注文していた「がまへら紬14尺」の穂先がようやく届いた。
いくらへら釣りが好きといっても、ギター程も値段がする竿など欲しくても買えない、というか立ち位置的に買ってはいけないと自分でも思う。
かといって入門竿はとうに無理な体になってしまっている。
本当に困ったものだ、竿なんて何でもよかった頃、某オークションサイトで当時自分が使ってたものより2ランクぐらい上の竿が手の届く値段で出ていて、運良くそのまま落とすことができた。
ちなみにそれはこの「がまへら紬」ではなく「朱紋峰 攻」という竿。
今でも鮮明に覚えている、プチプチ梱包を破って袋から出し、握った瞬間何じゃこりゃ?質感が全然違う、しっとりとしていて手に馴染む、そして継いで一振りシュピンというキレのある音と同時にしなったばかりの穂先がピタリと止まる。
俺がこれまで使ってた竿はブヨンという感じ、振った後の穂先はだらしなく揺れる。
まだ釣り場にすら行ってないのに、あまりの衝撃に口を小さく丸く開けたまま立ち尽くしていた。
そして釣り場でもまた恐ろしいことが起こる、へら釣りに目覚めるきっかけとなった大佐沢公園でいつもどおり浅ダナウドンセットをきめていると、食いが良い日だったらしく雑なセッティングの自分にも良いアタリが沼から配給された。
かけた瞬間、ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ〜っと見たことも無いほど美しい曲線を描いたかと思うと、そのまま竿がへらぶなになった。
そう、竿の中にへらがいる、泳いでいる、そのぐらい動きが穂先から握りまで伝わってくる。
へらが一瞬動きを止めたので引いてみるとぐーんと楽に上がってきて、あっという間に仕留めてしまった。
マジ?たかが竿でこんなに違うの?明らかすぎてぺーぺーの俺でもわかる。
かなりヤバい世界に足を踏み入れてしまった、しかも別の日にもっとわかりやすい違いを知る。
気まぐれで前に使っていた安竿で釣っていると夏場の元気なへらということもあって、走られる度、アワセる度、ハリスをブチブチ切られまくっていた。
挙げ句の果てには切れた弾みで仕掛けが飛んできて竿に絡まってクラッシュ。
幸いなことに全く同じ仕掛けを巻いていた「朱紋峰 攻」を持ってきていたのでチェンジ。
釣りを再開し、へらをかけてあらびっくり、切れない。
全く同じ仕掛けで安竿はハリスが切れて、この竿だとマジで切れない。
魚が暴れすぎず良いところで止まる、こんなことがあるのか?良い竿って凄えと心の底から思った。
それ以来、同じランクぐらいの竿を某オークションで探しまわっては落とし、落とされ、ゆーっくりと集めてきた。
その中でも一番自分にしっくりきたのがこの「がまへら紬」。
がまへらの中では一番下なんだけど、そもそも全体的にがまへらは高いので一番下でもそこそこのお値段。
でも機能性は完全にお値段以上、使いやすい、パワーがある、かといって釣り味もある。
もう全部これにしたいというのが今の小さな夢、9尺と13尺はすでに入手、そして14尺もついに。
わくわくしながら継いでいってまた感動の瞬間を期待してヒュンと一振り。
音はともかく、なんだろう?味気ないというか、とにかく全然振ってて気持ち良くない。
試しに同じ紬の9尺と13尺を出してきて振ってみる、うん、これだ、やっぱり良い。
何度か比べていくとわかってきた、穂先だけがなぜか硬く全体のバランスをおかしくしている。
そういえば穂先の根本は塗装が剥がれていた、かなり安く手に入ったし使い込まれたものだからそんなもんだろうと思っていたが、もしかして。
もう一本別の14尺を出してきて、並べてみると嫌な予感は的中、長さが足りない。
おそらく穂先の根本が折れたかなんかして補修したものだろう、つまり穂詰めってやつか。
やられた、ノークレームノーリターンとはいえ、そんな記載無かったぞ、これは14尺じゃない、詐欺だ。
何より同じへら師にこんな腐った奴がいることにむちゃくちゃ腹が立った。
だが、文句つけて気が晴れるような性格でも無いので、しょうもない主人のもとからここへ来たコイツをどうにかしてやらねばと、穂先を探す。
紬はもうがまかつのサイトから消えているちょい型落ち、果たして見つかるかどうか。
なんとか発見したが、へら用品に限らずネット通販の型落ち品の在庫ありほど安心ならないものはない。
今使っているへらバッグも数々の店に騙されまくって結局新品在庫が存在しないことがわかってから、一年近く経ってようやくオークションで奇跡的に巡り会うことができた。
すると数日後、注文した釣具店から商品がメーカーから届いたら送るというメールがきた。
やった、あるぞあるぞと胸を撫で下ろした。
次の日、メーカーから届いた商品に破損があったためもう一度取り寄せておりますので誠に申し訳ありませんがもう少しお待ちください、というメールでまた不安の海に見えた小さな島が遠ざかっていった。
ものがあればそれでいいです、という意味の無いメールを返信など絶対に無い業務メールに送る。
次の次の日、商品を発送したというメール、やっと救われた。
それから2日経ち、朝から頭の中は穂先のことばかり、作業しながらも穂先穂先穂先穂先。
だって佐○急便のサイトに問い合わせたら、秋田営業所配達中というなんとも輝かしいフレーズが並んでいたのだから。
朝飯、昼飯、夕飯、あれ?まだかな、風呂掃除、「お湯はりをします、お風呂の栓はしましたか?」、おいまだか???
ピンポーン、きたーーーー、ボタンを押しあまりにも食い気味で返事したため、マイクのスタンバイが追いつかなかったようでインターホン越しの相手には聞こえていない模様。
もうめんどくさいのでさっさと玄関まで走っていく、遅くなってしまってすみませんと申し訳なさそうに言ってくる配達員、本当だよ遅えよと心で怒鳴った後、細長い段ボールを見た瞬間、急に無事届けてくれてありがとうという感謝が沸いてきた。
そして、早速中身を出し落札したものと廊下に並べて比較してみる。
5センチ、いやそれ以上の違いだ、また怒りが少しぶり返してきた、あんの野郎〜。
いやいや、そんなことよりやっとご対面じゃないか、本当のがまへら紬14尺と。
長かったなー本当に、興奮を抑えながら丁寧に一本一本継いでいき待ちに待ったその一振り、フワッと全体がしなやかに波打った。
ああ、これが君の本当の姿、美しいよ、メーカーさんはちゃんと設計してるんだなー、この5センチが埋まったことで竿の体感値段が5倍ぐらいに上がった、それほどに違う。
あー、手がかかったねー、可愛いねー、これからもー、よろしくねー。


ということで、ラジオが決まりました。

ABSラジオエキマイク
3/30(月)13:00〜16:50
(近野&千葉は14:00頃出演予定)
★10分程のスタジオ生演奏、トーク
是非聴いてくださいね。