今回は「若い」と言われている2人の指揮による演奏会であったのですが、よくよく考えてみると自分は2人の指揮者の歳までには、色々なオーケストラを振ったり、オペラの副指揮者をしたり、指揮をした時に起こる色々な経験もしました。中でも新曲を振っている時に練習不足だったこともあったせいか、同じパートで同じものを弾くべきところで、それぞれのメンバーがそれぞれ違うところで弾きだしてしまい、ばらばらになったまま最後まで行ったことがそういえばあったな~と思い出しました。懐かしい経験です…さて、今回はもちろん初顔合わせの時には指揮者も相当緊張していて、頭の中が真っ白だったんだろうなと思います。しかし、回を重ねるごとにしっかりオーケストラの音を把握しながら、指揮をすることができ、演奏会では、例え何か自分の中やオケの側に起こったとしても、遜色なく指揮をすることが出来ていたのではないかと思います。オーケストラのメンバーも自分たちでアンサンブルを取らなければいけないという事で、むしろいつもより緊張感のある演奏になったのを感じました。もちろん遅いテンポの時に音楽をドライブする時やとっさの反応に反応しなければいけない瞬間を逃していたことはありましたが、オーケストラはそれをカバーしてしっかりとアンサンブルを取っていたように感じました。

 

よく年齢を重ねていれば熟練されていて良い、若いから未熟と単純に考えてしまう傾向が見られますが、若い人にはエネルギーがあります。例えば若い時戦前のカラヤンのマイスタージンガーの映像を見ると、とてつもなくエネルギーがほとばしっていますし、同様に若きアバドのダフニスとクロエ、若きチェリビダッケのエグモントの映像などを見ると、見ている方まで汗をかきそうになるぐらいの演奏です。また、タングルウットで指揮をしたアバドや小澤先生の映像なども若いけど、バーンスタインのもとでしっかりと指揮をされていました。指揮者にもその時期に相応しいスタンスというものがあるように思います。熟練度だけで何かを評価するのは、一面的すぎるし、オーケストラが様々な年齢層の指揮者と邂逅する時に、熟練度だけを求めるのもまた一面的すぎる様に思います。

 

最近ではオーケストラの側からのコミュニケーションというのもよくみられると思います。指揮者側からだけの一方的な上意下達のような感じの関係というのは、最近は望まれていない様に思います。オケ側の成熟度というのも求められているように感じました。

 

時代もどんどん変化し価値観も多様化しているので、我々もいろいろな局面に対応しつつ、温故知新ではないけれど、古くからのもので大事にすべきは大事にして、新しい事にもチャレンジしていきたいですね。