鈴木康広さんのことを知ったのはもう何年も前のこと。
今はもう閉館してしまったけれど
品川にあった原美術館の壁にちいさな穴が空いていた。
それは「募金箱『泉』」という名前のついた鈴木さんの作品だった。
穴に小銭を入れて中を覗くと
ぽちょんという音と同時にゆらゆらゆれる水面や
木漏れ日の景色が映し出されるという仕組みになっていて、
そのちいさな世界にすっかり心を奪われたわたしは
美術館に行くたびに五円玉や十円玉を穴に入れてはうっとりしていた。
そんな大好きな鈴木康広さんの作品展が9/1まで二子玉川で
開催されていると知り、
胸を躍らせながら会場に向かったのでありました。
大切にしている作品集の写真でしか見たことがなかった作品たち。
実物を前にして興奮が抑えられないわたし。
りんごの表面のちいさなぶつぶつが星座みたいに見えることから
生まれた作品「りんごの天体観測」や、
はじめからかじられた跡がある「気配のクッキー」、
「ここ/そこ」って名前がついたゴム印は、
背の部分に記された「ここ」って文字を見ながらハンコを押すと
「そこ」の文字が現れる。
大きな足の形のオブジェのそばで写真を撮っていたら
「なにしてるのー?」
とちいさな男の子に声をかけられた。
「ぼくのスマホの中にある写真みる?」
と、家で育てているおたまじゃくしの写真を見せてくれた。
会場の中でこんな出会いが生まれるのも
なんだか鈴木さんが仕掛けた魔法のような気がしてしまう。
何か記念になるものを、
とグッズコーナーでポストカードや絵本を見ていたら
近くにこじんまりとした機械のようなものを見つけた。
「小さな発見機」という名前のその箱は、
百円玉を4つ入れると今日の日付と時間とスケッチが入った
ちいさな切符が出てくるらしい。
駅の券売機で「発券します」というアナウンスを
「発見します」と聞き間違えたことから着想したんだって!
そういえば、
この展覧会には「ただ今 発見しています」という
タイトルがついている。
この場所で、今日、この時間、
どれぐらいたくさんの発見があっただろう。
発見機から出てきた
日付と時間が記されたちいさな切符を眺めながら
ほっこりした満足感を胸に帰途に着いたのでありました。
*今日の出演者*
壁の穴にコインを入れるのを見つめる怪獣ビリー。
「ここ/そこ」のハンコを押したけど「そこ」を見つけられない段ボールのワニくん。
魔法にかかってほんわかムードのポンキーくん。
作品集とちいさな切符と会場で目を描いた葉っぱ、そして段ボールのカラーコーン。
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