「絶対、俺から離れんなよ。この先ずっと…」


日曜の朝。
カーテンの隙間から、ほんのり明るい色の日差しが
入り込んでいる。夢から覚めたばかりの男はそう言った。
何が起こってもこの先ずっと俺から離れるな、と。
私は小さな声で男に答える。


「う、うん。たぶん…」


10代の終わり。
ヒロ(仮名)という男に出会った。
言葉を選ばずに、思いついたことを感情任せに話す私と
少し難しい言葉で、ひとり言をつぶやくように話すヒロとは、
とても対照的だった。「絶対なんてねーよ」がヒロの口癖で
その言葉は他の何よりも冷たく聴こえた。
意味を理解しきれなかったあの頃の私と、“絶対”という

言葉を使わないでいる現在の私。

そんな私は、男からすれば少し寂しげな女に見えている

かもしれない。10代の終わり、私がヒロに感じていたように。


絶対、俺から離れんな…。
そう言ったのは、私が20代半ばに出会った男。
この先離れるか離れないか、そんなの約束できること

じゃない。だから私は“たぶん…”と答えた。

何がどうなるか分からない未来。1時間後のことも分から

ないのに、数十年先のことなんて分かるわけがない。

約束というただの気休めの行為なんて要らないのだ。
特に、恋愛においての約束なんて考えただけで発狂しそう。


私は思うの。


恋人だからこそ、約束なんか要なんじゃないか…って。


(次回へ続く)


かれんのブラック恋愛計算式