<クリスティ-ネ・カウフマン>
この写真の女優を知っているだろうか
60年代を彩った我らのマドンナである。
高校時代 新潟の”バネが飛び出した椅子”の
映画館で心を奪われた女優である。
そのタイトルは忘れたが「隊長ブーリバ」か
「ポンペイ最後の日」だったと思う。
新潟の繁華街を歩くと、
カレー皿より大きなクッキーの缶が並んでいた。
その缶の印画写真がこれだった。
でもポケットの中にはそれを買うお金が無かった。
クリスチーネ・カウフマン
それ以来この名を忘れた事はない。
*
ナイルクルーズ船は夕刻出航した
船尾のデッキに立っていると
もう一隻 同じ大きさの船が後を追ってくる
乗客が多く二隻クルーズらしい。
ナイルはこんな上流でも川幅は広い
水の色は青くて綺麗だ
岸辺には椰子と緑の畑があり、すぐ後ろには
砂漠が迫っている。
この砂は赤く、目が細かく粉のようだ
左岸に夕日が落ちて、
ディナーの案内が船内に流れた。
客はほとんどが欧米系でアジアは
我々瞑想ツアーの人間だけだった。
最上階の食堂に三々五々人が集まって
くる。
私の部屋は船底から二層目
階段をだいぶ昇らねばならない
私の前を欧米系の親子三人が行く。
もれ聞く言葉はドイツ語だ。
その娘はスラッとして
ハッとする美しさだ
<クリスチーネ・カウフマンに似ている>
私の心臓はどきどきと鳴った。
(つづく)