってられなかった
・・・・
逃げながら,太陽の真中に黒い影
がぽっかりと浮かんでいるのが見
えた。
なんなんだろ~あの構造は・・・
・・
螳螂が,私の頭上で鎌を振り下ろ
そうとしていた・・・〈続く〉