星空とふかしイモの関連性について | 羅列される言葉はどの方向性に向かって飛んでゆくのかも見当もつかないまま書き綴られていく

星空とふかしイモの関連性について

煙草が吸いたくてベランダの窓を開ける。

今日はだいぶ冷え込んだ一日となり、外は久しぶりの雪化粧に覆われていた。

煙草に火をつけて上空を見上げる。と、月は出ていない代わりに申し訳なさそうに星がちかちかと瞬いていた。

近くでアイスバーン特有の、轍を擦るガリガリガリとタイヤを鳴らす車が走っていく。

子供の頃に通ったそろばん塾への道のりを思い出した。





そのそろばん塾はクラスメイトに誘われて通い始めた。

特別興味があったわけではなかった。友達が通っているから。オレが通うにはその理由で十分だった。母親はどうせ続かないだろうと最初は乗り気ではなかったが、オレが無理にせがんだので通わせてくれた。

塾は夕方5時から始まる。通い始めた当時も寒さが本格的になろうかとしていた時だった。後で思い知らされるのだが、そのそろばん塾は界隈でも厳しさで有名な塾で、途中で辞めていく生徒が後を絶たない程だった。


その塾は、50人以上の生徒が一度に入れるほどの広さがあり、グリーンのカーペットと長机が綺麗に縞模様を描いていた。そこに子供達、上は中学3年生から下は小学1年生までびっしりと並んで座る格好だ。先生の机と黒板、大きなストーブが入口から一番奥になっていて、そこから順番に段所持者、1級、2級、3級と階級ごとに座るシステムだ。入ったばかりの生徒は一番入り口側、つまり大きなダルマ式のストーブから最も遠い位置に座らせられる。もちろん全員正座だった。おしゃべりをする子は全くいなかった。ただ、パチパチとソロバンを弾く音と先生の数字を読み上げる声だけが広い室内を占拠する。入ったばかりのオレは幼稚園生と見間違えそうな小さな子と肩を並べて、居心地悪そうに座ることしかできなかった。


帰りはいつも正座の痺れと寒さで冷たくなった足を引き摺るように、疎外感を感じながら一人で帰った。

そんな時、唯一の楽しみだったのが帰り道に途中、町内で一軒だけのセブンイレブンで「じゃが丸クン」なる、ふかしイモっぽい惣菜を買い食いすることだった。

電子レンジでアツアツに温められたそれを口に頬張りながら、暗い小道を背中を丸めて帰った。ちょっとだけ温まった気になる。白くなる息を冷たくなった手にハァと何度も吹きかけ、暖をとった。

ふと夜空を見渡すと寒さで潤んだ眼に、オリオン座や北極星がちかちかと瞬いて映るとなんとなく嬉しくなった。





結局、その塾は半年もしないうちに辞めてしまうのだが、次に入ったそろばん塾ではいい先生に恵まれて、中学生になるまで続いた。が、3級止まりだった。