皆様お久しぶり。


さて今回は霊体験の話ってことで、

いつものような笑いでのつかみは控えようと思う。

いくつもいくつも、それは数えきれない程霊体験を

して来た僕ではあるけど、どの話をしようかと悩んだ。

そしてこの話が思い浮かんだんだ。


本当は違う話にしようかとも思ったのだけれど、

これを伝えておけば同じような境遇にあった人がいたら

危機回避の一助になるのではないかという考えからこの話にした。


では、早速始めよう。
心臓の弱い人はご覧にならない方がいいかもしれない。


「恐怖!蛙の怨霊」

もう何年前だろうか。

僕は当時の彼女とドライブデートを楽しんでいた。


その時はちょっと遠出をしてみようということになり、

とある高原を目指していた。

天気もよく2人の会話も弾み、最高の1日となるはずだった。


だった…。

あの出来事さえ起こらなければ…。


その高原を訪れるのは初めてだった。

気分は2人だけの空間と音楽、そして時間も手伝い、

また2人で初めての想い出が増えるということで華やいでいた。


しかし、山の天気は変わりやすく、雨が降って来た。

次第に土砂降りの雨となり、

辺りの雰囲気も鬱々とした光景に感じられてしまうようだった。

次第にその雰囲気に飲まれたのか、

2人の会話も途切れがちになり、重たい空気が車内に立ちこめて来た。


僕はそうはあっても、

山の天気は変わりやすいのだからすぐに晴れるさと気楽に、

いや、努めて考える様にしていた。


しかし周りの景色はそんな僕の期待を裏切るが如く

おどろおどろしさを増していった。

そして道に迷ってしまったようだった。

なぜなら、そこに似つかわしくない鬱蒼と茂った森の中に入っていったからだ。

だが、初めて訪れる地でそんなことを考える余裕も無かった。

その道であっていると思うしかないのだから。


やがて、車のルーフをつんざく雨音が激しさを増して来た。

と、同時に、雨音にまぎれて聞こえるはずも無い何かの音が聞こえた。

音?音というよりは声だ。

しかし声なんか聞こえるはずも無い。

ここにいるのは僕と彼女だけだ。

ましてや下卑て、野太いうなり声なぞ発するものはこの車内にはいないし、

ましてや車外にそんな人影は見当たらない。


しかし聞こえるのだ…。その声は…。


だが、意外に彼女は冷静だった。

冷静を装っていると言った方がいいかもしれないが、

僕にはその彼女の姿を見て気丈に振る舞っているな

と思うと同時にちょっと寂しくなった。だからといって、

彼女を怖がらせるわけにはいかない。

ただでさえ、楽しい想い出を作りに来ているのに、

それに反した状況下は僕には我慢できなかった。


気分は相当滅入っていた。

なぜなら遠ざかって言っていいはずのおぞましいあの声は

追いかけてくるかの様にますます大きくなるからだ。


全ての音という音は、その恨めしいうめき声に支配された…。

この状況を車内だけでも変えたかった。


僕はカーステレオに手を伸ばし、

全ての雑音を振り払うかの如くボリュームを上げようとした。

すると、彼女が重い口を開いてこう言った。




「変えるの?音量。」




え?



お後がよろしい様で。