心とは認識作用の事です。

 

一般的に言う、

”心の痛み”、”乱れた心”

などの言葉は、

実は心では無く、

心が認識している対象の事を指しています。

 

この、認識する対象の事を心所(しんじょ)と言い、

私達が心だと感じているものは、この心所の事です。

 

心所とは心に現れる成分の事。

 

例えば、

”心の痛み”は、苦受と言う成分を認識している。

”乱れた心”は、掉挙(じょうこ)と言う成分を認識している。

と言う事です。

 

心所は全部で52種類あり、

それらが複雑に組み合わさっている為に、

心と言うものは理解しがたいのですが、

心所についてしっかり学んでいけば、

自分の心はもとより、

他者の心も徐々に理解出来るようになっていきます。

 

 

心所は大きく3つのグループに分かれています。

 

・人を不幸にする不善心所。

・人を幸福にする浄心所。

・基本的な働きをする同他心所(どうたしんじょ)。

(詳しくはテーラワーダ仏教のホームページなどを参照の事。)

 

これらを以下に解説していきますが、

私なりの解釈として、

入力系、出力系、常駐系

と、区分けしています。

 

入力系とは、心が認識する為に必要な入力エネルギー。

出力系とは、心が認識した後、発せられるエネルギー。

常駐系とは、心に常駐し、バイアスを生み出すエネルギー。

 

これらの区分けは

あくまでも私なりの解釈であることを強調しておきます。

 

これらの心所が、カルマを作り出します。

 

カルマが良ければ、人は幸福になり、

カルマが悪ければ、人は不幸になります。

 

これはカルマの基本についての動画です。

この基本パターンに、心所が複雑に絡むことで、

人は幸せになったり、不幸になったりします。

 

 

 

人を不幸にする不善心所(14種類)

痴(常駐系)・・・・愚かさ。物事の真の側面に気付く事が出来ないこと。

無慚(常駐系)・・恥を知らぬこと。

無愧(常駐系)・・怖れを知らぬこと。

掉挙(常駐系)・・落ち着きの無さ。

 
これら4つの心所は、愚かさのグループに分けられ、
人の悩み苦しみには必ず存在する心所です。
 
これらの心所は、
自ら気付き改善していかない限り、居座り続けますが、
これらの心所に、なかなか気付けない為に、
人は不幸の輪廻を続ける事になるのです。
 
 
若者の自動車事故を例にしてみるとよく分ります。
 
”痴”がある為に、
若者は、自分が運転が下手であると知らず、
頭では運転が上手なつもりでいる。
 
その為、
落ち着きの無い心(掉挙)で、
怖れを知らず(無愧)、
平気でスピードを出す。
 
そんな自分の愚かさを
恥じることなく(無慚)運転し続けるから、
事故を起こすのです。
 

貪(入力系)・・・対象を、もっともっとと欲しがること。

見(入力系)・・・自分の間違った見解にしがみつくこと。

慢(入力系)・・・自分を基準に、認識した対象を比べ計ること。

これら3つの心所は、欲のグループに分けられる。
自分を満たそうと、執着するエネルギーです。
 
心が認識した、あるがままの姿を受け入れれば
人は不幸にはなりませんが、
これら欲の心所がある為に、人は常に不満足なのです。
 
例えば、
”女は業が深い”と言う言葉がありますが、
これらの欲のグループが関係しています。
 
自分が持っていない高価なアクセサリーを、
友達が持っていることを知った。
 
この時、
「私とあの子、どっちの方が女としての価値が高いのか?」
と”慢”が働き、
「私の方が女としての価値が高いはずだ。」
と、”見”が働き、
「私にも高価なアクセサリーを買ってよ!」
と、”貪”が働くのです。
 

瞋(出力系)・・・心に入ってきた対象を拒否すること。怒りや悲しみ。

嫉(出力系)・・・自分にないものが他人にある事に対する怒り。嫉妬。

慳(出力系)・・・自分にあるものを分け与える事を拒否すること。物惜しみ。

後悔(出力系)・・自分がした過去の事を否定すること。

 
これら4つの心所は、怒りのグループに分けられ、
心で認識した対象に対し、
拒否、否定するエネルギーです。
 
これらの不善心所が、
心を弱体化させていきます。
 
更には、身体へのダメージも与えてきます。
 
怒りは猛毒と言われる所以です。
 
例えば、
「あなたは仕事が遅いです。」
とあるがままを言われた人が、
怒りによってその言葉を否定するとどうなるか?
 
「私が悪いわけではない。上司の教え方が悪いのだ。」
などと事実を否定し生き続ける事になります。
 
結果、
仕事は遅いままで、何か言われる度に言い訳し怒る。
と言う迷惑この上ない人間になるのです。
 
また、
「どうせ私が悪いのよ。大学くらい出ておけば良かった。」
と後悔すれば、今度は自分自身を否定する事になります。
 
仕事が遅いなら、それを認め受け入れ、
どうすれば一人前の仕事が出来るかを考え訓練すれば良いのです。
 
怒りや後悔によって、現実を否定したところで、
現実は変わりません。
 
心が認識できる対象が減っていくだけです。
 
もし、現実世界の中で、
心が認識できる対象がごくわずかになったら、
後は妄想の世界で生きていくほかありません。
 
精神異常、認知症、引きこもり、鬱など、
社会復帰できなくなる可能性が高くなってしまうのです。
 

昏沈(出力系)・・・心の力を弱くすること。

睡眠(出力系)・・・心の機能を鈍くすること。

疑(入力系)・・・・・心の成長を止める疑いのこと。

 
これら3つの心所は、その他のグループに分けられます。
心が明るく活発で成長し続ける事を妨害するエネルギーです。
 
これらの心所が現れると、
やる気がない、暗くなる、成長できない、眠くなる、ストレスを感じる、
などの症状が出ます。
 
なかでも、”疑”は早めに減らしておきたい心所です。
 
”疑”とは、因果関係を正しく理解しようとしない働きとも言えます。
 
例えば、
この記事を読んでいる人に”疑”があると、
この記事の真偽を自ら確かめようとはしないでしょう。
 
頭から否定してかかるのです。
 
その結果、
自分の心を鑑みることなく、
成長をストップさせてしまう。
 
心が成長しなければ、
現実に打ちのめされる機会が増えてくる。
 
そうなると、昏沈や睡眠が出てきて、
やる気なく、疲れやすく、ストレスの多い生活を
強いられる事になるのです。
 
 

人を幸福にする浄心所(25種類)

信(常駐系)・・・自由で正しい判断による確信。

念(出力系)・・・気付き。現実に目覚めていること。

慚(常駐系)・・・不善の行為を恥ずかしいと思える事。

愧(常駐系)・・・不善の行為を恐ろしいと思える事。

無貪(出力系)・・・欲を減らしていく事。

無瞋(出力系)・・・怒りを減らしていく事。

中捨(出力系)・・・冷静で客観的な態度を取る事。

正語(出力系)・・・・正しい言葉を話す事。

正業(出力系)・・・・正しい行為を行う事。

正命(出力系)・・・・正しい仕事をする事。

悲(出力系)・・・・他の悩み苦しみを助ける事。

喜(出力系)・・・・他の幸せを喜ぶ事。

智慧(常駐系)・・・物事の真理を知っている事。

以上、13の心所と、
以下の12種を合わせ、
全部で25種が浄心所です。
 
以下の12種は、心と身体、
それぞれに対応しているのでペアとして紹介します。
 

心軽安、身軽安(常駐系)・・・・・・落ち着いている事。安息。

心軽快、身軽快(常駐系)・・・・・・軽さ、軽やかさ。

心柔軟性、身柔軟性(常駐系)・・目的に対し柔軟に対応出来ること。

心適合性、身適合性(常駐系)・・行動に適している事。動ける事。

心練達性、身練達性(常駐系)・・訓練済みである事。巧みである事。

心端直性、身端直性(常駐系)・・きちんと真っすぐである事。ブレない事。

 

これら25種の心所が心にあれば、
人生は巧みに生きられます。
 
あなたが尊敬する人を思い浮かべてみれば、
これらの25種の心所の特徴を多く持っている
と分かるはずです。
 
どんな人間でも、
これら25種の浄心所を育てれば、
必ず幸福になれるのです。
 

心の基本的な働き、同他心所(13種類)

触(入力系)・・・・・・6つの入力器官(眼耳鼻舌身意)に対象が触れること。

受(入力系)・・・・・・触れた対象(色声香味触法)を感じること。

想(常駐系)・・・・・・受けた対象を区別すること。過去の学習を想いだす事。

思【行】(出力系)・・触・受・想のプロセスから行動を動機付ける事。業(カルマ)。

一境性(常駐系)・・認識した対象に集中する事。

命根(常駐系)・・・・生きている働き。

作意(入力系)・・・・認識を作動させる事。

 
これら7つの心所は、常に心に存在している。
心が働く為に最低限必要な心所で、認識の基本的な働きです。
 

尋(入力系)・・・・・・対象を心に乗せること。

伺(入力系)・・・・・・対象を心に留めておくこと。

勝解(入力系)・・・・心と対象を結び付けること。

精進(出力系)・・・・努力すること。

喜(出力系)・・・・・・喜ぶこと。

意欲(出力系)・・・・なにかをやろうとすること。

以上6つは、いつもあるとは限らない心所で、
善い方向にも悪い方向にも働きます。
 
例えば、
後悔ばかりしている人は、
不善心所と共に、尋と伺、勝解などが働いているのです。
 
尋と伺は思考を司っている。
 
そして勝解が、
心と”後悔の対象”を結び付けて離さなくしてしまうと、
後悔の思考がいつまでも頭を回り続ける事になります。