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Lee Konitz "Very Cool"
続けてリー・コニッツをもう1枚。迷盤?と言えるかも知れないのは、タイトルとは別物でコニッツ作品中ではクールではないこと、ジャケット・デザインも不評と言うか、アルバムの中身の雰囲気と全然合っていません。
1957年5月12日、NYC録音、MONO。
本盤は、日本ポリドールからの「ヴァーヴ不滅のジャズ・シリーズ完結記念ザ・ベスト・オブ・ザ・ベスト1500」完全限定盤、スイングジャーナル選定ゴールドディスク。帯には「コニッツ、円熟の境地に達した代表作。ジャズ史必聴の名盤」とありますが、かなり大袈裟過ぎ。
さて、タイトルとは真逆のクールではなくて、とても聴きやすいとの評です。
早速の録音評ですが、Grado MC+ MONOで。ピアノの音色のチープさはRVGに似ていますね。レンジも狭い。アルトの音色も雰囲気も、確かに全くクールではありません。
やや硬めの音質のこのカートリッジでも音質自体かなりウォームでクリアではありません。余計にソフトに聴こえてしまいますね。
マイナー調ではないのですが、ミステリアスなやっぱり独特の揺らぎを感じます。
57年は、ジャズの中心はイースト・コーストで、ハード・バップからファンキー・ジャズです。エモーショナルとか乗りの良さと比較すれば、ヴェリー・クールと言う意味は理解できますね。セールス狙いのタイトル?可能性はゼロではないと思います。
#VerveRecords  (MV 4015)
#LeeKonitz (as)
#DonFerrara (tp)
#SalMosca (p)
#PeterInd (b)
#ShadowWilson (ds)
Liner Notes - #NatHentoff
Cover Photography By - #WilliamClaxton
Art Direction - #SheldonMarks
ドラム以外は皆トリスターノ門下だそうです。レニー・トリスターノは、ビバップと同じ時期に活躍したピアニストですが、ビバップの代理コードの理論は十分理解しつつ、フレージングやリズムではビバップとは全く違う方向を示したイノベーターの一人で、ちょっと難解です。
彼の門下生の演奏はビバップとはかなり違いますので、ジャズは理論ではなくてテイストなんだということがよく分かります。
しかし本作は、トリスターノ一派としての理論や手法をベースにしながら、トリスターノから解き放たれ「分かりやすくなった」時期のリー・コニッツが聴けるところがミソだと思います。
"Kary's Trance"は前出の‎"Inside Hi-Fi"にも収録されているオリジナル代表曲ですが、聴き比べも楽しめます。
怪しいのですがAtlanticのステレオはシャープで綺麗。ギターのあるなしで、違う曲のようです。本作の方が、8ヶ月も後なのですが、古くさいですね。
A1 "Sunflower"(Written-By - Ferrara)
本作の特徴的なトランペットのドン・フェララの曲。トリスターノ楽派に特徴的なアドリブに注目でしょうか。
A2 "Starway To The Stars"(Written-By - Signorelli, Malneck, Parrish)
同じ西海岸の代表白人アート・ペッパーのような情緒的なアルトとは対照的な淡白で渋いバラッド。
A3 "Movin' Around"(Written-By - Ferrara)
再びフェララのアップテンポな曲。コニッツに合わせたフェララ、モスカのまとまりのある演奏が聴き処。
B1 "Kary's Trance"(Written-By - Konitz)
ジャック・ロレンスの "Play Fiddle Play" のコードを使ったコニッツのオリジナル。
B2 "Crazy She Calls Me"(Written-By - Caesar, Meyer, Kahn)
ペット抜きのワンホーン、渋いバラッド。
B3 "Billie's Bounce"(Written-By - Parker)
何と!パーカーのブルースです。トリスターノ派はパーカーに影響を受けないように、できるだけ彼の演奏や曲とは距離を置いていたと言われていますが、ここで取り上げているということは、もはやコニッツがそういう師の教条を守らなくなったことが伺えると。この演奏の面白いところはトリスターノ派の演奏とパーカーの間でバップのスタイルが混在していること。
コニッツの名盤と言えば"Subconscious-Lee"ですが、彼らしいと言うことは難解だとも言えます。それに比べて本作は、渋いには渋いけれど、もっと親しみやすくてコニッツの特徴もよく分かるアルバムだと思います。
#jazz #fuzey #vinyl #jazzvinyl #vinylcollection #ジャズ #スイングジャーナル #レコード
*作品を知るとジャズはもっと輝きます。情報くださる先輩諸氏に感謝。