■契約形態の違いを把握して、トラブルを回避しよう 

住み替え先を探す場合には、契約形態の違いも押さえておきたいものです。シニア期の住み替えには、「賃貸借契約」や所有権を得るもののほか、「利用権契約」という特殊なものもあります。契約形態によっては、事業者の都合で退去を追われる場合があります。終生住み続けるつもりで転居したのであれば、精神的なストレスも計り知れないものになります。自宅を売却して住み替えたのであれば、戻りたくても戻る場所がないことになってしまいます。その後の資金計画に影響を与えることもありますから、契約形態の違いをしっかり把握しておくことが大切です。 

★最も一般的な「賃貸借契約」 

まず、よく知られている賃貸借契約から説明しましょう。これは一定の契約期間を定め、家賃を払って住まいを借りるものとなります。入居時に敷金や礼金などがいりますが、賃料の数ヶ月分程度で済む場合が多いので、手軽に住み替えらえるのが利点です。契約満了後も住み続けたい場合は、契約更新でこれらの賃貸住宅では高齢を理由に入居を断られることはありません。賃貸借契約のなかには、定期借家契約もあります。これは契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、賃貸借契約が終了するものです。 

★借家権の相続ができない「終身建物賃貸借契約」 

また、終身建物賃貸借契約という特殊な契約もあります。これは通常の賃貸借契約とは異なり、借家人が生きているかぎり契約が継続し、死亡した時点で終了するというものです。入居者には契約更新の不安がなく、礼金や更新料も不要というメリットがあります。ただし、契約は借家人が死亡した時点で終了するため、借家権を相続することはできません。この契約形態をとるには事業者が都道府県の認可を得る必要があります。事業者の資本力や事業遂行能力などが問われるとともに、高齢者の身体機能に対応した設備を備え、前払い家賃の保全義務などの要件を満たしていなければなりません。認可のハードルが高いこともあり、この契約形態をとっている住宅はきわめて少ないのが現状です。 

★改修、売却、賃貸が可能な「所有権契約」 

次に、所有権契約をみていきましょう。これは所定の金額を払って分譲マンションなどを購入し、自分のものにする契約です。所有する権利を得るわけですから、部屋の改修や売却、賃貸が自由にできます。もちろん子どもに相続することも可能です。最近はシニア向けに開発された分譲マンションへの人気が高まっています。建物内がバリアフリーとなっているだけでなく、レストランや大浴場などを併設したり、緊急時に駆け付けられる職員を常駐させたりするなど、歳をとっても暮らしやすい設備(サービス)が備わっています。ただ、共有スペースが多くなる分、一般の分譲マンションよりも費用は割高となります。月々の管理費も通常よりも高めとなっているところが多いようです。分譲マンションですから、修繕積立金や固定資産税の支払いも必要となります。自由な暮らしができるとあって、シニア向け文章マンションを希望する人は増えていますが、介護が必要になったときにどの程度まで住み続けられるかという課題があります。自宅となるわけですから、要介護認定を受けたら、訪問介護などの事業者と契約してサービスを利用します。軽度のうちはそれでも大丈夫でしょうが、寝たきりなど重度となったり、認知症が進行したりすると、その時点で介護施設に住み替える必要性が生じてくるかもしれません。同居の家族がいなければ、なおさらです。途中で介護施設を探す覚悟を持っておいたほうがよいでしょう。また、売却しないかぎり、月々の管理や固定資産税は払い続けなければなりません。子どもに相続したとしても、それらを負担できるかどうかも検討しておく必要があります。たとえ売却するにしても、思うような値段で売れるとはかぎりません。こうした点も頭に入れておくとよいでしょう。 

★有料老人ホームに特有の「利用権契約」 

利用権契約は、有料老人ホームに特有の契約形態です。入居時に一時金を払うことで、居室や共用設備、ホームが提供するサービスを利用する権利を得るものです。一代限りで、他人に譲渡できないのが特徴です。最近は、一時金を必要としない有料老人ホームもありますが、その分は月々の利用料のなかに含まれており、契約形態は同じです。利用権契約で注意したいのは、賃貸借契約のように法律で住み手の権利が保証されているものではないという点です。事業者との契約によるものなので、契約内容によっては事業者の都合で退去させられることもあります。一例として、認知症が重度化して他者との共同生活が困難になった場合に退去を迫るホームがあります。契約時には退去要件などをしっかり確認することが求められます。また、事業者が倒産した場合に住み続けられるとはかぎりません。借家権や所有権のように入居者が保護されているわけではないのです。シニア向け住宅を探す人のなかには、同じくらいの費用ならば、一代限りの利用で終わる有料老人ホームよりも、子どもに相続できるシニア向け分譲マンションのほうがよいという人がいます。ただ、介護が必要になったときに違いが出てくるので、よくよく注意して選んでもらいたいと思います。前述したように、分譲マンションでは要介護度が重度化した場合などに、介護施設に住み替える必要が出てくるかもしれません。その点、介護付有料老人ホーム(特定施設)の場合だと、介護が必要になってもホームが介護サービスを提供するようになっていますので、たとえ重度化しても住み続けることができます。退去要件に留意する必要はあるにせよ、こうした点も踏まえて比較検討するとよいでしょう。 

 

 

 

 

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