軍事ジャーナル(7月30日号)

 先日、三島由紀夫研究会に出席した。そこで同会が三島の死後、三島の「文化防衛論」を出発点として研究を続けてきたことを知った。
 私は拙著「国防の常識」の第7章「文化防衛と文明の衝突」で、現代の戦争はハンチントンが1990年代半ばに指摘した「文明の衝突」に他ならず、三島由紀夫は1960年代に既にそれを予想していた旨を述べたが、そうした私にとって三島研の長い地道な研究の一端を知った事は収穫だった。
 三島は高度な教養を持った人物であり、特に文化防衛論は哲学的に凝縮されているが故に難解の観があるが、そこに散りばめられた片言隻句はときに予言的な響きで現代の我々に訴え掛けてくる。

 例えば今回のギリシャ危機についてだ。ギリシャがEUから離脱するのではないか、などという憶測が飛び交い、我々も散々振り回された。私は国民投票前に、欧州在住歴の長い知り合いに、これについて尋ねると、「ヨーロッパ文明の根源であるギリシャを欧州が手放す訳はない」と断言した。
 その後の経過を見れば果たしてその通りで、国民投票もユーロ圏首脳会議もギリシャ国会も、ギリシャ残留を暗黙の前提にした茶番劇だった。三島は文化防衛論の中で、このギリシャとヨーロッパの偽善的な関係について47年前に喝破している。
 「真のギリシア人のいないギリシアに残された廃墟は、ギリシア人にとっては、そこから自己の主体に再帰する何ものもない美の完結したものであって、ギリシアの廃墟からの文化の生命の連続性を感じうるのは、むしろヨーロッパ人の特権となっている。」

 現代を予言するかのような記述は他にもある。「私はテレヴィジョンでごく若い人たちと話した際、非武装平和を主張するその一人が、日本は非武装平和に徹して、侵入する外敵に対して一切抵抗せずに皆殺しにされてもよく、それによって世界史に平和憲法の理想が生かされればよいと主張するのをきいて、これがそのまま、戦時中の一億玉砕思想に直結することに興味を抱いた。」
 現在の安保法制反対を叫ぶ人たちにも、類似の発言をする人は多く見られるが、三島はこうした思想の中に文化の衰弱を見て取ったのであった。ちなみに三島は他の評論で当時の左翼学生運動が「かっこよくない」事を痛烈に批判している。三島は左翼の文化の無さにうんざりしていたのだ。

 さて24日、平和・安全法制推進の国民大行動に参加し、恥ずかしながら再びマイクを握った。後半、反対派のデモと遭遇したので、その様子も映っているが賛成派の整然とした動きと反対派の無秩序ぶりとは対照的である。
https://www.youtube.com/watch?v=i4PT33bQsC4
 小生の演説は中ほどだが、画像では短縮されている。12日の演説はほぼ全体が再生できるので視聴いただければ幸いである。
https://www.youtube.com/watch?v=B6l-isbs8Pc
 なお8月8日(土)、14時から孫子経営塾で中国の海洋進出問題について講演する。非会員でも下記から登録すれば聴講できる。奮って参加されたい。
http://sun-tzu.jp/