さて、この12年の前には、プロローグのような

1年間があった。

長女の挑戦の1年間である。


新しい先生に習いだしてしばらくした頃、

一冊のカタログのような本を持って帰ってきた。

長女が言うには、こんどこのコンクールに出してもらえるらしいとの事だった。


その時はへぇ〜♪という感覚しかなかった。

ちょうどバレエも発表会に向けて振り付けも始まった頃で、憧れの白鳥の湖のコールドにも選ばれた頃だった。


課題曲は2曲。

ソナチネと近現代。

どちらも長女にとってはなかなかの難曲だった。

地道に練習して、練習して、練習して。

補習もたくさん呼んでいただいた。


そして本番を迎えた朝、

前日からお泊まりのお客様を迎えていた我が家は

まさかの、当日の朝自宅練習ができないままの出発となってしまった。

朝からピアノの音は遠慮して欲しいとの判断だった。


あんなに練習頑張って準備したのになぁと悔しい気持ちはあったが、お客様のお接待に忙しく過ごして、慌ただしく出発した。


本番は初めて聴く周りの参加者のレベルの高さに圧倒されながらも、なんとか普段通りに弾けて胸を撫で下ろした。