ワルイコ達に楽器を持たせよう!という妄想より生まれた、あのお話



バスクラ担当・殿崎氏が紅直の恋路のため、一肌脱いじゃいます。

…ので、今回は迷走回です(笑)





≪注意!≫


・長文です。

・殿崎先輩の口調がアレンジしてあります。

・キャラ崩壊警報発令中!

・ねつ造オンパレード。

 



ご容赦いただける方のみ、スクロールをお願いしますm(u_u)m







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吹奏楽部妄想『オレの孤独な奮闘記』




(ああ…、朝からついていない)


紅鬼様の恋人と接触したがために、

俺は朝から尋問を受けてしまった。



やっと終わって空き部屋を出ると、

紅鬼様の副担任の女教師がやってきた。

どうやら文化祭のクラス合唱について、昼休みに相談したいらしい。


「……紅城さんも、大変ですね」

「まあ伴奏役ですから。仕方ありませんね」


微かに表情を曇らせ、紅鬼様は去っていく。

女性と二人きりになるのを、あまり好まないらしい。

刃物女といい、あのお方は女難が多いからな…。




(…はっ!!!これはまさか、香坂に憑く悪霊の仕業では!?)



一年生の頃から、なぜか香坂と親交を深めようとすると、

鋭利な視線を感じてきた。

友達になろうとしている人間に対してもそうなのだから、
恋人になろうとする人間に対する執念は、もっとすごいはず。


加えて紅鬼様は、かねてから友達のいない香坂を心配し、

見守ってこられたからな。

悪霊のやつも、面白くなかったのだろう。



さっきは放置してやろうという、薄情な念を抱いたが…。

鬼とはいえここまで俺を育ててくださった方のため、

そしてこの天才の友達一号の恋路のためにも、

この俺がなんとかせねば!!!



こうして俺は、香坂にお祓いを勧める事にした。








「…えっ。お祓い…?」



昼休みの第二音楽室。


華奢な身体に似合わぬでかい弁当箱を手に、

香坂は不思議そうにこちらを見る。



「そうだ。前から言おうと思っていたのだが。

 …おそらくお前には、よからぬ霊が憑いている」

「れ、霊…!?」


驚く気持ちはよくわかる。だがこれは本人が自覚し、

何がなんでも徐霊したいと思わなければ、

悪霊も離れていかぬだろう。



「お前にはすまない事をしたと思っているが…。

 一年の頃からお前と仲良くすると、

 必ず背中に視線が突き刺さってな。

 それが怖くて、アドレス交換にも及び腰になってしまったのだ」


「一年の頃から…か。殿崎が謝る事はないよ。

 でもそれって、誰かが見ていたんじゃ…」

「それが、振り返っても誰もおらんのだ。

 これが霊ではなくてなんだというのだ?」

俺が一生懸命説明しても、香坂は怪訝な顔をしている。



そして少しうーんと考えたあと、

「…やっぱり、俺は霊のせいじゃないと思う」

きっぱりと言い切った。


「なぜわからない!

 お前、真夏の徐霊スペシャル見なかったのか!?

 霊は本当に存在するのだぞっ」

「霊を否定しているわけじゃないけど…。

 殿崎を見ていたのは、霊じゃないと思う。たぶん」

たぶん…だと?

なぜそんな不確かな状態で断言できるのだ。



「お前いいのか?

 紅城さんの女難も、きっと悪霊のしわざだぞ。

 お前からしたら紅城さんとは、

 まだ短い付き合いかもしれないがな。あのお方は、

 お前が一年生の頃から心配されて、見守ってこられたのだ。

 これ以上紅城さんに災いが降りかかっても、

 お前は平気だというのか?」

これはお前だけの問題ではないと、訴えるが。



「紅城先輩は部員想いな人だし感謝してるけど…。

 あの人の女難は、霊とは関係ないよ」

「なんだと!?お前はそんな、薄情者だったのかッ」

「そうじゃないけど……」


「『けど』、『けど』とは煮え切らんやつだ!

 お前はツンデレ男でも目指しているのか?ええッ!?」
「別に目指してなんかいないけど…」

俺はやや呆れ顔の香坂に、呆れ返してやった。

紅鬼様は今年の合宿のとき自分は男に興味はないと、

仰っていたが……。それがはったりであれ事実であれ、

香坂が一年の頃から無意識に気になっていたのでは?

…と、俺は推測している。


それなのにこの態度とは。香坂は冷酷過ぎる。

これではあまりにも、紅鬼様が報われないではないか。




不本意ではあるが、他の切り口で説得してみよう。

「お前に友達が少なかったのも、きっと悪霊がいたからだ。

 悪霊さえいなくなれば、お前にも友達が増えるかもしれん」


香坂だって、ずっとひとりで寂しかったはず。

そう思いながら香坂の反応を窺うと……。



「もし友達が少ないのが霊のしわざだったとしても…。

 俺は今の状況に満足しているから。お祓いは必要ないよ」

「満足…だと?」

ずっとひとりきりだったやつの、意外な言葉に驚く。



「もし今まで大勢の友達に囲まれて生きてきたら、

 俺はきっと、今ほど友達を大切に思えなかったかもしれない。

 今までひとりだったからこそ、

 自分を想ってくれる友達に感謝出来ているんだ」

「…お前は、それでいいのか?

 お前は…悪霊と共に生きていくというのか」


悪霊のせいで、この先も友達が少ないかもしれないのに。



「だから悪霊じゃないって、たぶん。

でも殿崎が心配してくれた事は…感謝してる。

 昨日、俺の事を友達だと言ってくれた事も…嬉しかった。

 本当にありがとう、殿崎…」

「香坂……」

誰かからこんな形で感謝されるのは、

こんなに嬉しいものなんだな。



そして俺も何か言わねば、と口を開きかけたとき。




「…いつまでそこにいるんですか。

 もう…話終わりましたから。入ってください」

香坂が誰もいない第二音楽室の入口の方を見て、

声を掛けると……。


「おや。気づいていたのですか」

「ええッ。紅城さん…!?」

なんと俺らの死角となる場所から、紅鬼様が現れた。


なんだ!?香坂は実はエスパーだったのか?

エスパーなのに悪霊は信じないとは、おかしな男だ。



「先輩…用事は終わったんですか?」

香坂がそう尋ねると、

紅鬼様は「ああ、用事は…」と前置きしたあと、

「さぼっちゃいました☆」

と、俗に言う『てへぺろ』のポーズをしてみせた。



(か……っ、可愛くない!!!)


紅城さんが紅鬼様にしか見えない俺には、

戦慄さえ覚えさせられる。

香坂もウラの顔を知っているのか、

冷やかな眼差しで紅鬼様を眺めていた。


これが漫画の世界であれば、

きっと背景に吹雪が描かれているに違いない。



「…というのは冗談で。午前中の休み時間に担任と話して、

 用事を終わらせたんです。

 でも僕……どうやらお邪魔だったようですねえ」
「ひ……っ!!!」
じとりとした眼差しに、冷や汗が出る。



そんな俺の横を通り抜け、

香坂は紅鬼様の前に立ち、そっと手を取る。

「邪魔なわけ、ないだろ?

 俺…アンタとはもう夕方まで逢えないと思ってたから。

 アンタが逢いに来てくれて…嬉しい」
「…そうですか」

香坂に擦り寄られて、紅鬼様もまんざらではないようだ。


「あと、先輩が作ってくれたお弁当…美味しかったです。

 ありがとうございます」

「おっお前…!紅城さんに作らせておるのか!?」

あの大きい弁当箱は、紅城さんの物だったらしい。

紅鬼様に作らせるとは、恐ろしいやつだ。



「紅城先輩、料理が上手いんだ。

 野菜の入ったオムレツなんて…すごいだろ?

 …でもこれは俺のだから、食べさせてあげない」

「ふふっ。今度殿崎くんにも作ってあげましょうか」

香坂の惚気ぶりに、紅鬼様も機嫌を良くされたようだ。


「いえっ!紅城さんのお手間になりますから。

 では、失礼します」

紅鬼様がご機嫌なうちにと思い、足早に撤退した。





(香坂のやつが惚気るのは意外だったが…。

 俺が咎められぬよう、気遣ってくれたのだな)



部活動の時間になった頃、香坂に礼を言う。

「ああ…さっきの?

 あの人に逢えて嬉しかったのは本当だから。

 殿崎は気にしないで」

「ああ…すまない」


ここでも気遣ってくれた友達一号だが、

意外にも紅鬼様のほうが尽くしているようだから、

香坂も満更ではないのかもしれない。



「それにしてもお前が紅城さんに気づいたのは驚いた。

 お前、もしやエスパーではあるまいな?」
俺がこっそり質問すると、香坂は呆れ顔で俺を見遣る。


「悪霊とかエスパーとか…今日の殿崎、大丈夫?

 …付き合い始めてからわかるようになったんだけど。

 紅城先輩、俺の事をよく見てるんだよ」

「…そんなによく見ていらっしゃるのか?紅城さん」

俺が聞き返すと、香坂はこくりと頷く。


「三年生の教室って、校庭に面してるだろ?

 この前も体育の授業でマラソン中に立ち止まった時、

 息が上がってはあはあしてたら視線を感じて…。

 まさかと思ってあの人の教室を見たら、

 窓際の席からこっちを見てたんだ。

 手を抜いたら怒られると思って、その後必死に走ったよ」


「そこは、お前に対しても厳しいのだな」

ただ甘やかしているものだと思っていたが、

やはりそこは鬼になっているようだ。



「たぶん今日も、

 南校舎の廊下から俺達の事を発見したんだと思う。

 視力がいいわけじゃないのに、すごいよな」

「成績もトップだからな。羨ましい」



俺が相槌を打ったとき、

音楽準備室に、むくれ顔の音無が入ってきた。


「あーーーーっ!

 二人で話してるなんて、ずるいじゃないですか」

哀しい話、その矛先は香坂ではなく、

俺のほうに向けられている。



「いいのだ!お前はオレ側の人間だろう?」

「それとこれとは別です」

「…仕方ない、今日はクレープを奢ってやろう。

 それで許せ」

「えっいいんですか?じゃあ許してあげます」

下校後に共に過ごす事を、

音無も悪く思っていないようだ。


「二人とも、仲直りしてよかった。じゃあ、俺は先に行くから」

と、一瞬背を向けたが。

「…あの。本当に、お祓いとかいいから。

 気持ちだけ受け取っておくよ」

そう言い残し、準備室を後にした。




「お祓いって、殿崎先輩…。

 アンタまた、変な事を口走ったんじゃないでしょうね」

「まッ『また』とはなんだ、『また』とは!?

 俺は、友達一号を心から心配して…」

呆れ顔の音無に、一年の頃からの経緯を説明する。



「それはきっと……悪霊じゃないっす」

「なッッ!なぜお前までそんなきっぱりと!?

 俺は当事者なのだぞッ!!?」


うろたえる俺を、音無はやや憐れみのこもった眼で見る。



「悪霊じゃないけど…。

 アンタきっと、もっと恐ろしいモノに目をつけられてますよ。

 夜道とか気をつけてくださいね」

クラリネットのケースを持って、すたすたと退室してしまった。


「な、なんなのだ音無!?

 悪霊より恐ろしいモノなど、あるわけなかろうが!!」


慌てて追いかけようとすると、

準備室の入口に誰かが立ち塞がる。



「これはこれは殿崎くん。

 ちょうどいいところでお会いしましたねえ。

 …僕、ちょっと君にお尋ねしたい事がありまして。

 開始時間までまだ時間がありますし、いいですよねえ?」

「げっ……紅城さん」

紅鬼様がにこにこ微笑みながら、人差し指で俺を招く。





「…で?君は直に、お祓いを勧めたと」

「信じて下さい紅城さん!香坂にはきっと、

 束縛の激しい悪霊が憑いているんです。

 放置していると、貴方にまで害が及ぶ可能性が…」


「束縛する悪霊って、君……。

 そんな適当な事を言って、直に構いたかっただけでしょう?

 僕の不在を狙って会いに行くとは。素晴らしい度胸ですねえ」

「ぬおおおおっ!なんで皆信じてくれないのだッッ」


こうしてこの日二度目の尋問のあと、

俺は疲れ顔で部活に参加した。






「…どうしたの、殿崎。顔色悪くない?」

「そうですね。いつものふてぶてしさがないというか」


前に座る二人組に心配されるが…本当の事は言えない。

なぜなら隣には、紅鬼様が鎮座しておられるからだ。


…きっと鬼だったら悪霊に勝てるかもしれない。

やはり俺は口出しせずに、様子を見ていよう。



隣で機嫌良くスマートフォンを弄る紅鬼様を眺めながら、

俺はそう決意した。





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殿様は普段びくびくしてるけど、

なんだかんだで紅鬼様が好きなのよね~♪な話でした(´∀`)

結構二人で過ごす事も多いようだし♪





直くんが語っていた事には、

にょへ子自身が思っている事も混じっていたり。


学生時代にはぼっち経験もあっていい事ばかりじゃなかった。

でも色んな事があったからこそ、

今の生活や友人との絆があるのだと思ってます。

回り道だらけでしたが^^;


ママ友に無理に好かれなくてもいいや~って、

現在気負わず付き合えるのも、

きっとぼっち耐性がついたおかげです(^^)




十代の頃はきっと、

学校生活が自分の全てに感じる方も多く、

そこで上手く生きられない方の辛さはよくわかります。

でも、人生そんな事ばかりじゃないよと言いたいです。


…と、変態おばさんが語ってみました(笑)




長文にお付き合いいただき、ありがとうございました♪