鍛冶俊樹の軍事ジャーナル(令和元年12月13日号)

告白 三島由紀夫未公開インタビュー

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 先月、講談社文庫で「告白 三島由紀夫未公開インタビュー」が発刊された。一昨年、講談社で単行本として刊行されたのが、文庫化されたのだ。文庫の魅力は何といっても、その手軽さにある。

 2年前に単行本を読んで非常な感銘を覚えたが、今月、海外出張に定価682円、240ページの薄めの文庫本を旅行鞄に忍ばせたおかげで、ホテルの夜を飲み歩くこともなく、片時も退屈する事無く過ごせた。

 

 三島は死の9カ月前である1970年2月に、英国人の翻訳家ジョン・ベスタ―と対談していた。その内容は録音されラジオで後日、放送される予定だったが、結局放送されず、録音テープがTBSの放送禁止テープの保管庫で発見されたのは2013年の事だった。

 ベスタ―は三島の自伝的エッセー「太陽と鉄」を英訳した経緯から対談に至ったが、対談ではベスタ―が聞き役に回り、三島は日本の現状を大いに憂いた見解を文化から政治に至るまで縦横無尽に展開している。

 

 その見解たるや、半世紀たった今に至るも少しも色褪せていない。当時の日本は高度経済成長期であったが、戦後の混乱から文化も政治も脱してはいなかった。三島は明らかに50年後の日本を予見していた。50年後も戦後の混乱から脱してはいないだろうと。

 三島は当時、民間軍事組織である楯の会を結成し自衛隊に接近していたが、そうした行動について「それをわかりたい人は『太陽と鉄』を読んでくれ。あれを読んでくれればわかるという気持ちですね」と述べている。

 

 その「太陽と鉄」は、本書では未公開インタビューの後に、いわば付録として収録されている。自伝的エッセーとは言いながら、かなり難解な文章でありインタビューにつられて、いきなり読んだら誰しも面食らうに違いない。

 本を読むに当たって小説や物語でない限り、必ずしもページの順を追って読まなければならない訳ではない。この「太陽と鉄」がまさにそれで、その最終章「エピローグ F104」から読むことをお勧めする。

 

 これは三島が航空自衛隊のジェット戦闘機F104に体験搭乗した時の追想記であるが、抽象的で難解な議論の果てに迷妄から脱して、秋の青空の中、天に吸い込まれて行くような明晰な結論に導かれている。

 間もなく年末年始の休暇に入る人も多いだろうが、本書を携えていれば有意義なひと時を過ごせること、請け合いである。

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000325407

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https://youtu.be/D3pJYsadZOI