著者は東京大学大学院博士課程を修了しており、現在明治大学の教授を勤めて
おられるようですが、
本書の構成の多くは松前健氏や筑紫申真氏などの先人の研究に負うところが
多いのは内容的にも文章表現の特徴からもあきらかですが、
本文中に両氏の名前が一度だけは出てきましたが、本書のほとんどは引用資料が示されていません。
巻末にも参考文献がまったく書かれておりませんでした。
学者として先人の研究の恩恵を受けながらも、それらの先行する研究、学者に対する敬意が
欠けているのではないかと思います。
また、他にも最近の日本神話の研究に関する本で溝口睦子さんの「アマテラスの誕生」
という本があるようですが、「アマテラスの誕生」は1962年2月に筑紫申真氏が
すでにまったく同じ題名の本を出しており、日本神話を学術的に研究しているものならば
知らないはずがないはずの名著であるにも関わらず、まったく同じ題名で出しているのは
一体どいういう理由からなのかすごく疑問に思います。
内容もレビューによると「本来の皇祖神は天照大御神ではなく、タカミムスヒだったという
驚きの事実を発表」みたいなことが、書いてありますが、
その件はすでに故松前健博士の研究によって、あきらかにされていることです。
最近の学者、研究者の姿勢に対し疑問を感じる一書となりました。