ドラマとしての実質的な最終回は、昨日11/26(木)第119回の放送で、今日は出演者たちによる “ カーテンコール🎤🎶”
司会:古山裕一
「とんがり帽子」御手洗清太郎、藤丸、夏目千鶴子、裕一、音、鉄男、久志、吟、梅、トミ、華、弘哉、ケン、典男 ほか子ども時代を演じた皆さん
「モスラの歌」藤丸、夏目千鶴子
「福島行進曲」御手洗清太郎
「船頭可愛いや」佐藤久志 ギター/村野鉄男
「フランチェスカの鐘」藤堂昌子
「イヨマンテの夜」岩城新平
「高原列車は行く」関内光子
「栄冠は君に輝く」藤堂清晴、佐藤久志
「長崎の鐘」指揮/古山裕一、古山音ほかオールキャスト
※上記歌唱出演者に加え、古山浩二、関内吟

裕一(窪田)は、彼の音楽人生に影響を与えた作曲家・小山田耕三(志村けん)が亡くなる直前に自分に宛てて書いたという手紙からメッセージを受け止めた出来事を回想する。そして、作曲家を目指す若者に音楽の未来を託し、病に伏す音(二階堂)と静かな時間を過ごす。
故・志村さんが演じる小山田の笑顔や、寄り添った夫婦の関係、随所で光る演出に「最高の最終回でした」「本当に涙が止まらなかった」「ウルっときた」「素敵な終わり方」といった声が続出。また、「お疲れ様でした」「素敵な作品をありがとうございました」とキャストやスタッフ陣をねぎらうコメントも相次いでいる。
なお、11月30日からは杉咲花がヒロインを演じる朝ドラ「おちょやん」がスタートする。(山田貴子)
昭和の大作曲家・古関裕而氏(窪田正孝)をモデルにした『エール』は、3月30日にスタートするも、新型コロナウイルス感染拡大により、初回放送翌日の4月1日から収録が2か月半も中断した。
また「放送開始前日には共演者の志村けんさん(享年70)が急死されて、大きなショックを受けていました」。
放送も、当初予定の全130回から120回に2週分短縮され、6月29日から9月11日までの2か月半は放送も休止。その間は、初回からの2か月半分を再放送するという、朝ドラの長い歴史でも前代未聞の措置が取られた。
その代わりに毎回半年の放送期間が、今作だけは8か月に伸びて、まさに“2020年の朝ドラは『エール』”という年になった。しかも、コロナでステイホーム中の多くの国民に見られるというケガの功名もあった。
総出演のカーテンコールで音楽への愛とトリビュートを表現しながら幕は閉じました。振り返って、これほど波乱万丈だった朝ドラは初めてではないでしょうか?
まず、働き方改革で土曜放送がなくなり初の「週5日」放送に。しかも、ベテラン脚本家の降板あり、志村けんさんのコロナ感染・逝去とショックは続く。放送開始後もコロナ禍による撮影中断2ヶ月半。撮影できなかった分は再放送に差し替え、という前代未聞の展開……。数々の過酷な試練にさらされたキャストやスタッフたち。その混乱や落胆はいかばかりだったか。しかしその分、こうも言えるのかもしれません。「作品も役者も磨かれていった」と。
画期的で見たことのない朝ドラになった本作の余韻を味わいつつ、ロスへ捧ぐ。『エール』の魅力ポイント10項目──。
【1】徹底的に「役者」を見せつけた朝ドラ
物語は古山裕一という作曲家の人生が主軸。しかし撮影中断もあり、結果として物語が断片的にならざるをえなかった。それがむしろ、役者の力を際立たせることにつながったかもしれません。特に裕一を演じた窪田正孝と、妻・音を演じた二階堂ふみの演技力はアッパレ。窪田さんは「恥ずかしがり屋」を自称するだけあり自己を強く推し出すタイプでない。真面目で朴訥で人の良さがにじみ出るような静かな「受け芝居」で優しさ、抱擁力、受容力を見事に表現しました。
一方、音役・二階堂ふみは超個性的でガンガン押し出すタイプの役者。しかし、今回の役としては一歩下がる妻。裕一と音の二人の組み合わせ、その凸凹な夫婦は絶妙で見るたびに「足りないものを互いに持ち寄り、支え合っている夫婦」を実感させられた。その姿はコロナ禍に苦しむ人々の「エール」となり癒やしとなりました。
【2】舞台さながらのライブ感覚
即興が生む面白さをここまで活かした朝ドラは初めて。吉田照幸監督が大切にしたのは、細かな演技指導よりも「ライブ感”です。芝居は動きまで細かく決めず、ある程度は役者さんに委ねて、ワンシーンを細かくカットせずに流れで撮影しています。もう一つは、お約束をなるべくやらずに、“ひとひねり” する」(番組公式HP)と監督自ら方法を語っています。テレビドラマでありつつも舞台的なやりとり、その場で生まれるインプロヴィゼーションのみずみずしさ、躍動感が存分に楽しめました。
【3】音楽への愛が全体を貫き、重要な転換点として機能
柴咲コウ、薬師丸ひろ子、二階堂ふみ、山崎育三郎、森山直太朗、宮沢氷魚……それぞれが劇中で歌う。その歌が転換となって物語が次へ展開していく。理屈を超えて心を揺さぶる音楽が人々を再生し、視聴者を感動させました。根底に「頭はダメと言っても心はいいと言っている」というセリフが象徴するような「音楽の力」が横たわっていました。
【4】男たちの友情を描くことに成功
朝ドラの主人公は女性が多いが、今回は男性の主人公。その裕一に加えて“福島三羽ガラス”──鉄男役の中村蒼、久志役の山崎育三郎と男優たちが揃い互いにかけがえのない絆を感じさせ、作りモノではない友情がひしひしと伝わってきました。
【5】シビアさと笑いの混在
戦場シーンのシビアさたるや、息を呑むほど真に迫っていた。その一方、かけあい漫才やコントを彷彿とさせるシーンも多々あり、遊び心に満ちた演出が随所に仕込まれていた。無理に笑わせようとする制作側の意識が見えると逆に視聴者は白けてしまう。しかし『エール』は、コメディ然とした作りではなくしかし結果としてふっと笑わされる秀逸な仕上がり。朝ドラにありがちな優等生的真面目さ、説教的な堅苦しさをぶっ飛ばすことに成功しました。とはいえ軸は崩れずにきちっと抑えたバランスが見事でした。
【6】一人一人登場人物を大切に回収
母光子(薬師丸ひろ子)が亡くなっていることをさりげなく描き遺品のロザリオに語りかけたり、藤堂先生(森山直太朗)のお墓にお参りしたり。小山田先生(志村けん)が亡くなる直前に裕一に宛てた手紙が届けられたり。一人一人をおざなりにせずきちんと回収していくことでドラマの登場人物への愛を感じさせてくれました。
【7】声優の力を見せつけた
音楽をテーマとしたドラマだけに「音」の使い方も優れていました。特にナレーションを担当した声優・津田健次郎の技術、また吹き替えだけで1人4役を演じたシーンも話題を呼び、まさしく音の力を印象付けました。
【8】オープニングも最終回も自由奔放
初回のプロローグは朝ドラ史上初の紀元前1万年から始まり夫婦が原始人として登場。一方、戦場シーンの数日間は主題歌なしのオープニング、そして最終回のカーテンコールまで。朝ドラの枠を飛び超えていく型破りな演出が新鮮な驚きをもたらしました。
【9】コロナ禍の「今」にきっちりシンクロ
コロナ禍で来年のオリンピック開催も不安視される状況下、ドラマでやたら「五輪万歳」と持ち上げられるのには抵抗がある──そうした世の中の空気を読んでのコンパクトな表現が冴えていた。裕一の元に東京オリンピックの開会式の入場行進曲を作曲してほしい、という依頼が舞い込んでから、1964年の東京オリンピック開催という大イベントまでを短い時間内に描き上げまとめた。何より、今の状況と視聴者の気持ちに併走していく現在進行形のドラマ作りにマル。
【10】監督が脚本も手がけたゆえの一貫性
「視聴者の方々にエールを送り、『自分も頑張ろう!』と元気を出してほしい」という吉田監督の思いが特に後半、脚本と一体となって結晶化していた。偶然ではあっても脚本と演出が一人の人の手になったことで、最終的にブレのない着地ができたのでしょう。コロナの時代と共に記憶に刻まれる朝ドラ作品になったと思います。