夜のピクニック | 明日こそスキップ

明日こそスキップ

独断と偏見の読書感想とひとりごとを書いてます

 

 

あの一夜に起きた出来事は

紛れもない奇跡だった、とあたしは思う

夜を徹して八十キロを歩きとおす

高校生活最後の一大イベント「歩行祭」

三年間わだかまっていた想いを清算すべく

あたしは一つの賭けを胸に秘め当日を迎えた

去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労

気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る・・・

ノスタルジーの魔術師が贈る、永遠普遍の青春小説

   (あらすじより・・・)

 

「蜜蜂と遠雷」を読んだあと

他の恩田作品を・・・と思い図書館で探しましたが

ブロ友さんにすすめていただいた作品は

ほぼ書庫に入ってて微妙に借りにくく

一番読みたい「光の帝国」はなぜか蔵書にないらしく

そのうちリクエストするか買うかしようと思ってました・・・

そもそも恩田作品が最近場所移動したらしく

たくさんあるはずなのに見つけることもできず・・・

(館員に声掛けてまで見つけようとは思わず・・笑)

しかし、今月は吉川英治文学賞特設コーナーがあって

そこに並んでたのがこの作品・・・

確か某ブロ友さんが

「名作だと言われているけど良さがわからない」

と仰ってたような気もしますが(笑)

 

お話は主人公が通う高校の伝統行事「歩行祭」での出来事

この歩行祭・・・全校生徒が夜を徹して歩くイベントで

途中の休憩と仮眠の二時間を除いてずっと歩きっぱなし!

すごい設定だなあ・・・今は親からのクレームとかありそうだし

何か事故があってもいけないからできないのでは?

と思いながら読んでましたが

読み終えてから検索してみたら

作者の恩田さんの母校の行事がモデルになってるとか・・・

どうりで道中の生徒の気持ちの描写が

やたら真に迫ってると思いました・・・

「蜜蜂と遠雷」を書くまでに何回もモデルになった音楽祭に

作者が足を運んで取材したお話を聞いたことがあったので

この歩行祭の設定を考えた後

ひょっとしてご自分で歩いてみたのかな?と

ちょっと思いながら読んでたのですが(笑)

 

主人公は同じクラスにいる異母兄弟の

女子生徒と男子生徒・・・

男子生徒の亡くなった父親が

浮気してできたのが女子生徒・・・

お互いにわだかまりがあって

気になる存在ではあるけれど

話もせず近づかないようにしている・・・

高校生活最後の歩行祭で何かが変わるのか?

 

歩行祭の始まりから順を追って話が進むので

最初は元気だった生徒たちも

だんだん疲れていきます・・・

ちょうど私も今、足のトラブルを抱えてて

あんまり歩きたくないので

共感しやすかったのかもしれないけれど

なんだか一緒に長時間歩き続けてるような気分で・・・

 

自分に余裕があるときは

感情を抑えたりごまかしたりできるけど

体力、気力がなくなってくると

人の想いっていつも思っていることより

シンプルになっていくのかもしれませんね?

そのシンプルな思いと非日常のイベントが

日常では起きなかったかもしれない一連のできごとを

引き起こしたのかもしれない・・・

主人公たちが卒業して社会に出ても

こういった気力、体力を振り絞ったイベントは

ずっと心に残るんだろうなと思いつつ

ちょっと自分の高校時代を思い出してしまいました・・・

 

同じクラスにいる異母兄弟の

関係性が変わっていく話としてなら

歩行祭を使う必然性は

ひょっとしたらなかったかもだけれど

歩行祭が加わることによって

なんだか深みを増したような感じがして

良かったと思います・・・

 

10年以上前に多部未華子さんで映画化されてるようで

YOU TUBEでも見れそうなので

またそのうちに・・・と思ってます!