ブッシュ大統領がとても活発に活動していた頃、

偶然、テレビで見た話。

アメリカの、ある夫婦のドキュメンタリーだった。


その夫婦には、子どもがたくさんいた。

彼ら家族は全員、自国アメリカをとても愛しており、

子ども達を遠いアラブ地域へと

戦争に行かせることが、その夫婦の自慢だった。


長男は空軍で、次男は海軍で、

そして彼らがそれぞれどんな成績を上げたか・・・、

そんなことを、母親は息子達の写真を見せながら、

自慢げにテレビ画面で語った。


戦争に勝っているというテレビの報道を聞くたびに、

夫婦は喜び、家の前に国旗を掲げるのだった。


そして、三男だったか四男だったかが、

他の兄弟達と同様に、喜んで戦争へ向かっていった。

もちろん、アメリカが戦争に勝つためである。


家族は、その子が、その戦争で良い戦績を残してくるだろうと、

期待して待っていた。

ところがしばらくして届いたのは、一通の手紙。

息子が戦死したという、簡単な内容だった。

死んだ息子は、自分の子ども達の中で、

母親がもっとも愛した、一番かわいい息子だった。


母親は、気が狂わんばかりに泣き叫んだ。

胸が張り裂けそうだった。何故、私の息子が・・・?!


とうとう息子の亡骸は、国に戻ってくることはなかった。


ある日、母親は、最愛の息子の、カラッポの墓がある、

戦死者の墓地へフラフラと向かう。


広い広い公園のような美しい墓地には、

無数の十字架が地面に刺さっていた。

彼女の心とは裏腹に、空は晴天で美しかった。


ふと見ると、頭から布をかぶったアラブ系の女性が、

米兵がたくさん眠るその墓地のそばに座り込んで、

「戦争反対」と片言の英語でしゃべっていた。

そのアラブ系の女性は、

自分の子どもの写真を見せながら、

「私の息子は戦争で死んだ」とブツブツ言い続けていた。


それを見かけた母親は、うんうんと頷きながら、

「私も。私もよ。私も息子を亡くしたの・・・」と

涙声で彼女にゆっくり近づいた。


アラブの女性は、最初はとまどった表情をしたが、

すぐさま事情がわかったようだった。


そして、ふたりは、まるで親友のように

肩を抱き寄せて、いつまでも静かに泣いていた。