「クラウド・バイ・デフォルト」で創造性を重視した働き方先進企業へ | ◆渡辺正弘のセレクトニュース◆

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去る2017年11月13日、日経BP総研 イノベーションICT研究所主催により「働き方先進企業への飛躍」をテーマとした「 Creative Work Summit 2018 」が開催された。大きな注目を集めたのは政府CIO補佐官 西村毅氏による基調講演だ。西村氏は「クラウド・バイ・デフォルトについて」と題した講演の中で「オンプレミスからクラウドへのシフトは大きな潮流であり、その流れを止めることはできない」と強調。クラウド時代を生きる企業の道しるべとなる、鋭く示唆に富んだ提言を行った。



安全なクラウドと危険なクラウドを
見分ける3つのポイント

生産年齢人口の減少、介護と育児の両立、ワークライフバランスの実現など社会課題の解決に向け、政府が強く推進している働き方改革。いつでもどこでも働くことができる環境を整備し、企業や人材の能力を最大化するためにはクラウドの活用が欠かせない。平成29年5月31日に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進計画」では「クラウド・バイ・デフォルト原則の導入」という方針を打ち出した。

「これから情報システムを導入する際、クラウドを原則として第一候補に考えましょうということです」と政府CIO補佐官 西村毅氏は説明し、「クラウドはITにおける大きな潮流に確実になってきており、30年前のメインフレームからオープンシステムへの変化に類似しています」と指摘した。「当時、信頼性や性能の面でメインフレームから脱却するなんてとてもできない。基幹系はメインフレーム、情報系はオープンシステムといった議論が行われていました。今はオープンシステムの世界は広がり、メインフレームはレガシーと呼ばれる時代となりました。オンプレミスからクラウドへの流れも止めることはできません」と述べた。

新たな技術の潮流にも関わらず、日本でクラウド化が遅れている理由とその対策について西村氏は2つのポイントを挙げた。

1つめが、「パブリッククラウドを利用するのは時期尚早」、「パブリッククラウドに顧客情報や個人情報を置いてはいけない」など、具体的な根拠よりも情緒的な不安が組織の意思決定を左右していることだ。事実に基づく客観的な評価を行い、利用実績を調査することが必要となる。

2つめが、クラウドを選択する基準が不明確であること。安全なクラウドと危険なクラウドをどのように見分けるか。西村氏は重視すべき3つのポイントについて説明した。

「1つめが公的機関の認証。2つめが稼働実績。日本はもとより世界でたくさん利用されているクラウドは信頼性への期待値が高いと思います。3つめが継続的な投資をしているかどうか、この点もとても大切です。単にお客様を集めて投資を回収しようというのではなく、新機能の追加やサービスの向上、データセンターの拡充などに継続的に投資し、お客様満足度を高め成長を続けているクラウドは安全への期待値が高いクラウドであると考えます」

アプリケーションの体質改善に
SaaS の積極的な活用を

「クラウド・バイ・デフォルト」はアプリケーションにも変革をもたらす。技術革新が急速に進む中、アプリケーションはどうあるべきか。「システムがオープン化している現在、技術の潮流から外れた旧技術を使い続けることは困難であるだけでなく大きなリスクを伴います。OS もミドルウェアも待ったなしでアップデートされ、セキュリティパッチも頻発する環境下で、日常的に動作検証が可能で、アップデートも迅速に行えるアプリケーションに体質改善していくことが必要です」

このように、アプリケーションの体質改善に向けて、OS 依存の少ない製品への移行、テストの自動化や継続的な開発・保守・運用の仕組みや体制の確立の重要性を強調した。

「これから企業全体でアプリケーション導入を考える場合、SaaS を積極的に活用しサービス利用への転換を図っていくことが重要と考えています。またクラウド上のアプリケーションにはオンプレミスとは異なる世界が拓けています。新しいデータベース、運用自動化のためのAPI、先進機能などが用意されており、アプリケーションの体質改善もやりやすくなっているのです」

セキュリティ課題の解決にもクラウドが貢献

そして「クラウド・バイ・デフォルト」はセキュリティの課題解決にも貢献する。近年、高度化するサイバー攻撃にウイルス対策ソフトなど旧来のセキュリティツールだけでなく、システムの特性に応じて、EDR ( Endpoint Detection & Response )のような最新のセキュリティツールが必要となる。またパッチ適用プロセスの短サイクル化や、運用の自動化による人間系リスクの排除も求められる。「セキュリティは利便性とコストとのバランスで考えることが大切」と西村氏は強調した。バランスを無視したセキュリティ対策はシャドーIT やルール破りにつながるからだ。

高度なサイバー攻撃に対し、自社で対策を講じ続けるのは難しい時代になってきた。高いセキュリティが求められる基幹システムにおいてもクラウドを利用するケースが増えている。重要な観点は「クラウド・バイ・デフォルト」を大きな技術の潮流として捉えること。その上で、「クラウドの利用可否について事実に基づく客観的な評価を行い、利用すべきクラウドについては公的機関の認証や稼働実績、継続的投資の有無を確認し、選定することが重要です」と西村氏は講演の要領をまとめて締めくくった。