インドネシアで500万部のベストセラーとなった本で、日本語訳にもなった「虹の少年たち」という本を読みました。2005年に発表され、日本語訳は2013年に出ているものです。

 

どうということのないことと思われるかもしれませんが、何より私が驚いたのは、インドネシアで一つの本が500万分も売れたという事実なのです。そもそも私がジャカルタにいた1990年代前半ジャカルタの街中には、日本にある本屋らしきものはあまり見かけませんでした。紀伊國屋書店や八重洲ブックセンターのような、ビル丸ごとが本屋になっているものは皆無で、ショッピングモールの中にある本屋でも日本だったら小規模の本屋でした。

 

本自体あまり発行されてない感じがしました。その背景には当時はスハルト大統領による独裁政権下にあり、表現・出版の自由がかなり制限されていたことがあります。当然作家がいても自由に作品を書ける環境になかったわけです。また出版にかかわる印刷や製本技術がいまひとつだったこともあるでしょう。

 

 

 

この「虹の少年たち」という本の内容は、インドネシア版「二十四の瞳」と称されていて、多分スハルト政権下では発禁処分になるような内容です。500万部売ったと言われていますが、インドネシアの場合は何でも売れるものはすぐコピーされ、いわゆる海賊版が裏で出版されますから、実際には1500万部くらい読まれているのではないか、と言われています。

 

本を読むというのは当然字がわからなくては読めませんので、教育環境が整ってきて識字率も上がってきたことを意味しますし、何より本を買い読むという、金銭的・時間的余裕が持てるようになった人々が増えてきたことを表します。

 

余談ですが、私が1990年前半ジャカルタに赴任する前に、インドネシア語の辞書を買おうと本屋へ行ったら、日本ではあまり需要のない言語のせいか1万4千円もする高価なもので、ちょっと買うのをためらったことがあります。すると会社の先輩が、これと同じ辞書がインドネシアへ行けばコピーされていて、10分の1くらいの値段で売っているから向こうで買えばよい、ただし製本が悪いから2~3冊買っといた方がいいかもね、という妙なアドバイスを受けました。実際当時ジャカルタに進出していた紀伊國屋書店へ行ってみると、19,500ルピア(当時の換算レートで1,000円)で販売していて、こんなところで海賊版の恩恵を受けることになるとは思いませんでした。

 

 


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