男が連行される姿を確認し終えるとデリルは仲間たちの方に向かって呼びかけた。
「この中で組織がなくても生きていく自信のある方は、どうぞここから出て行って下さい。ただしその決断は組織からの脱会を意味するものとします。」
会場の仲間たちはデリルの行動や言動によって追い詰められていた。
「いいですか、私は仲間を大事にしたいと思っています。ですが組織の中期的存続が危ぶまれる中では皆さんにも多少は苦しみを強いなければなりません。」
”組織の存続が危ぶまれる”という言葉を聞いて会場が一気にざわめきだし、その喧騒を廊下で聞いた中澤が走って会場に戻ってくる。
さくらと健は仲間の混乱を避けるためにケルマ社の内情や組織の活動内容は全て伏せてきた、だから仲間たちは何の危機感もなく気楽に毎日を過ごしてきた。
規律を乱す仲間には容赦しなかったが自分を信じてついてくる仲間への過剰なまでの優しさが、さくらの欠点でもあったのだろう・・・でもさくらがデリルを含め皆から愛され支持された理由もそこにあるのだ。
「静粛に・・・今から多数決による決議を行います、いいですか間違わないようによく聞いて下さい。ではこのまま組織の体制を存続し4年後に組織を解散するか・・・・、組織を改革して成果報酬式のピラミッド型社会を作り上げるか・・・・とは言え最低限の生活は保証しますし、もちろん組織の役に立てば報酬に上限はありません。早い話しが地球人の社会と同じです。」
会場は騒然となった、アンリたちが群集の中で賛成意見をまわりの仲間に吹聴している。
「では皆さん、一度しか聞きませんよ。今の体制を続けて4年後に組織を解散するという方は挙手を願います。人数が半数に達しない場合は反対意見の組織改革を決議します、よく考えて下さい。」
デリルはあえて組織を解散する意見のみ挙手を求めた。解散することを選ぶ仲間が半数以上いるとはとても思えない。逆に両方聞いてしまえば改革路線を選択することに挙手するほど積極的な仲間がいるのかも疑問であり、結局はこの決議行為自体があまり効力の無いものになってしまう。
だから少々強引ではあるものの、4年後の解散に賛成しないものは”全員”改革路線に賛成したことにしてしまおうと言うのだ。
会場ではどよめき声が残るものの、総会の冒頭で野次を飛ばした男が連行された姿を見て反論もできず、かといって解散などとても飲める条件ではなく挙手する者は皆無だった。
「皆さん、ありがとうございます。私からの提案事項は満場一致で承認されたようですね。このあと、ここにいる中澤から皆さんに改革に関する説明があります。」
中澤がデリルと交代してマイクの前に立つ。
そのときデリルがマイクに顔だけを近づけて言った。
「そうそう、彼は皆さんの上官にあたります。彼の話しの途中に私語を行うことは許しません。」
中澤は緊張の面持ちでデリルが作った原稿を読み上げ始めた。
【つづく】