「元捕虜の中から二人選んで、食事の中にウランを混ぜて食べさせるんだ。その上で健康上の被害を調査してくれ。二日間だけの数値で良い。」
さすがのアンリもこれには驚いてすぐに返事を出来ずにいる。
「実は・・・ここだけの話だが健さんが死んだ、いちおう旅に出たという発表をするが・・・・・もう私たちだけで走れるとこまで走るしかないだろう。」
アンリはさらに驚いてさらに沈黙し、何十秒かしてようやく話し出した。
「失礼しました・・・捕虜を使っての実験は早速今晩から始めます、まあ死ぬことは無いでしょう・・・・健さんの話しは残念です・・・。」
「私も残念でならないよ・・・。」
おかしな間が空いたあとデリルが少し急いだ感じで”頼むぞ”とだけ言い残し受話器を置いた。
電話を切ったアンリは呆然としている。
本当にあの健さんが死んだのだろうか・・・でも人はいつか死ぬ、ゾロだって死んでしまったじゃないか。
”ゾロだって死んでしまったじゃないか”
アンリの表情が険しくなり実験の準備を始めた。
ケルマ社のミーティングルームではデリルと中澤が宅配ピザを食べている。
「なんで・・・なんでもっと早く、このピザという食べ物を私に教えなかったんだ!?」
デリルがピザに食いつきながら中澤に説教をしている。
「申し訳ありません・・・・当然、知っているものだと・・・・。」
「まあいい、日本政府の水戸氏との面会だが最短で来週の月曜日に行われることになった。」
中澤はチーズがついた手をティッシュで拭いて予定を手帳にメモする。
もうまるで地球人のサラリーマンだ
「とうとう・・・ですね。宇宙船さえ手に入れば我々の組織は新しいビジネスを始めることが可能となるうえに地球上でそれなりの立場を確保できます。」
その言葉を聞いたデリルが頷いた。
だが、それは中澤の発言に対してではなく、中澤の存在に対してだ。
やはりこの男は必要だ・・・・だが仲間にも地球人にも甘過ぎる・・・組織を大きくするには犠牲というものが必要なときもある。
この男の心に闇を持たせなければ・・・・。
「じゃあ、提案書などは君に頼むことにするよ・・・。」
デリルの心の闇が大きく膨らんだ。
【つづく】