2024年5月25日土曜日

戦争犯罪に逮捕状請求 ICC イスラエル首相・国防相 ハマス幹部にも

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 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、そしてイスラム組織ハマス指導者の逮捕状を請求したと発表しました。今後、ICCの予審裁判部が逮捕状を出すか判断します。
 この逮捕状請求について多くの国々は「法はすべての人に平等に適用されるべきだ」として歓迎しましたが、イスラエルのネタニヤフは「歴史的暴挙でICCにとって永遠に続く恥だ」と反発し、米国のバイデンも「言語道断」「請求を拒否する」と述べました。
 驚くべき反応ですが、彼らが昨年10月7日のハマスの越境攻撃こそが根源的な犯罪であって、その後のイスラエルのガザでの大虐殺は大した問題ではないと考えていることが良く分かります。しかしそんな考え方はとても通用するものではなく、却ってイスラエルや米国の異常な感覚を証明するものです。
 因みにカーン主任検察官が昨年10月7日の越境攻撃に関してもハマスの指導者に対する逮捕状を請求しているのは、そうでもしないことには紛糾して収まらないと判断したものと思われます。
 しんぶん赤旗の5つの記事を紹介します。
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戦争犯罪に逮捕状請求 ICC イスラエル首相・国防相 ハマス幹部にも
                        しんぶん赤旗 2024年5月22日
 国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)のカーン主任検察官は20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、イスラム組織ハマス指導者の逮捕状を請求したと発表しました。今後、ICCの予審裁判部が逮捕状を出すか判断します。(ベルリン=吉本博美、外信部=洞口昇幸)

 カーン氏は会見で、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で民間人を意図的に殺害し、飢餓状態などの深刻な傷害を与えたのは犯罪行為であり「(ネタニヤフ首相らが)刑事責任を負うと信じるに足る合理的な証拠がある」と強調。「自国民を守るために行動を起こす権利があるが、国際人道法の順守義務を免除するものではない」と断じました。
 逮捕状請求について、南アフリカやスペインなどは「法はすべての人に平等に適用されるべきだ」として歓迎しました。
 イスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的暴挙で(ICCにとって)永遠に続く恥だ」と反発し、イスラエルを支える米国のバイデン大統領も「言語道断」「(請求を)拒否する」と述べました。
 逮捕状請求はハマスの最高指導者ハニヤ氏や、ガザ地区トップのヤヒヤ・シンワル氏を含む3人も対象としました。
 ICCは昨年3月、ロシアのプーチン大統領がウクライナでの子どもの誘拐に関与したとして逮捕状を出しています。
 国際刑事裁判所(ICC) 独立した常設の国際裁判所。戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド(集団殺害)の罪、侵略の罪を犯した個人を裁きます。2002年の設立条約発効を受け、03年に設立されました。裁判官(任期9年)は18人で加盟国が選出します。パレスチナや日本を含む120以上の国・地域が加盟し、米国やイスラエルは非加盟。加盟国は逮捕状が出された者が自国領内に入った際に拘束するよう協力を求められます。


ICC・逮捕状請求 各国が支持
                       しんぶん赤旗 2024年5月22日
 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官が20日、戦争犯罪などでイスラエルのネタニヤフ首相やハマスの指導者らの逮捕状を請求したと発表したことについて、南米や欧州諸国や南アフリカなどが支持、歓迎しています。

チリ・コロンビア南アフリカなど
 ICCにイスラエル・パレスチナ両地域での戦争犯罪に関する捜査を求めてきたチリの外務省は20日、ICC検察官の逮捕状購求を支持する声明を発表しました。声明は「ICC検察官が進めている活動を支持し、すべての国が捜査に協力することを期待する」と述べています。
 イスラエル軍のガザ侵攻を厳しく批判してきたコロンビアのペトロ大統馴は20日、X(旧ツイッター)でコメントを発表しました。ペトロ氏は、逮捕状請求がイスラエルとハマス双万の幹部を対象にしていることについて、「紛争のすべての側の指導者が等しく含まれた措置」と指摘。それが、「正しい方向への一歩であり、無処罰に反対する闘いが大きく発展することになる」と評価しました。
 南アフリカのラマポーザ大統領は20日の声明で決定を「歓迎する」と表明。「国際的な法の支配を守り、凶悪な罪を犯した者が説明責任を果たし、被害者の権利を守るために、法はすべての人に平等に適用されるべきだ」と述べました。同国は昨年、イスラエルがパレスチナ自治区でジェノサイド(集団殺害)を行っているとして国際司法裁判所(ICJ)に提訴しています。

ベルギーやスペインも
 ベルギー外務省は20日の声明で、ICCの決定を「支援する」と表明。「ガザでの犯罪は、加害者がだれであっても、最高レベルで訴追されなければならない」と強調しました。
 スペインのディアス副首相兼労働相はX(旧ツイッター)への投稿で「良い知らせだ。国際法はすべての人に適用されるべきだ」と歓迎。「私たちは何カ月も前から、パレスチナでの虐殺をとめるために必要な捜査を要求してきた」と強調しました。

米はイスラエル擁護
 パイデン米大統領は20日、声明を発表し、国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求したことについて、「言語道断だ」と批判しました。
 バイデン氏は「カーン氏が言おうとしていることが何であれ、イスラエルとハマスは決して同等ではない」と強調。「われわれは常にイスラエルを支持し、イスラエルの安全保障を脅かすものに対抗する」と主張しました。
 また、同日のホワイトハウスでの演説で、「いま起きていることはジェノサイド(集団殺害)ではない」と強弁し、イスラエルを擁護しました。
 プリンケン国務長官も同日の声明で、カーン氏がハマスの指導者とともにイスラエルの高官の遼捕状を請求したことは「恥ずべきことだ」と明言。この決定は、人質の解放や人道支援の強化など「停戦合意に向けて続けられている取り組みを危うくする可能性がある」と批判しました。

英やドイツ 疑問呈する
 イスラエル寄りの立場を取る英国やドイツは、ICC主任検察官の発表に疑問を呈しました。
 英国のスナク首相の報道官は、「戦闘を一時停止させ、人質を脱出させ、(パレスチナヘの)人道援助を受け入れるということに関して、何の役にも立たない」と主張。「英国はパレスチナを国家として承認しておらず、イスラエルはICC加盟に必要なローマ規定を批准していない」として、ICCは逮捕状を請求できる権限がないとの考えを示しました。
 ドイツ外務省は20日の声明で、「(ICCの)独立性の手続きを尊重する」と表明する一方、イスラエル首脳らとハマスの指導者の双方に逮捕状が購求されていることから「両者が対等であるとする不正確な印象が増している」と主張。ハマスはイスラエル襲撃時の虐殺の責任を負い、イスラエルはハマスから国民を守る権利があるとしました。


カーン主任検察官 声明(抜粋)、
                        しんぶん赤旗 2024年5月22日
 国際刑事裁判所のカーン主任検察官が20日、発表した声明の抜粋は次の通り。

 2023年10月7日以降にイスラエル領およびパレスチナ自治区(ガザ地区)で行われた、次の戦争犯罪、人道に対する罪においてヤヒヤ・シンワル(ハマスガザ地区指導者)、ムハンマド・デイアブ(ハマス軍事部門司令官)、イスマイル・ハニヤ(ハマス政治部門指導者)は刑事責任を負うと信じるに足る合理的根拠がある。
 ローマ規定7条(人道に対ずる犯罪)1項(b)絶滅させる行為/同(a)および8条(戦争犯罪)2項(c)(i)殺人/同8条2項(c)(iii)人質をとること(など計8項目)に該当する。

 23年10月8日以降のパレスチナ領内で行われた、次の戦争犯罪、人道に対する罪において、ベンヤミン・ネタニヤフ(イスラエル首相)、ヨアブ・ガラント(国防相)は、刑事責任を負うと信じるに足る合理的根拠がある。
 ローマ規定8条2項(b)(xxv)戦争の手段として文民を飢餓の状態にする/同8条2項(a)(iii)身体または健康に対して故意に重い苦痛を与え、または重大な傷害を加えること/同8条2項(a)(i)故意の殺人/同8条2項(b)(i)文民を故意に攻撃/同7条1項(b)飢餓によってもたらされる死を含む、全滅および殺人-(など計7項目)に該当する。
 これらは23年10月8日以降の、ラファ、ケレムシャローム、エレズの3ヵ所の検問所の完全封鎖を含むガザ封鎖と、その後の検問所開通の際の、食料や医薬品を含む基礎的物品の輸送の故意の制限によって発生した。封鎖は、同9日以降の、イスラエルからガザヘの水道パイプラインの断水、同8日から今日まで統く電力供給の遮断や妨害を含む。これらは食料を受け取るために並ぶ行列への攻撃、人道支援団体による輸送に対する妨害も含め、文民への攻撃と並行して行われた。
 戦争の手段として飢餓を使用し、▽ハマスのせん滅▽ハマスが拉致した人質の返還のため▽ガザ市民を集匝懲罰するー手段として、ガザの人々に対し暴力を使う、統一の計画の一部として実施された。


ガザ北部病院標的 イスラエル軍が包囲・銃砲撃
                        しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【カイロ=秋山豊】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は21日、パレスチナ・ガザ北部ジャバリヤのアルアウダ病院がイスラエル軍に19日から包囲されていると述べました。病院のスタッフ148人と患者22人、付き添いの人々が閉じ込めちれています。

「医療サービスが枯渇する」
 本紙が地元の人権活動家の協力を得て21日にインタビューした同病院のムハンマド・サルハ副院長は「イスラエル軍に包囲され、病院の近くで銃撃と砲撃が行われている。救急車が病院から出ることができない。負傷者がここまでたどり着けない」と話しました。
 アルアウダ病院は昨年12月にもイスラエル軍に包囲されました。病院のスタッブによると軍の攻撃で医師3人が死亡し、ベッド48床を失うなどこれまでも深刻な被害を受けてきました。
 サルハ氏は「燃料と清潔な水が不足していることと、病院が標的にされる恐怖で破滅的な状況に直面している」と語りました。
 イスラエル軍は今年1月にガザ北部でイスラム組織ハマスの部隊を解体したと説明していましたが、ハマスが戦闘力を回復させないためとして、またもジャバリヤに攻撃を行っています。
 WHOによると、ガザ北部で機能している病院はアルアウダ病院のほかは、ベイトラヒヤにあるカマルアドワン病院だけです。テドロス事務局長は21日、同病院が攻撃されて集中治療室や受付、屋根などに損害が出たと述べました。
 テドロス氏によると、医療スタッフ20人と悪者13人が院内に残っていますが、避難のための活動が続いています。「医療従事者と患者を退避させれば、病院は機能しなくなり、ガザ北部の医療サービスはさらに枯渇する」として、患者と医療従事者の保護を訴えまし
た。

ICCに対抗措置も 公聴会で国務長官 市民は抗議
 プリンケン米国務長官は21日、上院の外交委員会と歳出委員会の公聴会に相次いで出席し、イスラエルのネタニヤフ首相らへの逮捕状を請求した国際刑事裁判所(ICC)に対して、米議会と連携して「適切な対抗措置」をとる考えを示しました。公聴会では市民がブリンケン氏に抗議。与党。与党民主党の進歩派からは逮捕状請求を支持する声も出ています。

 ブリンケン氏はICCの判断について「誤った決定だ」とし、イスラム組織ハマスとイスラエルを同列に扱っているなどと主張しました。議会の超党派で協力し、対抗措置を検討するとしました。
 現地からの報道によると、外交委員命では発言するブリンケン氏の後ろに市民が「犯罪者」と書いたプラカードを掲げ、イスラ工ルのジェノサイド(集団殺害)に加担していると抗議しました。この日の二つの委員会でブリンケン氏の発言は少なくとも6回、傍聴している市民からの抗議で中断されました。
 議会では「イスラエルの友人を助けるためにもICCに制裁を科すことを望む」(共和党のグラム上院議員)、「ICCの決定は間違った方向への一歩」(民主党のカーディン上院議員)などイスラエルを擁護する声が少なくありません。
 一方、民主党進歩派のサンダース上院議員は20日の声明で、ICCはウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領にも逮捕状を出していると指摘。「国際社会が国際法を順守することが不可欠だ」と強調し、逮捕状請求を歓迎しました。
 同党のオマル下院議員も20日、ICCの動きは「重要だ」とし、バイデン政権に
対して協力を求めました。(嶋田峰隆)

著名人権弁護士アマル・クルーニーさん 専門家パネルに参加
ICC・逮捕状請求 「正義もたらす歩」 
                       しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【ロンドンー時事】国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を購求したことに,関し、米俳優ジョージ・クルーニーさんの妻で弁護士のアマル・クルーニーさんは20日、請求を支持した専門家パネルに加わっていたと明らかにしました。4ヵ月以上前に主任検察官に要請され、参加したといいます。
 アマルさんは声明で「いかなる紛争も加害者に法が及ぱないということはあってはならない」と強調。逮捕状請求を「イスラエルとパレスチナでの残虐行為の犠害者に正義をもたらす歴史的一歩」と評価しました。
 パネルはアマルさんら複数の法律専門家で構成され、全会一致で請求に同意。国際法などを専門とするアマルさんは、これまでも人権や紛争を巡る多くの訴訟に携わってきました。



アイルランド、スペイン、ノルウェー パレスチナを国家承認
                        しんぶん赤旗 2024年5月23日
 【ベルリンー西本博美】欧州のアイルランド、スペイン、ノルウェーの3カ国は22日、パレスチナを28日付で国家として承認すると発表しました。これら3カ国は、昨年10月7日のイスラム組織ハマスの越境攻撃を批判しつつ、パレスチナ自治区ガザでイスラエルが続けている国際人道法違反を厳しく非難してきました。
 3力国の政府は、中東の永続的な平和と安定を実現しうる唯ーの政治的解決策はイスラエルとパレスチナの「2国家共存』だど指摘しました。
 3カ国による同時発表は、スペインのサンチェス首相が主導しました。1991年にはマドリードで、イスラエルとパレスチナの和平を目指す中東和平国際会議を主催しており、アラプ諸国とも深い関係を持ちます。連立与党の左派政党も、パレスチナ国家承認をかねてから主張していました。
 アイルランドのハリス首相は記者会見で、英国の植民地・占領下からアイルランドが民族自決と独立を勝ち取った歴史に触れながら、パレスチナの国家承認を表明しました。
 ノルウェーは、イスラエルとパレスチナの和平交渉を仲介し、1993年の「オスロ合意」につなげた経緯がありますが、この間、イスラエルの国連決議、国際人道法違反に対する批判を強めていました。
 今後もベルギーやスロベニアなど複数の欧州連合(EU)加盟国がパレスチナを国家承認する見通しを明らかにしています。

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