ムカムカぐるぐるチョコレート | 虹色金魚熱中症

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虹色金魚の管理人カラムが詩とお話をおいています。

拙いコトバたちですが読んでいただければ幸いです。

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グルッポ 『 作家志望さまのお部屋  』 の企画でつくったものです。


お題から起草される物語を1スレ(1000文字以内)でまとめるといった趣向。

注意 今回のお題は 『 バレンタイン 』
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ムカムカぐるぐるチョコレート

 

 
 「パ、ラ、シ、ユー、ト!」

 遠慮も無しに目一杯の歩幅で前へ出る。したり顔で奴を振り返った。夕日が世界を染めている。いつもと同じ帰り道。いつかと同じ帰り道。それでも変わった奴と私。
 (変わったのは私だけか)

 肩にかける鞄が重い。側に居ればいるほどにこんな想いは無駄だと知る。平然としたコイツの顔。いつだって、どんな時だって勝負に勝っても負けてもコイツはこうだ。
「じゃんけんぽん!」

「グリコ」

 たった三歩で私に追いつく。追い越す。腹立たしい。私だけが膨れて慌てて……どきどきして。

 奴がパー。右手がチョキ。
「チョコレート」

 呟きに足は進まず、鞄の中の乙女の箱がずしりと重さを増した。
「何ためてんだ。早く来いよ」

 ムカムカ、グズグズ、ズキズキ、グルグル。

「ち、よ、こ……」
 一歩一歩で奴の目の前に居る考えなしの私。考えるな私。
「くそくらえ!」

 神業的速さで鞄から爆弾を取り出し、奴の胸に押し付けた。キュッと目を瞑る。反応無し。馬鹿な私。冗談にすべし。
 いつもみたいにヘラリと笑って見上げて唖然。夕日よりも染まった奴が口を押さえて、もごもごと嘘みたいに目を泳がせながら、ありがとうと小さく言った。

 
  

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