あるところに、主人思いの猿がいた。


主人は、木陰で昼寝をしていたが、

そこへ一匹のハエが来て、

主人の顔に何度も止まるので

主人は顔をしかめていた。


忠義深い猿は、近くにあった枝を手に取り、

主人の顔に止まっているハエめがけて

力任せに振り下ろした。


しつこいハエは死んだ。

そして、主人も永遠の眠りについた。



・・・というたとえばなしを、ある本で読んだ。


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よかれと思ってやったことが、

思わぬ結果を招くことがある。


もちろん悪いことをするより、

良いことをする方が良い。


この猿は、とても親切で優しかったが、

思慮に欠けていた。


本当に良いことをしたいのならば、

力加減を考えるとか、

方法を他にもいくつか編み出すとか、

本当に一番やりたいことはなんなのかなど、

あらゆる角度から見極めなくてはならない。


後先考えない善意は、致命傷になることもある。


「悪だから早く取り除かねば。」


「自分こそ、この方法こそが、正しく良いものである。」


そういう一方的な考えでいると、

周り回って本当に大切な物が

消えて無くなってしまうのかもしれない。



・・・世の中、そんなことばっかりだ。悲しい。