(再掲)狂躁亭払暁通信・剛腕プーチンでもどうにもならず1803080500 | おととひの世界

おととひの世界

リンクも始めましたよ

  『  通常の文明発達の段階を
    経ることなく原始野蛮状態から
    いきなりデカダンの域に達した
       世界でも唯一の場所 』

ポアンカレ?クレマンソー?
20世紀フランスの文人政治家が

『ラスベガス』を見て
そう言ったというんだよね
面白いこと言うよね
実は似たような感想

ロシアの新造都市
サンクトペテルブルグに関して
言ってる人がいた

徳川家康が
江戸幕府を置いたのは1603年でしょ?
1600年が天下分け目の関ヶ原
鎌倉に幕府はあったけれども
そこから北の関東地方は
ほとんどは未開の地域で

平将門が暴れまわっていた時代は
沼沢地がほとんどだった
太田道灌が来て江戸城の原型を作り
そして後北条氏が開発して

その後にやっと家康が来たわけだよね
しかしサンクトペテルブルグ
イタリアのベネチアと一緒で
もともと沼沢地だったところ

ベネチアだって
たくさん木の杭を打って
土砂を敷き詰めて
後から作った埋立地でしょ

ペテルブルグはスウェーデンとの
北方戦争の最中に開発されているんで
1700年代前半ですよ

随分新しい町だよ
江戸東京よりも100年以上若い

ともかくロシアを
西ヨーロッパ並みに引き上げよう
としていたのが
ピョートル大帝で

お忍びで西洋視察をやって
オランダで船大工修行までして
イギリスでニュートンに直接ついたか
どうかわからないけど

かのアイザック・ニュートンに
褒められたというんだよね
その道つまり学者になれば
それなりの人間になっただろうと

頭がいい人だったんだね
理系には大変強いけれども
文系はからっきしダメで

ヨーロッパ貴族からほとんど
野蛮人のように見られていたという
ピョートル大帝

ロシアに戻ってみると
今まで見慣れていた
ロシア貴族のナリがとても
むさ苦しくて見苦しい

髪も髭もボーボーに伸ばしている
特にとんがりヒゲを腰まで伸ばしている
というのがいかにも
前文明人的でむさ苦しい

なんとかせんといかん
そう思ったピョートル大帝

『ヒゲ禁止令』を出した

しかし貴族は先祖代々の
大切な伝統だと言って断固抵抗した

そこでピョートル
髭の長さ測って重税をかけた
貴族は貴族で税を払ってでも
ヒゲは切らないと抵抗した

これがピョートル大帝の
『ヒゲ税』というやつ
今だったら肥満体に税金をかけるとか
もありかもしれないよね

贅肉1キロにつきいくらとかさ
肝心なことはロシアって国
20世紀に入ってもこの状態だった
ってことですよ

ピョートルは
『サンクトペテルブルク』という
全く西欧風のフランス趣味の町を作った
モスクワを急に変えることができない
だから西への玄関口として
もうひとつの首都を作ったわけ

サンクトペテルブルグ
公用語はフランス語だった
明治維新後の日本でも
そこまではやらなかったよ
鹿鳴館ぐらいは作ったけど

ディズニーランドみたいなもの作って
いきなり都にしてしまうような話

強引にカタチから入らないと
いつまでたっても変わらない
という焦りが

ピョートル大帝にはあったんだろうね
そのくらい西ヨーロッパとロシア
圧倒的な『常識の差』があった

ミシェル・フーコー『監獄の誕生』
西ヨーロッパ近代における
監獄と学校

実は起源が同じものだと
と言うか目的が同じなんだと
監獄は何のためにあるか?
罰としてひどい目に合わせるためか?

そうではなくて
社会規範に従わない者に
社会規範を強制的に注入する
ためにあるのが

ヨーロッパ近代の監獄
実は学校も同じ機能がある
日本人は学校を勉強するところだ
と思っているがそうではない

毎日同じ時刻に皆が同じ場所に行って
同じことをやる
それを叩き込むためだ

それまでの人類は
バラバラの時間を

固有の時間を持って
固有の時間の中に生きていた
それでは困るんだ

産業革命後の工場労働達者として失格
工業化時代の時間とは
時計が決める時間だ

時計に従って生きること
それが何よりもまず大事なことだ
それまでのヨーロッパ人は
そうではなかった

みんな身勝手に
腹時計に従って生きてる人達だったから
ワットの蒸気機関ができていきなり
産業革命が起きたわけじゃない

そういう長い助走期間
再教育期間がないと

産業化はできないんだよ
そのためにあるのが監獄であり
学校であって
そして近代軍隊なんで

だからナポレオン戦争というのは
ヨーロッパにとって必要だったんだよね
あれは全員参加戦争だったでしょ?

フランス革命が起きた
近代フランス革命軍ができた
初めてできた市民の軍隊だ

それまで戦争は
プロの貴族軍人がやるものと決まっていた
しかし革命フランス軍は
圧倒的多数が雑兵

田舎からいきなり
パリに出てきた
『もと百姓』がほとんど

革命に警戒した周辺諸国
あんな軍隊で戦争なんか
できるはずがないと考えた

ところが『ヴァルミーの戦い』
そのフランス雑兵軍隊
貴族の軍隊を打ち破った

政治家でもあったゲーテが
これを観戦していた

『この日世界の歴史が変わった』
そう記しているがその通り

その後ナポレオンが現れた
周辺諸国はほとんどが征服されてしまった
負けるはずがない百姓の軍隊に
踏み潰されたんだ

全ヨーロッパが軍隊を
作り直さなければならなくなった
そのためには根底から
国民の性根を叩き直す必要があった

どこの国もフランスを真似た
初等教育機関と監獄を作った
こうして初めて西ヨーロッパ市民全体が

『時計の時間』に従って生きる
『近代市民』になったんだ

ところが例外があった
スペインとロシアだ
どちらも産業革命は起きなかった
スペインはナポレオンに
最も抵抗した国の一つだ

ナポレオンに抵抗した市民は
『ゲリーリヤ』と呼ばれた
これが『ゲリラ』の語源だよね

しかしナポレオンが去ってみれば
その後はまたのんびりした
スペインの普通の暮らしが戻った

元々新大陸から
大量に金銀を持ち帰っている国だ
そんなにあくせく働かなくても
喰っていけた

ロシアは焦土作戦で
フランスと戦ったけれど
ヒトラーの時みたいに
数千万人が死んだわけではない

『戦争と平和』を読んでみる
あるいは映画みてみればわかるけど

見学者がたくさんいるくらいの
のんびりした戦争だ
まだそういう時代だよ

ナポレオンが去ってみれば
スペイン同様に

またのんびりしたロシアに戻ってしまった
産業革命などやって

あくせく変わる必要がない国だ
なにせ国土が馬鹿でかいし
のんびりゆっくり農業でもやってれば
普通に食える国だからね

アメリカと旧ソ連
そしてあえて言えば

明治維新以後の特に

大久保利通独裁時代の日本
大久保利通のヒゲ

四年近くにわたる西ヨーロッパ視察
そして関税自主権回復交渉にあたり

大久保利通は二人の人物を
手本にすることに決めた

エイブラハム・リンカーンと
ウィルヘルム・ビスマルク

大久保利通の特徴的な髭は
ビスマルクのカイゼル髭と
リンカーンの髭を一緒にしたもの

リンカーンとビスマルク
工業化にあたり国民を統一するため
あえて内戦を厭わなかった

抵抗勢力を一掃するためだけではない
やるかやられるかの内戦になった場合
国論全体を統一しなければならない
強制されるわけだよね

初めて国家全体が軍隊化した
実はそれ自体が目的だった
工業化社会に作り直すために
絶対に戦争が必要だった

貴族中心の大地主社会
アメリカでも南部はすでにそうなっていた
地主中心の農業社会カルチャーを
否定するための儀式が
『戦争』だったんだ

大久保利通が目指したものはそれだった

西郷隆盛のところで
あんなことが起きなくても
いずれ内戦は避けられなかった
西郷隆盛の征韓論

目的はそれだったのかもしれない
それを外国でやるか?
それとも国内でやるか?
の違いだけだったのかもしれない

明治維新だけでは近代化はできなかった
西南戦争があって初めて
日本は近代化に成功したんだ

フランスと戦う前
バイエルンオーストリアと戦った
ビスマルクのプロイセン

そして100万人以上の
おびただしい死者を出し
国内に大きな傷を作ってでも
『南北戦争』を断行したリンカーン

農業国が工業国に変わる時
絶対に必要なことなんだよね
その意味でビスマルクとリンカーンと
大久保利通は

極めて近いところにいる人
そしてロシアでそれにあたる人こそ
実は『ヨシフ・スターリン』だったんだね

近代化には『監獄』が必要なんですよ
スターリンは国家全体を
『監獄』にしたんだよね

ノーベル賞作家
ソルジェニーツィンが告発したところの
『収容所列島』です
どうにかこうにか形だけは工業化した

スターリンの役回りは
キャラクターこと違うけれど

アメリカにおいてリンカーンが
ドイツにおいてビスマルクが
日本において大久保利通が
やったことと同じこと

おそらく人類史上かつてない超独裁
それだけやってもロシア人って
まだああなわけ

以前ロシア人の美少女デュオ
日本の歌謡番組に出てきてすっぽかしてた
テレ朝の『ミュージックステーション』?
司会のタモリが激怒してたって話

あれがロシア人なんですよ
悪気があってすっぽかすんじゃないんだ
元々彼らの中に

『パンクチュアル・時計時間を守る』という
カルチャーそのものがないんだよ
スターリンがあれだけやっても
それは注入できなかったんだ

傍目にはどうしようもなく
怠惰でのんびり屋だ
見方によってはおおらかでいいところ
しかしビジネスの相手としては
ちょっと困るよね

それがロシア流なんだ
オーストラリア人も似たところがあるが
もうちょっとパンクチュアルだよ

なんだかんだ言って
未だ巨大農業国だ
アメリカを上回る農業輸出国に
なるだろうと考えられている

現在レアメタルというと
中国の独壇場だけど

ロシアのコラ半島付近の
レアメタルを開発するだけで
世界全体がまかなえるくらいの
巨大埋蔵量だと言う

そして名にしおう
石油と天然ガスの産出国だ
サウジアラビアに優に匹敵する
アメリカのシェールガスは
地下水をガンガンぶち込んで
無理をしているわけだけど

そんなことしなくても出てくる

基本的にロシアは
ガツガツしなくても食っていける国だ

しかしプーチンは
それでは困ると考えている
いつまでたっても近代化が完成しない
ロシア人はのんびり屋のままだ

『通常の文明の段階を経ること』なく
『工業化をやった』からだ

スターリンがあれだけ鞭打っても
結局ロシア人は変わらなかった
おそらくこれからもそうだろう

ロシアの自然人口減は
凄まじい勢いだ

日本のそれどころじゃないよ
毎年80万人の人口が減っている
今のまま推移すると2000年代
21世紀の半ばには

ロシア人人口
3000万人自然減少は避けられない
これでもかなり控えめな予測と

ヒトラーとのあれだけの
血みどろの戦いで失われた人口
以上の人口が減る
確実にそうなる

しかし産めよ増やせよ政策は
近代化には反する

今更中国ですら
恥ずかしいような政策が
ロシアでできるだろうか?

その結果ロシアの競争力は落ちる一方
今や韓国より下の世界第12位だ
これを引き上げる方法は

豪腕プーチンをもってしても
もはやどうにもならない
1代2代で変わらない国

それがロシアなんだよね