2019年8月インドネシアのジョコ大統領は、首都を今のジャカルタから東カリマンタンに移転すると発表しました。

 

今のジャカルタの慢性的な車の渋滞の問題は前世紀末から酷くなるばかりで、道路整備や地下鉄などの新交通システムを構築しているものの、焼け石に水の状況は否めません。

 

ジャカルタにはもう一つ地政学的な問題があるのは、オランダ植民地時代バタビアと呼ばれた頃から、旧市街地コタ周辺はいわゆる海抜ゼロメートル地帯で、恒常的に洪水に悩まされていました。宗主国オランダは自らの国も同様の問題があり、バタビアに自国で培った灌漑設備を建設しました。

 

今もその跡は旧市街のあちこちに見られ、近年も度々起こる洪水問題の解決策として、このオランダ時代の灌漑施設を蘇らせようと、オランダから専門家を呼んで対策をしたこともありました。しかし後のメンテナンスがしっかり行われないので、実際には使いものになっていないようです。

 

首都移転先がジャワ島内でないのはある意味賢明でしょう。インドネシアの人口の6割くらいがジャワ島に集中していることから、例えばアジア・アフリカ会議があったバンドンや、古くからの港町スラバヤでも既に人口集中が進んでいて、慢性的な道路渋滞はジャカルタに劣らないくらいになっています。

 

もしカリマンタン東部へ首都移転したとしても、実際に移転するのは政治・行政機能が主で、経済機能はジャカルタに残るようです。5年後の遷都が発表されてからその実現性や、遷都に掛かる予算の算出根拠などいろいろな疑問が呈されていますが、ひとつ私が懸念しているのは、カリマンタンは「飛行機の墓場」だと聞いたことがあることで、そのことは問題となっていないことです。

 

「赤道」のところで書いた通り、私は西カリマンタンの方へは仕事で行ったことがあります。その時聞いた話で、カリマンタンは濃霧が立ちこめることが少なくなく、視界不良によりカリマンタン行きの国内便は直前でもよく欠航するから、覚悟するようにと言われたのです。

 

そして難儀なことには、この濃霧が原因で飛行機が時々落ちるという話があるのです。原油や木材など一次産品が豊富なカリマンタンには、ジャカルタに駐在している日本の商社マンも仕事でよく「飛んで」行かねばなリませんでした。彼の任期が終わって日本に帰るときに、「これで無事に生きて帰れます」と兵隊みたいに言われると、何とも笑えなかったことがありました。

 

 

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